中国の4大銀行(中国工商銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、中国銀行)の純利益と不良債権推移。


通期

  2014年12月期 2015年12月期 2016年12月期
純利益 不良債権額 純利益 不良債権額 純利益 不良債権額
工商銀行 2758億元 1244億元 2771億元 1795億元 2782億元  
建設銀行 2278億元 1131億元 2281億元 1659億元 2314億元  
農業銀行 1794億元 1249億元 1805億元 2128億元 1839億元  
中国銀行 1695億元 1004億元 1708億元 1308億元 1645億元  
8525億元 4628億元 8565億元 6890億元 8582億元 7673億元


【2016年12月期】
中国の国有4大銀行の2016年12月期の純利益は0.2%増の8582億元に対し、不良債権額は11%増の7673億元だった。純利益は低金利で貸出金から得られる利息収入が落ち込む。不良債権額は金額は増えたが伸び率は大幅に低下した。中国政府がとった公共投資や減税などの景気対策などで、減速が続いてきた中国経済が安定に向かっていることなどが影響した。また、中国政府は2016年10月に銀行による債務の株式化を解禁することを決定。債務の株式化や不良債権を証券化し、負債を圧縮。不良債権額を減らした。


【2015年12月期】
中国の国有4大銀行の2015年12月期の純利益は0.5%増の8567億元に対し、不良債権額は49%増の6892億元だった。中国人民銀行の利下げで貸出金から得られる利息収入が減少。2015年10月には預金金利の上限規制が撤廃。制度上は銀行の裁量で金利を自由に決められるようになり、金利競争が激化。収益の圧迫要因となった。


【2014年12月期】
前年同期比の4大銀行合計の純利益増益率は6.5%に対し、不良債権増加率は36.2%だった。石炭や鉄鋼、造船など過剰供給体質を抱える業界向けを中心に不良債権が増加した。なお、2014年末時点の不良債権残高は計4631億元。


中間期

  2013年1-6月 2014年1-6月 2015年1-6月期
純利益 不良債権額 純利益 不良債権額 純利益 不良債権額
工商銀行 1383億元 818億元 1481億元 1057億元 1490億元 1634億元
建設銀行 1197億元 803億元 1306億元 956億元 1318億元 1443億元
農業銀行 924億元 867億元 1040億元 974億元 1043億元 1595億元
中国銀行 807億元 695億元 858億元 858億元 907億元 1250億元
4311億元 3183億元 4724億元 3845億元 4758億元 5922億元


【2015年1-6月期】
中国の4大銀行の1-6月期の純利益は4758億元に対し、不良債権額は5922億元だった。国内景気の減速や中国人民銀行による利下げ、金利自由化に向けた動きが収益を圧迫している。また、鉄鋼や石炭、造船など過剰体質を抱える業種で設備投資や在庫削減などリストラ策を実施。一部企業で経営が困難になり不良債権が増加した。


【2014年1-6月期】
前年同期比の4大銀行合計の純利益増益率は9.5%に対し、不良債権増加率は20.7%だった。2014年前半の景気減速や海外向け輸出の鈍化などから中小企業を中心に不良債権が増加。不動産価格の下落で融資を返済できない個人も増えた。また、中国政府が進める過剰供給業界のリストラ策で鉄鋼価格が下落し、大量に在庫を抱えていた企業の不良債権比率も上がっている。 
 

参考 

【利息収入が減少傾向】
中国の国有銀行はこれまで金利規制に守られて安定的に収益を上げてきたが、状況が悪化。中国人民銀行は国内景気のてこ入れで、2014年11月から利下げを実施。貸出金から得られる利息収入は減少している。

  2014年 2015年
11月 3月 5月 6月 8月 10月
貸出金利 5.6% 5.35% 5.1% 4.85% 4.6% 4.35%
預金金利 2.75% 2.5% 2.25% 2.0% 1.75% 1.5%


【資金調達コストが増加傾向】
中国人民銀行は大口預金から段階的に預金金利の自由化を進め、2015年10月には預金金利の上限規制を撤廃した。預金獲得競争が銀行の体力を弱める可能性がある。


【銀行による株式投資は禁止】
中国の商業銀行法は政府が認める例外を除き、銀行による株式投資を禁止。顧客に販売する理財商品も大半は債券などで運用されており、株式に投資する商品は全体の8.3%であるもよう。


【預金保険制度を導入】
中国政府は2015年5月に預金保険制度を導入し、個別銀行の経営破綻が金融システム全体に波及するのを防ぐ体制を整備した。