熊本大学の西中隆一教授らは、2013年12月13日、iPS細胞から肝臓組織を作ることに成功したと発表した。ほ乳類の腎臓は構造が複雑で、どのようにできるのかがわかっていなかったが、老廃物をこし取る「糸球体」と、栄養分や水分を吸収する「尿細管」が再現できたという。 研究チームはヒトのiPS細胞の培養液にたんぱく質などを加え、下半身の神経や筋肉を作る幹細胞を作製。次ぎに腎臓の元となる細胞に変え、糸球体と尿細管を持つ腎臓組織に育てた。今後、完全な肝臓を作るには膀胱と肝臓をつなぐ尿管が不可欠だが、2023年以降とされている再生した肝臓組織を治療に使う研究が前倒しできる可能性が出てきたとしている。 糖尿病などで腎機能が低下し、重症になると人工透析が必要。国内の人口透析患者は31万人とされ、年間の医療費は1兆円に及ぶとされている。治療には腎臓移植があるが、提供者が不足しており、腎臓組織が再生できれば、移植に使える可能性が出てくる。 {iPS細胞の主な臨床研究スケジュール}
作製する細胞 機関 対象疾患など 臨床研究の開始時期
 網膜色素上皮細胞  理化学研究所など  加齢黄斑変性  2014年夏
 視細胞 -  網膜色素変性  2016~2017年
 血小板  メガカリオン  血小板減少症  2016~2017年
 心筋  大阪大学  心筋梗塞  2016~2018年
 神経幹細胞  慶應大学  脊髄損傷  2018年まで
 角膜  大阪大学  角膜損傷  2018~2020年
 ドーパミン産生神経細胞  京都大学  パーキンソン病  2018~2020年
 骨・軟骨  京都大学  軟骨損傷  2019年~2020年
 肝細胞 -  肝硬変  2020年以降
 造血幹細胞 -  白血病  2020~2023年
 腎臓細胞 -  腎臓病  2023年以降
-  米アドバンスト・セル・テクノロジー  血小板など血液の病気  2013年めど
-  米国立衛生研究所(NIH)  黄斑変性  2013年~2015年