米エネルギー省は、2013年5月17日、シェールガスの増産で価格が下落している天然ガスの対日輸出を解禁すると発表。米国は自由貿易協定(FTA)を結んでいない国への天然ガスの輸出を制限してきたが、中部電力や大阪ガスなどが参画しているフリーポート社の輸出事業を認可した。フリーポートLNGプロジェクトでは輸出事業が認可されたことから、年間440万トンの加工能力を持つ液化設備を3つ建設する。
大阪ガスと中部電力は、2012年7月、米国産シェールガスの年間220万トンずつのLNG委託加工契約を米フリーポートと締結。2014年2月に液化設備の1つにそれぞれ600億円ずつ出資し、それぞれ25%の権利を取得する契約を締結した。2014年10月30日に国際協力銀行(JBIC)と民間金融機関6行との間で約4000億円のプロジェクトファイナンスによる融資契約を締結。銀行団からの借り入れに合わせて出資を実行する。なお、民間金融機関6行の融資と大阪ガス・中部電力の出資には日本貿易保険(NEXI)による保険が適用されており、LNG輸出許可の取り消しリスクを含むリスクカバーが供与されている。
また、フリーポートLNGプロジェクトでは、2013年9月に東芝が、大阪ガスと中部電力とは違う液化設備の1つで年間220万トンの液化加工契約を締結。2013年12月に千代田化工建設はLNG液化基地プロジェクトでEPCに参画すると発表した。
フリーポートLNGプロジェクトの総事業費は5000億円規模とみられる。
フリーポートLNGプロジェクト
【推移】
日 | 内容 |
2012年7月 | 大阪ガスと中部電力が年220万トンずつのLNG委託加工契約を締結 |
2013年5月 | 米エネルギー省による対日輸出を解禁 |
フリーポートで年間440万トンの液化設備を3つ建設へ | |
2013年9月 | 東芝が年220万トンの液化加工契約を締結 |
2013年12月 | 千代田化工建設がEPCに参画 |
2014年2月 | 大阪ガスと中部電力が600億円ずつ出資し、液化設備1つの権益25%ずつを取得 |
2014年10月 | 大阪ガスと中部電力が銀行団と4000億円の融資契約を締結 |
【権益】
フリーポートLNG | 液化設備能力 | 企業 | 出資額 | 権利 | 期間 |
第1系列液化会社 | 約440万トン | 大阪ガス | 600億円 | 25%取得 | 2017年~ |
中部電力 | 600億円 | 25%取得 | 2017年~ | ||
第3生産設備 | 約220万トン | 東芝 | - | - | 2019年~2039年 |
天然ガスの国際価格とシェールガス生産・輸送コスト見通し
北米におけるシェールガスの生産コストは2010年代末までに100万BTUあたり5~7ドルになると予想されている。天然ガスの国際価格は2020年頃まで6~13ドルのレンジに収れんする見通し。また、米国シェールガスをLNGにするための液化施設の利用料や液化費用、LNG運搬船の輸送量など日本に到着するまでの上乗せ料金は7ドル程度と予測されている。
金額 | 期間 | |
天然ガス国際価格 | 6~13ドル | 2020年頃まで |
シェールガス生産コスト | 5~7ドル | |
日本への輸送上乗せ料金 | 7ドル | - |