シャープは、2013年度を構造改革ステージ、2014年度、2015年度を本格成長へと舵を切る「再成長ステージ」と位置付けている。

液晶テレビをはじめとするデジタル家電製品や汎用デバイスは、圧倒的な事業規模を持つことで勝敗が決まる体力勝負の事業領域となっている。規模が競争優位を決めるスケール市場から、多様な勝ち方が存在するバリュー市場にシフトし、シャープが強みを持つ分野への選択と集中により、事業の拡大を目指す。

また、シャープはIGZOやセンサ、プラズマクラスターなどグローバルNo.1技術を保有している。これらの技術やデバイスを商品企画、開発力と融合し、次の5年、10年を見据え「ヘルスケア・医療」「食・水・空気の安心安全」「ロボティクス」「スマートホーム、モビリティ、オフィス」「教育」の5つの事業領域で新事業の立ち上げを推進する。


2013年度~2015年度の設備投資計画

シャープは2013年度から2015年度にかけて約2400億円の設備投資を行う。公募増資により調達する1191億円は全額設備投資に充当される。500億円を中小型液晶の高精細化のための設備投資資金に、247億円を健康・環境事業(エアコン・空気清浄機など)におけるインドネシア新工場の資金に、130億円を重点5事業領域における新規事業育成に向けた研究開発設備資金に充当する。

セグメント 設備投資計画  金額 期間
AV・通信 液晶テレビ用開発・生産設備 174億円 2013年度~2015年度
通信端末(国内向け)用開発・生産設備 141億円
健康・環境 エアコン・空気清浄機のインドネシア新工場 445億円
情報 デジタル複合機向け開発・生産設備 167億円
液晶 中小型液晶パネルの高精細化 860億円
太陽電池 太陽電池(国内向け)開発設備 83億円
電子デバイス カメラモジュール・パワーデバイス開発・生産設備 335億円
重点5事業領域の開拓を含む研究開発設備  210億円

【中小型液晶パネル】
米アップルが導入資金を負担した亀山第1工場の設備を買収する交渉を開始したもよう。取得額は約300億円という。現在、アップルのiPhone用の中小型パネルを量産しているが、アップル以外にも供給できるようにする考え。

投資額 対象
300億円 アップル用液晶パネル生産設備

2014年度に三重県の2工場に300億円を投資し、スマホ、タブレット向けの生産能力を10%引き上げ。省電力パネル「IGZO」で画質を高めた次世代品や画素密度が高く画像の鮮明さが世界最高水準のパネルを量産する。

投資額 対象 時期
300億円 中小型液晶パネル10%増産 2014年

2015年度に約100億円を投じ、IGZOの生産能力を引き上げ。亀山第2工場のテレビ向けパネルラインをタブレット端末向けに切り替え。中小型パネル生産量を2014年の40%から2015年に80%に引き上げる。米アップルのタブレット向けが主要供給先だが、シャオミなど中国企業向けに大量供給できるようにする。

投資額 対象 時期
100億円 IGZOの出荷量を2倍に増強 2015年

米クアルコムと共同でMEMSディスプレーを商品化。100億円を投資し、工場を整備。2017年に量産を開始する計画。

投資額 対象 時期
100億円 MEMSディスプレー量産 2017年

【新規事業への取組】
脈波計や体重計、血圧計が組み込まれ、座るだけで満腹度や骨密度などを測定できるイス型「健康コックピット」や指定されたエリア内を循環し、侵入者を検知すると映像を撮るセキュリティロボット、果物や野菜の食べ頃がわかるセンサーなどを開発。新たに創出した商材やサービスを事業に発展させ、2015年度に売上高800億円を目指す。

  2015年
新規事業売上高 800億円

【太陽電池】
米国で太陽光発電所開発を手がける米リカレント・エナジーを2014年度中に売却するもよう。売却額は約300億円とみられる。リカレントは太陽光発電所を開発する事業を展開し、用地選定からプラント建設までを手がける。シャープはリカレントを2010年に250億円で完全子会社化していた。

欧州でも太陽電池の購入権を伊EPG社に譲渡。太陽光発電を手がける合弁会社の株式も譲渡し、特別損失143億8200億円を計上した。欧州では太陽光発電で作った電力の買取価格が低下し、収益確保が難しくなっていた。

項目 内容
売却額   300億円 北米の太陽発電事業から撤退
特別損失 ▲143億円 欧州太陽電池事業から撤退

【家電】
欧州における液晶テレビ事業をスロバキアのUMC社にブランドを供与、欧州における白物家電事業の販売事業をトルコのVestel社に移管する。「欧州」の範囲は、イタリア・ロシア・イギリス・オランダ・フランスを除く地域。人員の適正化や新しい体制への移行費用で63億9900万円の特別損失を計上する。2015年1月1日から新体制で事業を開始する計画。また、ポーランドの液晶テレビ生産子会社を1億円で売却する。

項目 内容
特別損失 64億円
効果 ライセンス供与事業にシフト
新体制開始 2015年1月1日

 

業績

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2014年(予) 3兆円 500億円 300億円 - - -
2013年 2兆9271億円 532億円 115億円 2071億円 2兆1816億円 8.9%
2012年 2兆4785億円 ▲2064億円 ▲5453億円 1348億円 2兆877億円 6%
2011年 2兆4558億円 ▲654億円 ▲3760億円 6451億円 2兆6141億円 23.9%
2010年 3兆219億円 591億円 194億円 1兆486億円 2兆8856億円 35.6%

【セグメント別】 

セグメント 業績 2012年 2013年 2014年(予)
デジタル情報家電 売上高 7326億円 7333億円 7800億円
営業利益 ▲98億円 128億円 200億円
健康・環境 売上高 3096億円 3268億円 3600億円
営業利益 322億円 210億円 190億円
太陽電池 売上高 2599億円 4390億円 2900億円
営業利益 ▲44億円 324億円 ▲50億円
ビジネスソリューション 売上高 2969億円 3188億円 3400億円
営業利益 243億円 305億円 260億円
液晶 売上高 8468億円 9910億円 1兆円
営業利益 ▲1389億円 415億円 550億円
電子デバイス 売上高 2706億円 3263億円 4500億円
営業利益 ▲155億円 32億円 150億円

【資産売却】
 2014年度中に大阪府八尾市にある白物家電工場の土地と大阪府にある2ヶ所の物流拠点を売却するもよう。売却額は約100億円。八尾工場は土地売却後も貸借契約を結び、生産工場として使う予定。2014年9月11日、パイオニア株3000万株を97億2000万円で売却した。

項目 売却額
大阪府・八尾工場の土地と2ヶ所の物流拠点 100億円
パイオニア株式 97.2億円