日本政府は法人実効税率を2016年度に29.97%に引き下げる方針。2014年度の34.62%から2015年度は32.11%、2016年度は31.33%以下、2017年度に20%台にする計画を1年前倒しする。また、2018年度には29.74%に下げる見通し。

1%の法人実効税率の引き下げで、国と地方は約5000億円の税収減となるもよう。従来の計画では2016年度の法人実効税率を31.33%以下にする方針で、約6000億円の財源を確保。新たな計画では29%台に引き下げることで、追加で必要な約4000億円の財源を外形標準課税の拡大で確保する。

外形標準課税は資本金1億円超の大企業が対象。地方自治体に納める法人事業税のうち、外形標準課税が占める割合を2015年度の37.5%から2016年度に50%とする計画から62.5%に拡大。外形標準課税の大部分を占める付加価値割の税率を2015年度の0.72%から2016年度に1.2%に引き上げる。

なお、経済産業省は法人税率が10%下がれば、国内総生産(GDP)が7兆円増えると試算。企業が設備投資を海外から国内に戻す効果を見込む。


【日本の法人実効税率推移】

法人税率 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
新計画 34.62% 32.11% 29.97% 29.97% 29.74%
従来計画 34.62% 32.11% 31.33%以下 20%台 -


【法人税変動による税収変動額】

法人税変動 国・地方の税収変動額
1% 5000億円

主な財源確保策

項目 内容
欠損金繰越控除を縮小 3000億円
外形標準課税を拡大 7500億円
政策減税の廃止・縮小 2500億円
研究開発減税の縮小 3700億円
東京都など上乗せ税率見直し 5000億円

【外形標準課税】
企業が都道府県に納める「法人事業税」のうち、外形標準課税の割合を高める。法人税の課税対象は利益なのに対し、外形標準課税の対象は企業の資本金や従業員への給与総額などを指標とする。そのため、赤字企業でも増税の義務があり、政府は増税分を法人税率引き下げの原資に充てたい考え。

政府は2004年に資本金1億円以上の大企業を対象に外形標準課税を導入。法人事業税のうち、所得にかかる税率を9.6%から7.2%に下げ、減った税収を外形標準課税で穴埋めした。地方税は法人税収の約30%を占めており、外形標準課税の税収は約6000億円。


【設備投資・雇用減税廃止】
設備投資や雇用を促す税制を2017年頃までに順次廃止を検討。対象は生産性の高い設備を導入すると、初年度に投資額の5%を減税する「設備投資促進税」、雇用を1人増やすごとに40万円減税する「雇用促進税制」、給与総額を増やした分の10%を減税する「賃上げ促進税」など。約5000億円の税収増を確保する。


【公益法人】
公益法人などへの課税を強めることを検討。34の収益事業に適用している法人税の軽減税率の廃止・縮小などを検討する。また、収益事業の枠を広げ、課税対象となる事業を増やすことも検討。さらに、公益法人の資産運用益に対する法人税が非課税になる場合が多いことから、資産運用益への課税も議論。


法人実行税率を引き下げた場合の試算

日本経済研究センターは、法人実効税率を引き下げた場合の2030年までの実質GDPの試算をまとめた。海外から資本や人材を呼び込むことで、高い経済成長が可能になるという。税収が減った分は追加の消費増税で補うべきだとの考えも示した。

なお、消費税率を19%にすれば、2025年頃から借金に頼らず社会保障などの必要経費を賄えるようになり、国と地方の借金のGDP比は200%程度で安定するという。

法人税率 消費税率 2030年のGDP
35.34% 10% 619兆円
25% 10% 669兆円
25% 12% 664兆円
25% 19% 647兆円


主要国の法人税率とGDP推移

法人税率 GDP
 又は法人実行税率 2013年 2014年
日本 35.64% 1.5% 1.4%
米国 39.1% 1.9% 2.8%
英国 20% 1.9% 2.7%
カナダ 33.5% 2.0% -
イタリア 27.5% ▲1.9% 0.6%
ドイツ 29.55% 0.4% 1.6%
フランス 33.33% 0.3% 0.9%
中国 25% 7.7% 7.5%
シンガポール 17% 4.1% 3.9%
韓国 27.5% 2.8% 3.7%
タイ 20% 2.9% 4.5%
ベトナム 22% 5.4% 5.8%
インドネシア 25% 5.78% 5.7%
マレーシア 25% 4.7% 5.1%
フィリピン 30% 7.2% 6.4%

【米国】
米オバマ大統領は、2013年2月の一般教書演説で、法人税を引き下げると共に、減税措置を撤廃し、富裕層に増税を求めるとした。法人税の最高税率を35%から28%に引き下げることを含む法人税の見直しを提案。特に製造業に関しては、さらに低い特別税率を適用するとした。

また、2016年度の予算教書でも、法人実効税率を35%から28%に引き下げることを盛り込み。国内製造業の税率はさらに3%低い25%に優遇する考え。一方、米グローバル企業が海外に留保する利益には、減速19%の税率で強制課税。企業が海外資金を米国に戻して国内投資に回す場合の税率は14%にとどめる。


【英国】
2015年4月に23%から20%に引き下げ。2017年に19%、2020年に18%と段階的に引き下げる方針。