ソニーは積層型CMOSイメージセンサーの生産能力を拡大する。積層型CMOSイメージセンサーは、高画質化と高機能化、小型化を実現できるため、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器市場での需要増が見込まれる。ソニー製のスマートフォンだけでなく、米アップルや中国シャオミなどにも供給。増産を通じて出荷量を増やす。ソニーの画像センサーは約40%のシェアを持つ。

CMOSイメージセンサーは、光を電気信号に変えて映像化する半導体。従来のCCDに比べて早くデータを読み出すことができ、消費電力も少ない。約70%がスマートフォンを中心とする携帯電話向けで使用されている。


積層型CMOSイメージセンサー増産への大型投資

ソニーは積層型CMOSイメージセンサーで、2015年2月2日、約1050億円を投資し、2016年6月末までに生産能力を月6万枚から8万枚まで増やすと発表。2015年4月7日、約450億円を追加投資し、2016年9月末までに生産能力を月8.7万枚まで増強するとした。

増産への投資額は約1500億円と大型投資のため、ソニーのイメージセンサーを含むデバイス事業の動きと経営計画、業績推移をまとめた。

項目 内容
投資額 1500億円
対象 積層型CMOSイメージセンサー増産
生産能力 月6万枚→2016年9月末に月8.7万枚


増資

2015年6月30日、公募増資と新株予約権付き社債(CB)の発行などで約4415億円を調達すると発表。公募増資などで調達する3215億円を積層型CMOSイメージセンサー向けに充当する。発行済み株式総数はCBが全て行使された場合で9.8%増加する見通し。

調達 充当額 充当先 期間
公募増資 3215億円 1880億円 積層型CMOSイメージセンサーの設備投資 2016年9月
残額 CMOSイメージセンサーの研究開発費
CB 1200億円 270億円 カメラモジュール向け設備投資 2016年6月
170億円 デバイス分野の新モデル対応や生産性改善への投資 2016年3月
70億円 デバイス分野の新規事業の開発設備投資
250億円 社債の償還 2015年12月
残額 長期借入債務の返済 2016年6月


CMOSイメージセンサーの市場動向

調査会社テクノ・システム・リサーチによると、CMOSイメージセンサーの世界出荷数量は2014年の約38億6000万個から2018年には53万個に増える見通し。

主力の画素数は1300万画素。取引価格は1個3ドル~4.2ドルとみられ、価格は横ばいを保つ。一方、800万画素品の取引価格は1個約2ドルとみられ、1年間で10~15%値下がりした。スマートフォンに搭載するカメラ性能向上で、画素数が多いタイプのCMOSイメージセンサーの需要が拡大。中国のスマートフォンメーカーの成長が鈍化している。

また、今後はデュアルレンズ化への需要が増える見通し。デュアルレンズはレンズを2つ配置することで、一眼レフのように夜景がキレイに撮れたり、高倍率ズームが可能になる。デュアルレンズの場合、スマートフォン1台に使うイメージセンサーは2個から3個に増えるもよう。

【世界出荷数量】

  2014年 2018年
CMOSイメージセンサー 38.6億個 53億個


【画素数品による取引価格】

  取引価格 価格推移
1300万画素 3~4.2ドル 横ばい
800万画素 2ドル 1年間で▲10~▲15%


イメージセンサーを含むデバイス事業の経営計画

2015~2017年の3年間は、デバイス、ゲーム&ネットワークサービス、映画、音楽分野を牽引役と位置付ける。デバイスでは積層型CMOSイメージセンサー増産のための設備投資や技術開発投資により競争力強化を図る。

デバイス 2014年 2017年
売上高 8900億円 1.3~1.5兆円
営業利益率 7.5% 10~12%


参考

・ソニーは車載向けイメージセンサーの市場規模を2014年の200億円から2025年に1000~2000億円規模まで拡大すると予測。
・ソニーのイメージセンサーが自動車に搭載され始めるのは最短でも2017年頃と予想されている。


業績推移

  売上高 税引前利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2015年(予) 7兆9000億円 3450億円 1400億円 - - -
2014年 8兆2158億円 397億円 ▲1259億円 2兆2317億円 15兆8343億円 14.6%
2013年 7兆7672億円 257億円 ▲1283億円 2兆2581億円 15兆3337億円 14.7%
2012年 6兆7955億円 2420億円 415億円 2兆1922億円 14兆2110億円 15.4%
2011年 6兆4932億円 ▲831億円 ▲4566億円 2兆288億円 13兆2956億円 15.3%
2010年 7兆1812億円 2050億円 ▲2595億円 2兆9365億円 12兆9111億円 19.7%


【デバイス事業】

  2012年 2013年 2014年 2015年(予)
売上高 8486億円 7942億円 9578億円 1兆800億円
営業利益 439億円 ▲130億円 931億円 1210億円
営業利益率 5.1% ▲1.6% 9.7%% 11.2%

 ※ソニーは積層型CMOSセンサーを国内工場で集中生産し、海外に輸出している。


【中国・アジア地域の売上高割合】
2014年の中国向け売上高は5466億円と全体の6.7%。アジア・太平洋地域(インド、韓国、オセアニア)向け売上高は1兆524億円と全体の12.8%となっている。

地域 2014年
売上高 割合
中国 5466億円 6.7%
アジア・太平洋 1兆524億円 12.8%