リプロセルは、ヒトiPS細胞及びヒトES細胞の技術を基盤としたiPS細胞事業と、腎臓移植などに関わる臨床検査事業を展開している。ヒトiPS細胞から、心筋、神経、肝臓などの様々な細胞を作製し、専用培養液やコーティング剤と共に主に製薬企業に販売。臓器移植及び造血幹細胞移植で必要とされる臨床検査に特化した検査受託サービスも展開している。 2013年6月26日に新規上場。公募で調達した14億件は臓器細胞を増産するための設備投資や研究開発費などに充てる。 2013年度の通期最終損益は6000万円の赤字になる見通し。2014年度は黒字転換を目指すが、繰越欠損金の解消に時間がかかるため、当面は無配が続く見通し。 {主要業績指数推移}
売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2012年 3億1652万円 ▲2092万円 ▲2220万円 2億2569万円 3億1489万円 78.0%
2011年 2億7810万円 ▲2937万円 ▲3489万円 2億6789万円 3億1823万円 84.2%
2010年 2億2191万円 ▲4447万円 ▲5015万円 3億278万円 3億5535万円 85.2%
2009年 1億7891万円 ▲6533万円 ▲6666万円 3億294万円 3億3434万円 90.6%
2008年 6612万円 ▲1億3354万円 ▲1億3392万円 1億3860万円 1億6000万円 86.6%
{主要株主}
コード 企業名 所有株式数 所有割合
8086  ニプロ 100万株 11.36%
3386  コスモ・バイオ 15万株 1.70%
8001  伊藤忠商事 14万2850株 1.62%
2370  メディネット 10万株 1.14%
4021  日産化学 4万4610株 0.54%
{事業内容} 【細胞製品】 ヒトiPS細胞から、心筋、神経、肝臓など様々な細胞を作製し、製薬企業に販売している。細胞の販売だけでなく、専用の培養液やコーティング剤もセットで販売している。この細胞製品は、製薬企業で新薬候補化合物の薬効試験や毒性試験の実験材料として使用される。これまで、ヒトiPS細胞の製造は京都大学や医薬基盤研究所など世界最先端の技術を有する研究機関との共同開発で行われてきたが、現在はリプロセル社内で製造されており、販売も日本、米国、欧州共に直接行っている。 【ヒトiPS細胞の創薬応用】 新薬開発には探索研究、前臨床試験、臨床試験の3つのプロセスに分けられる。臨床試験で初めて、新薬候補加工物がヒトに投与されるが、それ以前ではヒト細胞はドナー不足で安定供給が容易ではないことから、がん化細胞や実験動物が主に使用されている。ヒトiPS細胞は、様々な細胞に変化し、高い増殖性も兼ね揃えているため、心筋や神経細胞など様々な体細胞を安定的に供給することが可能になる。ヒト細胞を安定的に製薬プロセスで利用することにより、ヒトと動物の反応性の違いや安定供給の課題を克服することができると期待されている。 リプロセルでは、製薬企業にとってニーズの高い心筋、神経、肝臓の3種類の細胞に注力し、事業化が進められている。 【心筋細胞】 医薬品の心臓に対する副作用を避けるため、全ての医薬品に安全性を確認する心筋毒性試験が義務付けられている。現在、心筋毒性試験には、特定の遺伝子を組み込んだがん化細胞を用いた試験と動物実験が行われている。がん細胞を用いた試験では、特定の遺伝子に対する単純な反応は評価できるが、実際の心臓で起こる複雑な反応を予測することは困難となっている。また、動物実験では高い精度で毒性の評価が可能だが、1つの化合物に対するテストを行うのに多くの時間とコストが必要という課題がある。ヒトiPS細胞から心筋細胞を作製し、安全性試験に使用することで、実際の心臓で起こる複雑な反応を予測することが可能になる。 リプロセルは、平成21年4月に世界で始めてiPS細胞から心筋を作製することに成功。製薬企業に供給している。また、ニプロと共同で、一度に96種類の薬物評価試験が可能になるプレートを開発。コストと時間の大幅な短縮を可能にしている。 【神経細胞】 アルツハイマー病やパーキンソン病など神経変性疾患の治療薬開発には、ヒトの神経細胞を実験材料として利用することが理想的だが、供給が難しい。そこで、ヒトiPS細胞から神経細胞を作製し、実験材料として利用されている。 リプロセルはヒトiPS細胞から各種の神経細胞を作製することに成功し、平成22年10月に世界で初めてiPS細胞由来の神経細胞の販売を開始した。リプロセルでは、アルツハイマー病の評価材料としてコリン作動性神経(大脳)、パーキンソン病用にドーパミン作動性神経(中脳)を供給している。 【肝細胞】 投与された薬のほとんどは肝臓で代謝を受けることから、新薬開発では肝臓における代謝の影響や肝毒性などの検討項目が課されている。現在、薬剤試験では主に亡くなった人のドナーから得られる肝細胞が使用されているが、供給面や細胞の品質のばらつきから再現性の高い薬剤試験の結果が得にくくなっている。そこでiPS細胞技術を使用することで、均質な肝細胞が大量に供給可能になると期待されている。 リプロセルは医薬基盤研究所との共同研究により、世界で初めてiPS細胞由来肝細胞の製品化に成功し、平成24年6月に上市した。 {2016年までの業績推移計画} 2014年から2015年にかけて普及の基盤づくりを行い、2016年から細胞製品が大量に使用されることによる売上高の大幅な増加を見込む。新規上場によって調達した14億円は臓器細胞を増産するための設備投資や研究開発費などに充てる。また、公的助成金も活用する。
  売上高 営業利益 経常利益 純利益
2014年 4.7億円  ▲0.8億円  ▲0.5億円  ▲0.6億円 
2015年 7.1億円  ▲0.2億円  0.1億円  0.1億円 
2016年 14.7億円  3.2億円  3.4億円  2億円 
{2016年までの事業計画} 対象顧客は製薬企業で、日本、米国、欧州が中心。米国ではボストンに販売拠点を設立。欧州では2015年までに販売拠点設立を計画する。2015年までは普及基盤づくりをし、2016年以降は製薬会社で細胞製品が大量に使用されることによる売上の大幅な増大を見込む。 【米国】 2012年12月に米国ボストンに販売拠点を設立。ハーバード大学やMITなど細胞医療分野をけん引する大学が集積しており、営業活動を行っていく。 【欧州】 欧州のほぼ全ての主要国で販売代理店契約を締結している。今後、販売代理店を通じた販促活動をさらに強化することで、売上高を拡大する。また、2015年までに欧州に販売拠点を設立する計画。 【アジア】 アジアのほぼ全ての主要国で販売代理店契約を締結している。今後、販売代理店を通じた販促活動をさらに強化することで、売上高を拡大する。