セルロースナノファイバーは、紙原料のパルプ繊維をナノレベルまで細かくしたもので、軽量でありながら、高強度の物質。自動車部品や食品包装フィルム、液晶ディスプレイなど様々な用途に利用でき、次世代の高機能材料と期待されている。
セルロースナノファイバーは炭素繊維に近い強度と軽さを兼ね備える。炭素繊維は石油を原料とする一方、セルロースナノファイバーは木材が原料。量産が進めば、原料を輸入に頼らずに大量調達できる。
セルロースナノファイバーの国内生産能力は年60~70万トン、1キログラムあたりの製造コストは5000~1万円とみられる。量産効果で2020年をめどに普及の目安とされる1キログラムあたり1000円台への引き下げを目指す。
なお、経済産業省は2030年に1兆円規模の市場に育てる目標を掲げている。
セルロースナノファイバーの市場規模
2030年 | |
セルロースナノファイバー | 1兆円 |
セルロースナノファイバー関連銘柄一覧
企業 | 内容 | 発売・量産開始 |
特種東海製紙 | 産業用リチウムイオン電池の絶縁体として供給 | 2017年度 |
古河電気工業 | 製造コストを10分の1以下に下げる技術を開発 | 2024年 |
デンソー | 自動車の重量を1割軽くする研究 | 2019年 |
京都大学 | ||
環境省 | ||
星光PMC | セルロースナノファイバーの表面を改良する技術 | |
日本製紙 | 消臭機能を持つシートに加工し、紙おむつに採用 | 2015年10月 |
生産能力500トンの量産設備を建設 | 2017年4月 | |
食品・化粧品向けのCNF量産設備を建設。生産能力は30トン | 2017年9月 | |
中越パルプ | 商業プラントを建設。生産能力は年100トン | 2017年4月 |
王子HD | 年25万平方メートルの透明シートを生産 | 2017年後半 |
大王製紙 | 食品用の包装材などとして製品化 | 2020年まで |
第一工業製薬 | 増粘剤を開発 | 2015年9月 |
北越紀州製紙 | 工場に使うフィルターの原材料への応用を研究 |
【特殊東海製紙】
2017年度中にセルロースナノファイバーの量産を開始。産業用リチウムイオン電池の絶縁体として供給。電池の性能向上につなげる。
【古河電気工業】
セルロースナノファイバーを使う樹脂の製造コストを現状の10分の1以下に下げる技術を開発。2024年をめどに量産技術を確立。自動車の内装や電装部品、ボディーの外板向けの受注を狙う。将来的にボディーの鉄やアルミなどの代替も視野に入れる計画。
【デンソー 京都大学 環境省】
セルロースナノファイバーを使い自動車の重量を1割軽くする研究を実施。2017年度からの3年間で総額120億円を支援。2019年度に車体を作り、CO2の削減効果を確かめる。
【星光PMC】
製紙用薬品の技術を応用し、セルロースナノファイバーの表面を改良する技術を保有。自動車部品向け樹脂への活用が期待されている。2013年からサンプルを出荷している。
【日本製紙】
2015年10月にセルロースナノファイバー(CNF)を実用化。2015年10月に抗菌・消臭機能を持つシートに加工し、大人用おむつに採用し発売した。また、宮城県の石巻工場に16億円を投資し、生産能力500トンの設備を建設。稼働は2017年4月。島根県の事業所に食品・化粧品向けのCNFを量産する設備を建設。生産能力は30トンで、完成は2017年9月。
【中越パルプ】
セルロースナノファイバーの商業プラントを建設。投資額は約12億円。生産能力は年間約100トン。稼働は2017年4月。量産で生産コストを引き下げ、自動車部品向けなどに販売する。
【王子ホールディングス】
セルロースナノファイバーを2017年後半から量産。年間25万平方メートルの透明シートを生産する設備を国内工場に導入する。投資額は約20億円。将来的に生産能力を4倍まで拡大できるという。鉄やガラスの代替素材として自動車メーカーや航空機、有機ELディスプレイ部材向けの採用を目指す。
【第一工業製薬】
セルロースナノファイバー入りの増粘剤を開発。三菱鉛筆が欧米で販売しているボールペンのインクに採用されている。