ロシア向けの経済制裁は政府関係者らの渡航禁止や資産凍結から金融面での圧力に変わっている。
米国は、7月16日、国営石油のロスネフチ、天然ガス企業のノバテク、国営ガス企業ガスプロム傘下の銀行ガスプロムバンク、ロシア国営の対外経済銀行などを対象に米国民と米在住者からの企業への融資や金融取引を禁止。7月29日には、国営銀行VTB、モスクワ銀行、ロシア農業銀行に対象を拡大。国営造船グループ・USCの米国内での資産を凍結。米商務省はロシアのエネルギー企業への技術関連輸出を制限。9月12日には、ロシア国営のガスプロムや国営石油のロスネフチ、ガスプロムネフチ、スルグートネフチガス、国営石油輸送のトランスネフチなどへの技術・サービスの提供を禁止。金融面ではこれまで制裁を科した銀行5行に加え、ロシア国内の総資産4分の1を占める銀行ズベルバンクにも米金融市場での資金調達を禁止。ミサイルや銃、弾丸などを生産する国営防衛企業5社についても、米国内の資産を凍結し、米国企業・個人との取引を禁止した。
欧州連合(EU)は、7月17日、EUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)が対ロシア国内の新規融資を停止。7月23日には、EU加盟国が主要メンバーを務める欧州復興開発銀行(EBRD)が対ロシア新規融資案件の承認を凍結。7月29日には、ロシア政府が50%超出資する金融機関が新規に発行する債券や株式をEU域内の個人や企業が購入することを禁止。ロシアとの新規武器売買契約や油田開発などに関する技術供与も禁止。9月12日には、国営石油のロスネフチや国営石油輸送のトランスネフチ、国営ガスのガスプロムネフチ、防衛産業で国営のUAC(統一航空機製造会社)など6社を対象に、債権や株式だけでなく、新たに融資も規制した。
ロシアへの経済制裁推移
国 | 発表日 | 内容 | |
米国 | 3月3日 | オバマ大統領「我々はあらゆる措置を打ち出し、ロシアを経済的・外交的に孤立させる」 | |
3月6日 | 一部当局者の資産凍結やビザの発給制限、米国への渡航禁止 | ||
3月17日 | ロシア高官やヤヌコビッチ氏ら11人の資産を凍結 | ||
3月21日 | ロシア産業への制裁を可能とする大統領令に署名 | ||
7月16日 | 主要エネ企業や銀行の資金調達を制限 | ||
7月29日 | ロシア国有3銀行の資金調達を制限 | ||
ロシア国営造船USCの米国内の資産を凍結 | |||
ロシアのエネルギー企業への技術関連輸出を制限 | |||
9月12日 | ロシア国営エネルギー企業への技術・サービス提供を禁止 | ||
銀行ズベルバンクの米国市場での資金調達禁止 | |||
国営防衛企業5社の米国内資産を凍結。米国企業・個人との取引禁止 | |||
EU | 3月17日 | ロシア政府関係者ら21人のEUへの渡航禁止や資産凍結→33人へ | |
4月29日 | 新たに15人を制裁の対象者へ | ||
5月12日 | 政府高官ら13人を新たな制裁対象者へ | ||
エネルギー会社2社の資産を凍結 | |||
7月16日 | EIBの対ロシア新規融資を停止 | ||
7月22日 | EBRDの対ロシア新規融資を凍結 | ||
7月29日 | ロシア政府が50%超出資する金融機関の資金調達を制限 | ||
ロシアとの新規武器売買契約を禁止 | |||
北極海での油田開発、シェールオイル掘削関連技術供与を禁止 | |||
9月12日 | 国営企業6社を対象に融資規制 | ||
日本 | 3月18日 | ビザ緩和協議停止 | |
4月29日 | ロシア政府関係者ら23人へのビザ発給を当面停止 | ||
8月 | ロシア政府関係者ら40人と2団体の資産を凍結 | ||
9月25日 | ロシア5銀行の証券発行・募集を許可制へ | ||
対ロ武器輸出や技術提供を制限 | |||
露 | 3月21日 | 9人の米政府高官や議員らのロシアへの渡航制限 |