厚生労働省の審査委員会は、2013年6月に理化学研究所などが申請していたiPS細胞をヒトに移植する臨床研究計画を承認。理化学研究所と先端医療振興財団は、2014年9月12日、iPS細胞を使って目の難病である加齢黄斑変性を治療する臨床研究で患者への移植を実施した。2017年3月28日には2例目を実施したと発表。2例目では他人から作って備蓄しておいたiPS細胞を利用。患者本人のiPS細胞を使った1例目より準備期間を短くできた。費用も10分の1にできた。

大日本住友製薬は、2013年12月、網膜の黄斑を再生する医療に用いる「網膜細胞シート」を手がけるヘリオスと加齢黄斑変性など眼疾患を対象としたiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を用いた国内での共同開発契約を締結。大日本住友製薬が最大52億円の開発資金を提供し、国内の細胞医薬品を共同開発。ヘリオスが製造販売承認の取得・販売を行う。ヘリオスが保有する眼疾患領域のiPS細胞由来のRPE細胞を大量培養する各種技術・ノウハウに関する実施許諾契約も締結している。


網膜細胞シートの注目ポイント

項目 内容
網膜細胞シートの移植の2例目の実施 2017年3月
網膜細胞シートの承認計画 2020年
iPS細胞の量産施設の完成 2018年3月
iPS細胞の培養施設の完成 2017年


網膜細胞シートの計画

大日本住友製薬とiPS細胞で失われた黄斑を再生する医療に用いる「網膜細胞シート」の作製を手がけるヘリオスとの共同出資会社で治験を実施する。治験は2017年中に加齢黄斑変性を対象に開始する計画。早ければ2020年にも承認を受けて医療現場への提供を目指すも、前臨床試験の計画見直しなどにより、2017年に予定していた試験開始が遅れる見込み。

また、加齢黄斑変性の治療法開発を端緒として、視細胞、網膜細胞、検査薬開発などを目指す。新たな開発対象は、加齢黄斑変性の患者向け細胞シートが実用化されてから開始される見通し。

項目 内容
製品 網膜細胞シート
対象 加齢黄斑変性
治験開始 2017年中→遅延


iPS細胞の培養・量産施設

 【iPS細胞の量産施設】
iPS細胞の量産施設を新設する。投資額は30億円。完成は2018年3月。主に健康な人から採取した細胞から作製した「他家」と呼ばれるiPS細胞を培養する計画。

項目 内容
投資額 30億円
稼働 2018年3月


【iPS細胞の培養施設】
iPS細胞由来の治療薬開発で同細胞を培養する専用施設を稼働させる。投資額は約22億円。稼働は2017年。健康な人から採取した細胞から作ったiPS細胞を使い、加齢黄斑変性とパーキンソン病の治療薬開発を進める。また、研究費を合わせた関連予算を従来の36億円から100億円に引き上げ。培養した細胞をシート上に加工する設備などを増強する。

項目 内容
投資額 22億円
稼働 2017年


網膜細胞をそのまま入れた注射剤

大日本住友製薬は、理化学研究所と連携して、他人のiPS細胞から作った網膜細胞をそのまま入れた注射剤の開発に取り組むもよう。対象疾患は目の難病である「加齢黄斑変性」。現在の細胞シートでは細胞採取から移植まで10ヶ月程度かかるが、注射剤は移植準備から施術までの期間を大幅に短縮でき、費用の削減が見込めるという。2017年にもサンプルの注射剤の生産を始め、臨床研究を進める。2020年にも医薬品として日本での承認取得を目指す。

項目 内容
iPS医薬品 iPS細胞から作った網膜細胞をそのまま入れた注射剤
臨床研究 2017年
承認計画 2020年


滲出型加齢黄斑変性とは

網膜の中心にある「黄斑」に異常が起こる「滲出型加齢黄斑変性」。視覚機能で重要な役割を果たす黄斑部の機能が低下する病気で、視野の中心部でものがゆがんで見えたり、小さく見えたり、視力が低下するという病状が起こる。国内50歳以上の約1%に見られるという。

滲出型加齢黄斑変性の原因は、異常な血管が生じ、出血が起こることで黄斑部が傷つくことから起こる。治療のためには異常な血管を取り除き、傷ついた黄斑部を再建する必要がある。

加齢黄斑変性の患者は、日本に70万人、世界で1億人以上いるとされている。


大日本住友製薬の業績推移

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2017年(予) 4500億円 550億円 360億円 - - -
2016年 4116億円 543億円 289億円 4606億円 7939億円 58%
2015年 4032億円 352億円 246億円 4464億円 7077億円 63.1%
2014年 3713億円 233億円 154億円 4510億円 7115億円 63.4%
2013年 3876億円 406億円 200億円 3985億円 6590億円 60.5%
2012年 3477億円 245億円 100億円 3492億円 6072億円 57.5%
2011年 3503億円 188億円 86億円 3192億円 5594億円 57.1%
2010年 3795億円 286億円 167億円 3239億円 5898億円 54.9%

 

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