シャープは、液晶事業の分社化を検討。設立される新会社の株式を産業革新機構や台湾の鴻海精密工業、投資ファンドなどが取得を提案している。シャープの液晶事業の売却に関する情報と、シャープの液晶事業の業績推移、将来的に統合が検討されているジャパンディスプレイの業績推移をまとめた。

また、仮にシャープが液晶事業の切り出しを達成した後には液晶事業以外の行方が注目される。それらを分析するため、液晶事業以外の業績推移と、これまでのシャープの主な動きについてまとめた。


液晶事業の売却交渉

シャープは、液晶事業の分離を検討。新たな資金や人材を投入し、新会社を設立する方針。液晶新会社に対し、産業革新機構は2000億円規模の出資を行い、90%の株式を取得。残り10%をシャープが保有する方向。産業革新機構は、将来的にジャパンディスプレイ(JDI)との統合を検討しているもよう。2016年春までの合意を目指す。

また、台湾の鴻海精密工業は、シャープ全体を5000億円で買収する案を提示したとみられる。


堺工場(SDP)の売却交渉

シャープは、保有する堺ディスプレイプロダクト(SDP)の株式を鴻海精密工業に売却する交渉を行っている。現在の保有割合はシャープが37.6%、鴻海も37.6%。鴻海は保有割合を50%超に高めたいもよう。なお、SDP株の37.6%は、簿価ベースで約650億円とされている。


金融支援交渉

みずほ銀行と東京三菱UFJ銀行の主力2行からの借入のうち、1500億円を液晶新会社に移し、優先株への転換を要請する。また、本体に残る債務の金利を抑えることも要請する。


シャープの液晶事業のJDIの業績推移

【シャープの液晶事業】
※ディスプレイデバイス部門

  2013年 2014年 2015年
4-6月 4-9月
売上高 9910億円 9071億円 1878億円 3911億円
営業利益 415億円 301億円 ▲137億円 ▲264億円


【JDI】

  2013年 2014年 2015年
4-6月 4-9月
売上高 6145億円 7693億円 2461億円 5078億円
営業利益 276億円 51億円 22億円 105億円
経常利益 190億円 18億円 ▲1.1億円 16億円
純利益 339億円 ▲122億円 ▲4.6億円 ▲3.2億円


シャープの液晶以外の事業推移

    2013年 2014年 2015年
4-6月 4-9月
デジタル情報家電 売上高 4856億円 4375億円 703億円 1673億円
営業利益 89億円 ▲134億円 ▲173億円 ▲150億円
通信 売上高 2477億円 2327億円 568億円 1176億円
営業利益 39億円 165億円 49億円 105億円
健康・環境 売上高 3268億円 3150億円 747億円 1505億円
営業利益 210億円 159億円 7億円 25億円
エネルギーソリューション 売上高 4390億円 2708億円 368億円 787億円
営業利益 324億円 ▲39億円 ▲39億円 ▲26億円
ビジネスソリューション 売上高 3188億円 3403億円 806億円 1723億円
営業利益 305億円 314億円 68億円 167億円
電子デバイス 売上高 3263億円 4414億円 1317億円 2432億円
営業利益 32億円 6億円 28億円 80億円

※デジタル情報家電 液晶テレビ
※通信 携帯電話・スマートフォン
※健康・環境 冷蔵庫・ヘルシオ・エアコン・空気清浄機など
※エネルギーソリューション 太陽電池
※ビジネスソリューション 複合機
※電子デバイス カメラモジュール 


【デジタル情報家電】
北米でのテレビの生産設備などを中国の海信集団に売却し、生産から撤退する。2015年度に売却に伴う96億円の特別損失を計上する。


【エネルギーソリューション】
メガソーラー向けの薄膜太陽電池の生産を停止する方針。シャープの太陽電池の売上高は60%がメガソーラー向けで、外部から調達した製品が大半を占める。外部調達による販売は今後も継続。シャープ製品の生産は現在の受注分の対応を終えた時点で停止する。

今後は住宅向け太陽電池に集中するとしている。


【白物家電】
産業革新機構は、東芝から分社した白物家電事業に全額出資し、シャープ本体と統合することを検討している。