東芝は、2017年2月14日、4-12月期が4999億円の赤字になったと発表した。米子会社ウエスチングハウス(WH)を中心に原子力事業で7125億円の損失が発生。2016年末時点で自己資本が1912億円のマイナスと債務超過になった。2017年3月期の最終損益は3900億円の赤字、自己資本は1500億円のマイナスとなる見通し。

WHが買収した建設会社でコストが想定よりも大きく膨らんだ。作業効率の低下や物量増加などで労務費が37億ドル(約4200億円)、資材価格の上昇などで調達コストが18億ドル(約2050億円)増えた。のれんは想定していた105億円から6253億円と拡大。過去の買収案件ののれんも含めて全額を損失処理した。

債務超過により、東京証券取引所の規定では、上場市場が東証1部から2部に変更。1年後に債務超過が解消できなければ上場廃止になる可能性がある。東芝は、債務超過の回避を目指し、メモリー事業を分社して新会社の株式を企業や投資ファンドの売却する。経営権の維持のため、20%未満の株式売却を計画していたが、売却比率を柔軟に変更する姿勢を示した。他の保有資産の売却も進め、債務超過を回避できる1500億円以上の純利益積み増しを目指す。

なお、東京証券取引所は、2016年12月、東芝株で投資家に注意を促す特設市場銘柄の指定期間を延長すると発表。公募増資を使った資本増強の道は事実上閉ざされている。主な取引銀行などの支援が必要な情勢になっている。


東芝の損失見通しと純利益積み増し目標

  4-12月期 通年見通し
純利益 ▲4999億円 ▲3900億円
株主資本 ▲1912億円 ▲1500億円
純利益積み増し目標 1500億円以上 メモリー事業や保有資産の売却


半導体メモリー事業

東芝は、2017年1月27日、3月末をめどに半導体メモリー事業を分社すると発表した。新会社の株式を企業やファンドに売却する。経営権の維持のため、20%未満の株式売却を計画していたが、売却比率を柔軟に変更する姿勢を示している。

東芝は経営計画で、2016年~2018年にNADA型フラッシュメモリーに8600億円を投じる計画。四日市工場で製造棟を新設。2016年4-6月期に新第2棟建屋が竣工。2017年に次期新棟が建設される見通し。

NADA型フラッシュメモリーでデータの記憶容量が従来よりも約3割多い「3次元メモリー」を本格量産。2016年春から量産開始。3次元メモリーの比率を2017年度に5割、2018年度に8割に高める。


【半導体セグメント】

  2015年 2016年 2018年
売上高 1兆5600億円 1兆4300億円 1兆6800億円
内メモリー 8000億円 7400億円 9500億円
営業利益 ▲570億円 320億円  


原発事業

米国では、建設事業は高リスクと判断し、新規案件の受注を停止する方針。建設中の案件は継続。原子炉の設計や製造は続ける。WHの出資比率87%の引き下げも検討する。

日本では、原発再稼働に向けた保守、管理を手がける。東京電力福島第一原発などの廃炉ビジネスに注力して収益基盤を固める。


資産売却検討

英国の原発新設計画の運営会社ニュージェネレーションの持ち株を韓国電力公社に売却することを検討している。東芝は2014年にスペイン電力大手から170億円で買収。株式の60%を保有している。


減損損失検討

電力制御用スマートメーターの世界最大手であるスイスのランディス・ギアで減損損失を計上することを検討しているもよう。2011年に産業革新機構と共同で約1900億円で買収した。ランディス・ギアは、2016年度上期の売上高は9%減の845億円、営業利益は44%減の34億円だった。出資比率は東芝が60%、革新機構が40%。

 

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