鉄鋼業界注目の自動車用高張力鋼板(ハイテン)は、自動車の衝突安全性と軽量化の両方を実現する。2013年時点で日系メーカーの自動車に使用される鋼材ハイテン化率は約60%となっている。新日鐵住金はハイテンを軸にグローバルマーケットでポジションの維持拡大を追求する。

中国の自動車市場は2012年に1900万台を突破し、2020年に3000万台規模になるとみられている。ハイテンは新日鐵住金、JFEが先行し、神戸製鋼所も中国で工場を建設する。現在、中国車のハイテン使用量は少ないが、環境規制の強化で日本車並みに増加すると、使用量は5倍程度になるとの試算もある。


新日鐵のハイテン製造能力

製造能力
米国 354万トン
中国 220万トン
メキシコ 40万トン
ブラジル 103万トン
タイ 96万トン
インド 60万トン

戦略投資

投資額 項目 実施
年1000億円 自動車用鋼板 米国 2014年2月
2015年
メキシコ 2013年8月
インド 2014年5月
タイ 2013年10月
中国 2015年
建材薄板 シンガポール 2013年3月
ベトナム 2013年4月
ブリキ 中国 2013年9月
鋼管 ブラジル 立ち上げ中

【中国】
 自動車用亜鉛メッキ鋼板を30%増産。宝鋼集団との合弁会社(BNA)に170億円投資。稼動は2015年。

【タイ】
2013年10月にタイで超ハイテン工場が稼働。2015年にフル生産。

【インドネシア】
インドネシアで自動車用鋼板の製造・販売合弁会社KNSSを設立。出資比率は新日鐵住金が80%、クラカタウが20%。投資額は300億円。生産能力49万トンの工場を建設。2017年半ばに稼動する。自動車用外板や高張力鋼板(ハイテン)を含む高品質の冷延鋼板・溶融亜鉛めっき鋼板などを提供する。


超ハイテン

一般の高張力鋼板(ハイテン)と比べ、2倍の強度を持つ「超ハイテン」の生産を2017年に米国で開始する。投資額は約100億円。生産は年10万トン。

欧アルセロール・ミタルと2014年に共同買収した米アラバマ州の工場で生産する。超ハイテンは日産自動車が2013年夏に発売した高級車で初めて採用。現在は、一部車種で骨格部品の数%に使われているもよう。超ハイテンの安定供給体制を整備し、アルミや炭素繊維より安い鉄需要を確保する。

項目 内容
投資額 100億円
生産 年10万トン


業績推移

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2014年 5兆6100億円 4517億円 2142億円 3兆5470億円 7兆1579億円 41.6%
2013年 5兆5161億円 3610億円 2427億円 3兆2379億円 7兆822億円 37.9%
2012年 4兆3899億円 769億円 ▲1245億円 2兆9382億円 7兆894億円 33.8%
2011年 4兆909億円 1430億円 584億円 2兆3473億円 4兆9247億円 37.1%

【経営計画】

  2015~2017年
売上高利益率 10%以上
ROE 10%以上
設備投資 年4500億円
事業投資 年1000億円
コスト改善 年1500億円以上