アイロムグループは、独自に開発したセンダイウイルスベクターを持つ。センダイウイルスベクターとは、治療用の遺伝子を特定の臓器・組織に運搬し、効果的に標的細胞内に導入する働きを持つ物質。他のベクターは細胞の核に入り込んで遺伝子を発現するのに対し、センダイウイルスベクターは細胞の核に入り込むことなく、細胞質内で遺伝子を発現。投与された患者の染色体を傷つけないという。

アイロムグループのiPS細胞関連の動きでは、研究用iPS細胞作製キットを販売。2016年11月から医療用iPS細胞作製キットの発売を開始。企業や研究機関などに対して、センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞を作製する技術のライセンス活動を積極的に行っている。また、2016年3月には、米スタンフォード大学傘下のインキュベーションセンター「スタンフォードメディシンX」と再生医療で戦略的パートナーシップ関係を構築することで合意した。


アイロムのiPS細胞関連の動き

項目 年月
中国SHCELLと細胞治療・細胞バンクでパートナーシップ 2019年4月
ベクター製造施設・CPCが稼働 2017年4月
米スタンフォード大学とパートナーシップを構築 2016年3月
医療用iPS細胞作製キットの販売開始 2016年11月
褐色脂肪細胞の量産技術を開発 -


【中国で細胞バンクの拠点を目指す】
2019年4月、中国のSHCELLと細胞治療及び細胞バンクでパートナーシップ契約を締結。欧米を中心に各国でiPS細胞バンクの構想が進められており、中国でも需要が拡大。アイロムグループのiPS細胞作製に係る技術とSHCELLの細胞バンクにおけるノウハウを生かし、iPS細胞を含む細胞バンクの中国における拠点になることを目指す。


【GMPベクター製造施設・CPCが稼働】
センダイウイルスベクター技術を中核としたベクター製造施設を建設。投資額は約40億円。2016年4月に着工し、2017年4月に稼働開始。資金は豪投資銀行マッコーリ・グループから調達する約50億円を充当する。

遺伝子治療・再生医療等に用いる臨床用ベクターや遺伝子治療剤・再生医療等製品を製造する。また、すでに実用化されている他の種類のベクターを製造することも予定している。iPS細胞の量産化や、目や神経など様々な細胞に分化させるのに必要な加工設備も併設。2017年3月に再生医療に用いる細胞加工物の培養・加工の許可である「特定細胞加工物製造許可」を取得した。

生産はフル稼働で約300億個まで増やせる見通し。心臓病関連の移植手術などでは年200人近い患者に供給出来るもよう。


【医療用iPS細胞作製キット】
2016年11月、臨床用iPS細胞作製キットを発売。供給にはアイロムグループの医療機関や大学などとのネットワーク、米スタンフォード大学とのパートナーシップ(スタンフォードメディシンX)、オーストラリアの臨床試験実施施設であるCNAXの持つグローバル製薬企業などとのネットワークを活用する。センダイウイルスベクター製造設備で量産化を予定。


【脂肪を燃やすヒトの「褐色脂肪細胞」の量産技術を開発】
アイロムグループと国立医療研究センター研究所は、細胞を燃やすヒトの「褐色脂肪細胞」の量産技術を開発。iPS細胞から血液細胞などを作り出すための物質を使うことで、褐色脂肪細胞の培養に成功。日米で特許が成立した。

iPS細胞などの幹細胞から遺伝子操作技術を使わず、体内の環境に近い状態で培養できるため、リスクが低く、肥満などの幅広い治療法開発や創薬につながるという

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