様々な組織の細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性細胞)の開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大学教授らがすすめる京都大学iPS細胞研究所の「iPS細胞ストック構想」で、今後5年間で日本人の30~50%、10年間で80~90%に移植できる数のiPS細胞をそろえる計画を発表した。
「iPS細胞ストック構想」とは、他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を複数作って冷凍保存しておくことで、移植治療への使用を前提としたiPS細胞の作製を2月から始める方針を示していた。
細胞を移植した場合に拒絶反応が起こる要因は、「ヒト白血球抗原(HLA)」という6種類のタンパク質の違い。HLAは人に2セット備わっており、同じ種類の型のタンパク質が移植されないと拒絶反応を起こす。
しかしながら、各タンパク質には多くの種類があり、全てが一致する人と出会うのは数千万人に1人という確立だという。
一方、他人に移植しても拒絶反応が起きにくい「特別な型」を持つ人がいる。こうした人の細胞は他人と適合しやすく、拒絶反応が起きにくくなるという。
iPS細胞研究所では、この特別な型を、日本人に多い順から75種類揃えれば、日本人全体の80%をカバーできるとしている。しかしながら、この75種類を見つけるためには約10万人の血液検査が必要となっている。特別な型をもつ血液提供者が5~10人いれば日本人の30~50%を、75~150人いれば日本人の80~90%をカバーできるという。
「iPS細胞ストック構想」では、2018年までに日本人の30~50%。2023年までに80~90%に移植できるiPS細胞を揃えることを目標にしている。