ジャパンディスプレイ(JDI)は、売上高の80%をスマートフォン向け液晶パネルが占める。売上高の50%を占める最大顧客の米アップルは、2017年秋発売のiPhoneの一部モデルで有機ELを採用し、2018年モデルでは発注量をさらに拡大。韓国サムスン電子からパネルを調達する意向で、JDIの液晶パネルの受注が大幅に減る見通し。韓国サムスン電子が中国スマホメーカーの上位モデルで、有機ELパネルを供給するなど、中国メーカーにも有機ELシフトへの動きがある。
JDIの新経営陣は2017年8月に再建計画を策定。工場再編や人員削減に加え、生産設備の減損や不良在庫の評価減などで2018年3月期に1700億円の特別損失を計上する。構造改革で大きく毀損する株主資本を回復させるため、外部企業による資本参加も検討する方針。
また、液晶一辺倒で来たJDIは、1900億円を投じて2016年12月に石川県に液晶パネル工場を稼働させたばかり。巨大な生産能力をどう活用していくかも課題となる。
ジャパンディスプレイの構造改革と経営計画
ジャパンディスプレイは、2017年8月10日、構造改革計画を発表した。中国とフィリピンに持つ液晶パネル組立工場を縮小し、3500人を削減。経費の安い外部委託に切り替え、自社工場を統廃合する。国内ではスマートフォン用液晶パネルの能美工場の生産を2017年12月に停止し、240人を削減する。年間固定費を約500億円削減し、過剰な生産キャパシティの適正化を図る。
工場再編や人員削減に加え、生産設備の減損や不良在庫の評価減などで2018年3月期に1700億円の特別損失を計上する。構造改革で大きく毀損する株主資本を回復させるため、外部企業による資本参加も検討する方針。
また、2019年度には営業利益400億円、営業利益率5%を目指す。損益分岐点売上を2016年の8300億円から2019年に6500億円に引き下げ。有機EL量産技術を確立。車載・産業機器・新規事業を強化し、モバイル向け以外の構成比率を2016年の19%から2019年に30%に引き上げる計画。
【構造改革】
項目 | 内容 |
構造改革 | 中国とフィリピンの液晶パネル組立工場を縮小し3500人を削減 |
能美工場の生産を停止し240人を削減 | |
生産設備の減損や不良在庫の評価減などで特別損失1700億円を計上 |
【2019年の経営目標】
2016年 | |
営業利益 | 400億円 |
営業利益率 | 5% |
損益分岐点売上 | 8300億円→6500億円 |
モバイル向け以外の構成比率 | 19%→30% |
資金調達
2018年3月30日、海外機関投資家、日亜化学工業を割当先とする第三者割当増資で350億円を調達すると発表した。また、2017年12月に稼働を停止した能美工場に係る資産を産業革新機構に譲渡。産業革新機構から約200億円の資金調達を完了する予定で、計550億円を調達する。 調達資金は、2019年3月期の下期に見込まれる液晶ディスプレイモジュール「フルアクティブ」の需要増に対応するための運転資金及び「フルアクティブ」の後工程製造の設備投資などに充当する。
項目 | 内容 |
調達資金 | 550億円 |
充当先 | 液晶ディスプレイモジュールの運転資金及び設備投資 |
ジャパンディスプレイの有機EL関連の動き
2018年3月30日、JOLEDを子会社化する計画を撤回すると発表した。今後も資本関係を維持するほか、JOLEDが手がける低価格な有機ELパネルの量産に向けて技術支援を続ける。
主力の茂原工場で有機ELパネルの生産ラインを立ち上げ。投資額は500億円。稼働は2017年春を計画。生産能力はスマートフォン換算で月産100万枚。2018年には500万枚に引き上げる。
項目 | 内容 |
稼働 | 2017年春を計画 |
生産能力 | 月100万枚→2018年500万枚 |
ジャパンディスプレイの業績推移
売上高 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2016年 | 8844億円 | ▲88億円 | ▲316億円 | 3270億円 | 9156億円 | 35.5% |
2015年 | 9891億円 | ▲129億円 | ▲318億円 | 3652億円 | 8138億円 | 44.6% |
2014年 | 7693億円 | 18億円 | ▲122億円 | 4026億円 | 8316億円 | 48.2% |
2013年 | 6145億円 | 190億円 | 339億円 | 4051億円 | 7589億円 | 53.3% |