東京大学の宮島篤教授らの研究チームは、肝臓から取り出した細胞を薄いシート状に作製する技術を開発した。年内にも人間のiPS細胞からシートを作製して、がん治療用などの医療材料として臨床試験に乗り出す。 なぜ肝臓から取り出した細胞を薄いシート状に作製する必要があるのか? がんになった肝臓の一部を切り取ると、数日で切断面周辺の脂肪組織などと癒着する。癒着してしまうとほぐすのに時間がかかり、再手術を行う際に患者の負担となっていた。 開発したシートは、手術で切除した後の肝臓表面に貼り付けると、肝臓周辺にある脂肪組織との癒着を防ぐほか、肝細胞自体の増殖も促すという。 マウスでは、開発したシートを肝細胞に貼り付けたところ、30日後でも脂肪細胞とほとんど癒着したかった。中皮細胞にあるムチンというタンパク質が癒着を防ぐ働きをしたという。 研究チームは今後、人間のiPS細胞から中皮細胞を作り出し、細胞シートにする技術の研究を進める。シートを作製して臨床応用を実現できれば、肝臓がんなどの手術で治療効果を高められる可能性がある。 【[iPS細胞関連情報へ[1987]]】