東芝は、2015年5月8日、一部インフラ関連の工事進捗基準案件において、工事原価総額が過少に見積もられ、工事損失が適時に計上されていない問題などから社外の専門家で構成する第三者委員会を設置すると発表した。また、工事原価見積もり問題以外にも調査範囲を拡大。損失引当計上の時期や金額の妥当性、経費計上時期の妥当性、在庫評価の妥当性などを調査する。

工事進行基準は、工事の進み具合に応じて売上高や費用を計上する会計基準で、金額の計上は見積もりに左右される。東芝は2015年4月3日に特別調査委員会を設置し調査。2015年6月12日、インフラ関連工事の詳細を公表し、2014年3月期までの5年間の累計営業損益ベースで約548億円の減額を見込んだ。

また、インフラ関連の工事進捗案件以外にも調査範囲を拡大。過去の決算に遡って利益を減額修正しなければならない金額が約1700~2000億円となる見通し。

パソコン部品取引では、東芝が安く仕入れた部品を組み立て、製造委託先に売却し完成品を買い戻した上で顧客に販売するが、下請けに製品を売却した際に生じた利益で不適切に処理。半導体では、ディスクリートやシステムLSIを中心に、価値が目減りした製品在庫の評価損計上を先送り。テレビでは、販促費や宣伝広告費の計上を先送りしていた疑いがある。

社外専門家で作る第三者委員会は、2015年7月中旬に調査報告をまとめる予定。東芝の決算発表は6月以降となる見込み。計算書類の確定が配当金支払いの手続き期間に間に合わないことから期末の配当は無配。計算書類確定後に別途基準日を定めて配当を行うかどうかを検討する。


東芝の不適切会計問題

【調査】

内容
4月3日 特別調査委員会を設置
5月3日 第三者委員会を設置


【問題】

項目 内容 影響額
インフラ 一部インフラ工事進行基準案件で工事原価総額が過少に見積もり ▲548億円
パソコン部品 下請けに製品を売却した際に生じた利益で不適切に処理 ▲1000億円超
半導体 価値が目減りした製品在庫の評価損計上を先送り
テレビ 販促費や宣伝広告費の計上を先送り
合計 ▲1700~2000億円


【影響】

項目 内容
決算発表 東芝 2015年6月以降
上場子会社の決算発表延期
配当 期末配当無配
計算書類確定後に実施を判断


【東芝の上場子会社】

コード 企業
6588 東芝テック
6256 ニューフレアテクノロジー
6591 西芝電機
1983 東芝プラントシステム
6104 東芝機械


業績への影響見通し

  影響額
営業利益 ▲1700~2000億円
  売上高 営業利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2013年 6兆5025億円 2907億円 508億円 1兆6523億円 6兆2416億円 19.7%
2012年 5兆7269億円 1977億円 773億円 1兆4160億円 6兆1000億円 17%
2011年 6兆1002億円 2066億円 737億円 1兆2365億円 5兆7312億円 15.1%
2010年 6兆3985億円 2402億円 1378億円 1兆1796億円 5兆3793億円 16.1%
2009年 6兆3815億円 1171億円 ▲197億円 1兆1276億円 5兆5451億円 14.6%