2014年6月11日、電力小売りを2016年に全面自由化する改正電気事業法が成立した。現在、一般家庭は地域の電力会社からしか電気を買えないが、2016年以降は契約する業者を選べるようになる。新規ビジネスの創出も期待され、経済産業省は約7.5兆円の市場が開かれると試算している。

販売電力量の40%を占める家庭や商店向けは東京電力など大手10社が地域毎に独占。2000年以降、工場やオフィスなど契約電力が50キロワット以上の大口需要家向けで全体の60%を自由化してきたが、2011年時点で新電力のシェアは3.6%にとどまっていた。

政府は、電力会社から送配電部門を切り離すことなどを盛り込んだ電力システムの改革方針を決定。2015年から3段階で改革を実施。2018年から2020年をめどに発送電を分離し、電力料金も全面自由化する方針。

2015年に地域間の電力融通機関を設置。2016年から電力小売りの全面自由化への法改正を達成。2020年4月から大手電力会社の発送電分離を求める改正電気事業法が成立した。

電力システム改革 スケジュール

年度 計画 内容
2015年 地域間の電力融通機関を設置 地域をまたぐ供給設備を整備。緊急時に全国から融通を指示する権限を付与。
2016年 電力小売り参入の自由化 家庭向け電力供給の自由化
2018~2020年 発送電を分離 電力会社の送配電部門の中立性・独立性を高める

 

政府の動き

項目 内容
電力融通体制 2015年に広域系統運用機関を設置
2016年に連携線で新システムを稼働
送配電部門システム 電力10社の企画を統一
東西の送電能力増強 15年120万kW→20年210万kW→早期300万kW

【電力融通体制】
経済産業省は全国の電気料金をなだらかにできるように電力融通体制を整える。2015年に日本全体の需給を調整する「広域系統運用機関」を設置し、地域をまたぐ供給の司令塔を作る。2016年には地域間の電力を結ぶ連携線で新システムを稼働。連携線の利用までに数時間かかった処理を10分以内に縮められ、全国の発電所から安い電気を選んで買え、大手以外の新電力の参入も見込める。

【送配電部門システム規格を統一】
電力業界10社の送配電部門システム規格を統一していくことで合意。電力小売りを行うために、企業は電力使用量の情報を知る必要があるが、現在は家庭メーターを設置している電力会社の送配電部門が握っている。電力会社のシステムを揃えることで、新規参入コストを引き下げ、新たな料金プランを作りやすくなる。

経済産業省は2014年秋までに電力会社がシステム規格や企業と接続する条件をどこまで揃えるかを詰める見通し。

【東西の周波数変換設備容量を増強】
東日本と西日本の周波数の違いで融通が滞る懸念から、東西をつなぐ周波数変換設備の容量を現在の120万キロワットから2020年までに210万キロワットに増強。その後、早期に300万キロワットまで増やす方針。設備投資額は約3000億円とみられる。費用は電気料金に上乗せしてまかなう見通し。電力会社の地域をまたいだ競争を後押しし、再生可能エネルギーの安定的な受け入れにもつなげる狙い。
 

システム開発

コード 企業 内容
6501 日立製作所 電力広域運営推進機関向け基幹システム
9613 NTTデータ スイッチング支援システム
6702 富士通 メールなど電力業務以外のシステム

【日立製作所】
電力を地域間で融通するために2015年4月に発足する電力広域運営推進機関向け基幹システムを開発する。2016年4月に稼働予定。電力各社が持つ需要や発電設備の稼動状況をリアルタイムで共有し監視。地域をまたいで電力を融通する連携線の管理や東西で異なる周波数を調整する。また、太陽光や風力など再生可能エネルギーの不規則な発電量の変動を広域的に吸収。1時間前などに電力不足の恐れが生じた地域に余力を持つ電力会社が電力を融通するよう指令する機能も備える。

【NTTデータ】
企業や家庭などの需要家が電力を購入する電力会社を別の会社に切り替える時に使うスイッチング支援システムを開発。電力会社は需要家からの依頼で電力の使用状況の情報を入手。需要家がスマートメーターを設置している場合、需要家の許諾を得た上で、電力会社は30分ごとの使用量データを入手できる機能を備える。