ブロックチェーン関連では、資金調達や出資、研究開発などの動きから、具体的なサービスに向けた動きが出てきた。決済に関する動きから、保険、不動産、宅配などにも広がってきている。主なブロックチェーン企業の動きを整理した。
ブロックチェーン 活用領域が拡大
企業 | 内容 |
スマートバリュー | 車載機器で自動車の走行データをブロックチェーンに書き込み |
東京海上HD | 17年4月から福岡県で医療情報を管理する実証実験 |
貨物保険の書類を共有 | |
MS&AD | 船積み書類や銀行が発行する信用状などの書類を共有 |
SJI | 次世代マンションなどのシステム開発で提携 |
ディア・ライフ | |
リネットジャパン | ネットリユース事業で実証実験 |
カイカ | |
セゾン情報 | 本人のみ受取可能な宅配ボックス |
GMO | |
デジタルガレージ | ポイントを即時交換できるサービス 18年に提供へ |
テックビューロ | 電子マネーを運営する勘定システムの実証実験に成功 |
さくらインターネット | |
SBIホールディングス | 独自の仮想通貨「Sコイン」を発行 |
アイル | 企業・店舗・サービスを横断したオープンなプラットフォームを開発 |
日本エンタープライズ | 17年5月から電力取引サービスの商用化に向けた実証実験 |
NTTデータなど10社 | 通関手続きに関する書類を共有し時間短縮を検証 |
ネクストウェア | セキュリティサービスやIoTサービスを提供 |
総務省 | 自治体ポイントでブロックチェーン 2018年度に実証実験 |
政府の電子申請システムで17年度中に実証実験に着手 |
保険
【スマートバリュー】
スマートバリューは、車載機器で集めた自動車の走行情報を直接ブロックチェーンに書き込めるサービスを開始する。開始は2017年9月下旬。損害保険会社が運転情報を解析し、保険料に反映させる「テレマティクス保険」や建機に載せて手抜き工事を防ぐ用途などを見込む。また、2017年秋には自治体と、クラウド型の健診・検診予約サービスとブロックチェーンを連携させる実験なども始めるという。
【東京海上ホールディングス】
東京海上日動火災保険は、2017年4月から福岡県で医療情報を「ブロックチェーン」技術を使って管理する実証実験を開始する。医療情報をブロックチェーンを使って共有し、契約者からの保険金請求に自動的に対応。契約者が事故状況などを記載する書類が不要になり、迅速に障害保険の保険料を支払うことができるという。
また、NTTデータと連携し、ブロックチェーンを使って貨物保険の書類を共有する。
【MS&AD】
三井住友海上保険は、保険証券に加え、船積み書類や銀行が発行する信用状などの書類をブロックチェーンで共有する実証実験。2017年1月から開始。書類の削減などで年2億円のコスト削減を見込む。
不動産
【SJIとディア・ライフ】
ブロックチェーンを活用した次世代マンションなどのシステム開発で業務提携。SJIはブロックチェーン技術のノウハウを保有、ディア・ライフはスマートフォンで鍵の開閉ができるスマートロックを完備した都市型マンションを展開。ブロックチェーンとスマートロックを掛け合わせ、新しいマンションの管理方法の可能性を検証する。企業の社宅や東京オリンピック向けの民泊事業の可能性を含めた検討を行う。
宅配
【リネットジャパンとカイカ】
2017年6月、仮想通貨とブロックチェーン技術を活用したネットリユース事業で実証実験すると発表。リネットジャパンが進めるインターネットと宅配を活用したリユース事業とリサイクル事業において、カイカのブロックチェーン技術の応用性や親和性を検証する。
【セゾン情報システムズとGMOインターネットグループ】
ブロックチェーンとIoT技術を活用した「本人のみ受取可能な宅配ボックス」の実証実験を実施。誤配達防止を実現する宅配ボックスの開閉制御システムを開発。本人不在時の再配達や受取の手間を削減する。冷蔵対応ボックスで、ネットスーパーなどにおける生鮮品を対象とした宅配サービスも検討する。
電子マネー
【デジタルガレージ】
ブロックチェーン関連技術の開発を手掛けるブロックストリームの技術を活用し、電子マネーなどのポイントを即時交換できるサービスを開発する。カカクコム、クレディセゾンとの3社で立ち上げた研究組織「DGラボ」と共同で基盤技術を開発。2017年内をめどに実証実験を開始。2018年のサービス化を見込む。
【テックビューロとさくらインターネット】
ブロックチェーンで電子マネーを運営する勘定システムの実証実験に成功。テックビューロのブロックチェーン開発ソフト「mijin」で、さくらインターネットのクラウドサーバーを使い、電子マネーの勘定システムを構築。1時間あたり1080万件の取引を実行しても、システムは休止せず取引記録も正確だったという。
【SBIホールディングス】
独自の仮想通貨「Sコイン」を発行。小売店舗などで消費者の決済手段として普及を目指す。独自の決済基盤システムは、ブロックチェーン技術を活用。仮想通貨だけでなく、デジタルマネーなどの決済にも対応可能。地方自治体や事業会社向けに独自のコイン発行サービスも手掛ける見通し。2018年春から実験的に社員にSコインを配布。本社の近隣店舗で利用できるようにする。
Eコマース
【アイル】
2017年6月、シビラと資本業務提携。シビラのブロックチェーン技術を活用し、アイルのクラウドサービスのセキュリティ向上、仮想通貨の導入・応用、在庫データのオープン化、企業・店舗・サービスを横断したオープンなプラットフォームの企画・開発・販売を共同で取り組む。
電力取引
【日本エンタープライズ】
2017年5月、ブロックチェーンを活用した電力取引サービスの商用化に向けた実証実験を開始。ブロックチェーンのスタートアップ企業であるソラミツが持つブロックチェーン基盤「いろは」を使用。エナリスが推進する新しい電力サービスの商用化に向けた実証を共同で行う。
貿易業務
NTTデータや東京海上日動火災保険など貿易業務に関わる業界10社程度で、ブロックチェーンを活用し、貿易業務の効率化を目指す実証実験を実施。企業間の売買契約や物流会社との通関手続きに関する書類を、ブロックチェーン上で共有し、やりとりにかかる時間短縮などを検証する。
セキュリティ IoT
【ネクストウェア】
2017年6月、シビラと資本業務提携。ブロックチェーン技術の耐改ざん性を活用したセキュリティーサービス、バイオメトリクス技術とブロックチェーン技術を融合したIoTサービスに取り組む。
政府
【自治体ポイント】
総務省は、マイナンバーカードを使った自治体ポイントで、利用履歴の管理にブロックチェーンを導入する。自治体ポイント制度では、マイレージなどの民間ポイントを自治体ポイントに交換してマイナンバーカードに保存し、地元商店街などで使えるようにしている。2018年度にもブロックチェーンを使った管理の実証実験を実施。具体的な導入方法を検討する。
【電子申請システム】
総務省はブロックチェーンを活用し、政府の電子申請システムを刷新する。2017年度中に入札手続きで実証実験に着手。2018年度に活用に向けた行程表をまとめる。総務省がパソコンを入札で購入する場合、参加企業は申請書や税の納入証明書などを用意する必要があり、それぞれの窓口を訪れて入手するなどの手間がかかっていた。ブロックチェーンでシステムを一本化することで、こうした書類を集めなくても省庁が企業情報を把握できるという。