慶應義塾大学の岡野栄之教授らは、脊髄損傷の患者を対象に、iPS細胞を使った再生医療を試みる臨床研究を2016年度に開始すると報道された。2年後を目途に慶應大学医学部の倫理審査委員会で議論され、承認後、国に臨床研究計画を申請するという。
神経の再生は現代の医学では難しく、背骨を通る中枢神経が傷ついた脊髄の治療法は無いため、期待されている。
慶大での臨床研究は、交通事故やスポーツ事故などで脊髄が傷ついた患者が対象。京都大iPS細胞研究所からヒトiPS細胞を調達し、神経細胞になる前の「前駆細胞」を作り、冷凍保存。解凍した細胞を損傷した脊髄に移植する方法をとるようだ。
一方、iPS細胞を浸かると移植後しばらくすると癌化する恐れがある。マウスの実験では約20%に癌の形成が認められているという。
慶大は3月末に細胞の加工・培養専門施設を開設し、移植した細胞ががん化するのを防ぐ手法を確立し、臨床研究に備える。