経済産業省は送電網強化や固定価格買取制度の見直しに着手する方針。買取電力量に上限を設ける総量規制や買取価格の改定、導入が遅れている風力発電を優遇する案などが検討されている。

政府は2012年7月から再生エネルギーを買い取ることを電力会社に義務付ける「固定価格買取制度」を開始。2年で設備容量7178万キロワットを認定。原発70基分に相当し、再生エネルギー事業者が急増した。しかし、2014年9月30日に北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力の4電力が新規買取契約を当面停止すると表明。再生エネルギー設備の大半を占める太陽光発電は、夏の日中には発電量が大きく増えるが、冬場や悪天候時には急減する。域内の電力量が不安定になり、設備の故障や大規模停電の可能性が高まった。

また、経済産業省は2014年6月時点で認定した再生エネルギーが全て発電を始めると、買取総額が現状の4倍の2兆7018億円に達すると試算。買取制度の原資は電気料金に上乗せされていることから、このまま再生エネルギーの導入が続けば、一般家庭の1ヶ月あたりの負担額が225円から935円まで上昇するとした。


再生可能エネルギー買取制度見直し

政府は2014年6月から太陽光を中心とする再生可能エネルギー買取制度の見直しに着手。買い取る電力の量に上限を設ける総量規制の導入を検討する。一定量を超えた分は自由に価格を決められる様にし、買取コストも下げる。太陽光発電に限って買取価格を引き下げたり、価格改定を年1回から複数回にすることも検討。経済産業省は2015年以降は20円台に引き下げる案も検討している。

買取決定後も長期間稼動していない再生エネルギー施設の認定を取り消し、新規参入の余地を増やす。大手電力が太陽光発電事業者の発電量を制限出来る制度を拡充。現在は年間30日までで、30日を超えると補助金を支払う必要があるが、補助金を支払わずに制限できる期間を延ばす。

項目 内容
総量規制 買い取る電力量に上限
一定量を超えた分は自由に価格を決定
価格改定 年1回から複数回
2015年以降は20円台に引き下げ
認定 長期間稼動していない施設の認定取り消し
発電量の制限 30日以上に延長

 

【再生可能エネルギー買い取り価格】
 経済産業省は、2015年11月5日、再生可能エネルギー買取価格で地熱や中小水力発電を優遇する方針を明らかにした。政府が認定した設備のうち96%を太陽光が占めていることから、地熱や水力の普及を後押しする。地熱や水力発電は安定的に発電ができる一方、開発に時間がかかる。

分野 買取額
太陽光発電 38円→32円
風力発電 23円
地熱発電 26円
水力発電 24円
バイオマス発電 13円~32円

 

受け入れ能力強化 

不安定な太陽光で発電する電気をためるための蓄電池の導入や再生エネルギーの電力を全国の各電力会社が横に融通したり、再生エネルギーを受け入れる地域の送電網を強化したりする案を検討。インフラ投資として全国で数兆円規模が必要との見方がある。送電網を強化すれば投資費用が電気料金に上乗せされる可能性がある。

項目 内容
対策 蓄電池の導入
送電網強化
再生エネを全国の各電力が横に融通
問題 数兆円規模のインフラ投資
投資費用が電気料金に上乗せ