ウクライナ情勢緊迫化後のウクライナの主な経済状況推移。GDP成長率や財政、ウクライナへの支援や通貨フリブナへの対応まとめ。


GDPとインフレ率

ウクライナ中央政府は、2014年の実質GDP成長率が7.5%減になったと表明。輸入物価も上昇し、インフレ率は21%に達した。

2015年の実質GDP成長率は、ウクライナ政府は4.3%減になると予想している。国際通貨基金(IMF)は5.5%減から9%減に下方修正した。通貨フリブナの下落やガス料金などの引き上げで、インフレ率は40%を超えるとの見方も示した。

【ウクライナ政府】

  2014年 2015年(予)
GDP ▲7.5% ▲4.3%
インフレ率 21%  

【IMF】

  2015年(予)
GDP ▲9%
インフレ率 40%超


通貨フリブナ

【政策金利】
ウクライナ中央銀行は、2015年3月3日、政策金利を19.5%から30%に引き上げることを決めた。インフレと通貨安に歯止めをかける狙い。また、輸出業者に外貨収入の4分の3のフリブナへの両替を義務付ける措置もとる。

2015年 2月 3月
政策金利 14%→19.5% 30%


【為替政策】
ウクライナは通貨フリブナの下落を防止するため、外国為替市場での介入を再開したもよう。2014年10月23日に日本経済新聞が報じた。2014年5月20日、ウクライナ中央銀行は、通貨フリブナの変動相場制への移行を認めた。クビフ総裁は金融支援を受ける国際通貨基金(IMF)などとの合意に基づき変更したとしている。
 

2014年 内容
10月 為替介入再開
5月 変動相場制に移行

 

財政 

2015年の政府予算は歳入が約4752億フリブナに対し、歳出が約5271億フリブナ。ウクライナ東部の軍事的緊張が続き、国防費が増加。2014年3月に年金などの社会保障給付やエネルギー補助金など約43億ドルの歳出を削減。公務員の賃金抑制や企業への補助金削減、たばこ・酒税の引き上げなど緊縮策に踏み切る方針を公表。2014年4月に続き5月から企業・法人に対する天然ガス供給価格を17.5%引き上げるなど、様々な措置を導入し国防費を捻出している。
 

  2015年
歳入 4752億フリブナ
歳出 5271億フリブナ
合計 ▲519億フリブナ


デフォルト懸念

国際通貨基金(IMF)は、2015年2月12日、ウクライナに約175億ドル(約2兆1000億円)の追加金融支援を実施することで合意した。期間は4年。ウクライナは内戦や構造改革の遅れなどから、2015年に約150億ドルの支援資金が必要になるとの見方がある。なお、欧州連合(EU)は、2015年1月8日、18億ユーロの追加金融支援を、2015年2月12日には世界銀行が20億ドルの金融支援を年内に実施すると表明した。

ウクライナ政府は、2014年2月27日、対外債務がGDPの約80%に相当する1400億ドル(約14兆円)に達したと発表した。うち、650億ドルが支払い期限の迫る短期債務だとしている。ウクライナ財務省はデフォルト危機を回避するためEUや米国、IMFなどの機関に包括的な支援策を協議する国際会議を開くよう要請。2014年から2015年の総支援額を約350億ドルと想定した。

2013年12月、ロシアは旧ヤヌコビッチ政権に150億ドルの支援を約束するも、同政府が崩壊したことから支援を中止。2014年3月に米国が10億ドル(約1000億円)の債務保証を発表。EUは110億ユーロ(約1兆5400億円)の包括支援策を発表。日本は15億ドル(約1500億円)の支援策を発表。IMFは140億ドルから180億ドル(約1.4兆円から約1.8兆円)の融資枠を設定。ウクライナはこれらで2014年の130億ドル分の債務を賄う。

なお、ロシアは2013年12月にウクライナに対して行った30億ドルの金融支援で、政府債務の上限がGDP比で60%を超えると国債の償還を求めることができる規定がある。償還日は2015年12月21日。


【ウクライナの債務】

項目 14年2月
対外債務 1400億ドル
うち短期債務 650億ドル
支援総定額 350億ドル
  2014年
2月 10月
対外債務 1400億ドル 1360億ドル


【支援】

  支援額
2014年 2015年
IMF 140~180億ドル 175億ドル
EU 110億ユーロ 18億ユーロ
世界銀行   20億ドル
米国 10億ドル  
日本 15億ドル  


参考

【ウクライナ向け貸付】
※国際決済銀行の集計

金額
イタリア 57億ドル
ギリシャ 14億ドル
米国 11億ドル
ドイツ 10億ドル