政府は、2017年9月中にも保有する日本郵政株の追加売却を実施する方針。財務省は、2017年度の特別会計の予算案で最大1.4兆円の売却収入を見込んでいる。日本郵政傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の追加売却は、現時点では予定していない。
2012年春に成立した郵政民営化見直し法で、政府が日本郵政株の3分の1超を残して売却できるようになった。政府は3分の2を売却するため、2015年度から2022年の間に3回に分けて売却。東日本大震災の復興財源として4兆円を確保する計画。
政府は、2015年の日本郵政の上場で20%分を1.4兆円で売却した。
なお、日本郵政は2015年に6200億円で買収した豪物流子会社のトールで2016年度に減損処理。トールはオーストラリアの物流大手で、アジアや欧州、北米などを中心に世界55カ国・地域に1200以上の販売網を保有。陸運だけでなく、海運や倉庫なども持つ。日本郵政はトールをグローバル展開のプラットフォーム企業と位置づけ、国際物流事業を拡大する方針だったが、資源安の影響でオーストラリア経済が低迷し、業績が悪化。損失を出し切って、市場に理解を求める。
項目 | 内容 |
日本郵政株の追加売却検討 | 2017年夏→2017年9月 |
2017年度の特別会計の予算案 | 最大1.4兆円の売却収入 |
財務省 今後の日本郵政株の売却計画
2022年度までに日本郵政株をもう1回程度売却し、財務省の持ち株比率を3分の1強まで引き下げる計画。
日本郵政の経営計画
日本郵政の2015年~2017年の経営計画。2017年の純利益4500億円、配当性向50%以上を目指す。
2014年 | 2017年 | |
純利益 | 4200億円 | 4500億円 |
【投資計画】
投資額 | 2015~2017年 | |
1兆9600億円 | 施設・設備 | 6700億円 |
システム | 4200億円 | |
不動産 | 700億円 | |
戦略投資 | 8000億円 |
※戦略投資はトール社買収にかかる投資6200億円を含む
【郵便・物流事業】
ゆうパック・ゆうメールの拡大やトール社をプラットフォームとした国際物流事業を拡大する。また、郵便局のネットワークを活用し、提携金融サービスや物販、不動産も伸ばす。
項目 | 内容 |
ゆうパック | 2014年4.9億個→2017年6.8億個 |
ゆうメール | 2014年33.8億個→2017年41億個 |
提携金融サービス | 2013年41億円→2017年200億円 |
物販 | 2013年167億円→2017年200億円 |
不動産 | 2013年117億円→2017年250億円 |
【ゆうちょ銀行】
3年間で貯金3兆円、資産運用商品1兆円の拡大を目指す。また、2017年度に外国債券や株式への投資を30%増の60兆円とし、運用収益を増やす。
運用資産 | 項目 | |
200兆円 | 国債 | 100兆円 |
外国債券・株式等 | 46兆円→60兆円 |
【かんぽ生命】
2016年度に新契約500億円台に乗せ、2017年度以降の底打ち・反転を目指す。
日本郵政の業績推移
経常収益 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2017年(予) | 12兆4600億円 | 7800億円 | 4000億円 | - | - | - |
2016年 | 13兆3265億円 | 7952億円 | ▲289億円 | 14兆9545億円 | 293兆1625億円 | 4.6% |
2015年 | 14兆2575億円 | 9662億円 | 4259億円 | 15兆1760億円 | 291兆9470億円 | 4.7% |
2014年 | 14兆2588億円 | 1兆1158億円 | 4826億円 | 15兆3015億円 | 295兆8497億円 | 5.2% |