約120兆円の公的年金資金を運用する年金積立管理運用独立法人(GPIF)の運用利回りは2012年度10.23%だった。一方で、2003年から2012年度は14%とカナダの年金基金の57%やノルウェーの40%などと比べて低くなっている。また、GPIFは2009年以降、年金給付額の増額で年4~6兆円を取り崩しており、運用成績の向上が急務となっている。

 

GPIFの運用実績

GPIFは、2014年8月29日、2014年4-6月期の運用実績は2兆2235億円と発表した。利回りは1.77%。国内株式は5.11%、外国株式は3.06%、国内債券は0.72%、外国債券は0.55%だった。

【2014年度】

  第1四半期
運用実績 2兆2235億円
運用利回り 1.77%
国内株式 5.11%
外国株式 3.06%
国内債券 0.72%
外国債券 0.55%


【2013年度】

  第1四半期 第2四半期 第3四半期 年度
運用実績 2兆2100億円 3兆2418億円 5兆7704億円 10兆2207億円
運用利回り 1.85% 2.27% 4.73% 8.64%
国内株式 9.7% 6.07% 9.19% 18.09%
外国株式 6.14% 7.13% 16.23% 32%
国内債券 ▲1.48% 1.18% 0.18% 0.6%
外国債券 4.01% 1.64% 8.16% 14.93%

 

GPIFの資産構成 

2014年10月31日、新しい資産運用の目安を発表した。外国債券・株式は23%から40%、国内債券は60%から35%、国内株式は12%から25%に変更する。インフラや未公開株、不動産といったオルタナティブ投資の資産区分を設けることは見送った。これらは投資内容に応じて国内外の債券や株式に分類し、総額が資産全体の5%を超えないようにする。また、海外株式比率の目安を引き上げで、経済成長が続く新興国の株式にも積極的に投資する方針。

GPIFは新たな資産運用方針については「GPIFがいつまでにどの資産の比率を何%に引き上げるという工程を示し、それに従って売買を進める」としている。また、相場急変などに備え、一定の幅で目安から離れることも認めている。国内株式の場合、目安の12%から上下6%分の幅で運用するのが基本ルールとなっている。

なお、現在の資本構成の長期的な運用利回りは3.42%と見込まれている。

  短期資産 海外債券 海外株式 国内債券 国内株式
新目安 5% 15% 25% 35% 25%
従来目安 5% 11% 12% 60% 12%

 

GPIFの運用改革 

国内債券中心の運用から株式等比較的リスクの高い資産への運用を拡大する。GPIFの資産の72%は国債で運用されており、金利は0.7%前後で推移するなど低金利が続いている。一方、道路や港湾などインフラを対象とした投融資は、最大10%程度の利回りを得られる。

政府はインフラファンドやプライベートエクイティ、不動産など新しい資産への投資を提示。株式への投資では、より収益性を高める運用策として、保有株式の議決権を積極的に行使し、利益の最大化を図るべきとの案が盛り込まれた。また、2014年度中に海外年金基金との共同投資を始めるように求める方針。リスクの高い投資商品に通じた海外勢と連携することで、国債が中心だった保守的な運用姿勢を見直す。

改革 内容
資産構成割合  国内債券中心から株式など比較的リスクの高い資産への運用を拡大
 インフラファンドやプライベートエクイティ、不動産などへの投資を拡大
法人体系  独立行政法人から認可法人への移行
ガバナンス  保有株式の議決権を積極的に行使し、利益の最大化を図る


【株式】
 2014年5月30日、より収益性を高める運用策として、保有株式の議決権を積極的に行使し、利益の最大化を図るという新たな行動ルールを受け入れると発表した。これまで運用会社に任せていた議決権の行使についての指針をこれから作る計画。

【運用手法】
2014年4月4日、日本株の運用手法を見直したと発表した。インデックス運用を広範に活用し、パッシブ運用では従来の「TOPIX」に加え「JPX日経400」を含む3つのインデックスを新たに採用。アクティブ運用ではインデックスに依拠しつつ、中長期で収益を獲得する手法「スマートベータ型アクティブ運用」を従来の伝統的アクティブ運用と別枠に位置付けた。新たなインデックスの採用に伴い、不動産投資信託「J-REIT」への投資もスタートさせる。

【インフラ投資】
公的年金を運用する年金積立管理運用独立法人(GPIF)は、2014年2月28日、カナダの公的年金と共同で海外インフラ投資を始めると発表した。日本政策投資銀行とカナダのオンタリオ州公務員年金と共同で、先進国の電力発送電、ガスパイプライン、鉄道などオンタリオ州公務員年金が発掘するインフラに投資する。投資期間は5年で、最大2800億円を投じる見通し。

なお、オンタリオ州公務員年金基金のインフラ投資の収益率は2009年~2013年の年率11%となっている。

【物価連動国債】
2014年4月から物価連動国債に4000億円投じる方針。物価連動国債とは満期時の消費者物価に連動して元本を払い戻すもので、物価が上がれば元本も金利も増える。