慶應義塾大学は心臓病患者のiPS細胞から心筋細胞を作製し、不整脈の副作用を起こさない薬の開発に取り組んでいる。 心筋の異常が原因で心臓の伸縮時間が健康な人と違う「QT延長症候群」。13種類の遺伝子のうち、いずれかの変異が原因で不整脈を起こし、失神や突然死を招く恐れがある。全国で数百家系の患者がいるとされている。 慶應義塾大学は、患者から白血球の一種である「Tリンパ球」を採取し、iPS細胞を作製。これから病気の状態にある心筋細胞を作り出すことに成功した。iPS細胞を使えば既存の薬で不整脈を起こすかどうかをあらかじめ調べて副作用を避けたり、不整脈を防ぐ化合物を効率的に探し出したりできるという。 東京大学では血液がん患者のiPS細胞を作り、治療薬を効率的に見つけ出す研究が行われている。 血液がんの一種である「骨髄線維症」。骨髄組織が硬くなり本来の機能を失う病気で、治療法は抗がん剤などで症状を抑えるだけで、骨髄移植以外に根治的な治療法が確立されていない。 そこで患者からがん化した血液細胞を採取し、iPS細胞を作製。これから作製した血液細胞はがん細胞と似た性質を持つことを確認したという。患者のiPS細胞を増やして血液細胞に再び戻すことで、研究に必要な患者の細胞数を確保し、病気の原因遺伝子を狙った新薬候補の化合物を調べる。 北海道大学は、運動失調症の治療法開発や仕組みの解明に向けてiPS細胞を活用する。 国立精神・神経医療研究センターは、希少難治性てんかんの調査研究に取り組む。 弘前大学は、遺伝性貧血の診断法の確立などを目指してiPS細胞を活用する。 {iPS細胞を用いた研究対象疾患一覧}
慶應義塾大学QT延長症候群
東京大学骨髄線維症
京都大学ALS(筋萎縮性側索硬化症)
北海道大学運動失調症
自治医科大学神経変性疾患

国立精神・神経医療研究センター

希少難治性てんかん
筑波大学神経皮膚症候群
国立循環器病研究センター突発性心筋症
名古屋大学先天性筋無力症候群
大阪大学重症骨系統疾患
弘前大学遺伝性貧血
九州大学原発性免疫不全症候群
【[iPS細胞関連情報へ[1987]]】