タカタ製エアバッグは作動した際にエアバッグを膨らませるガス発生剤の金属容器が壊れ、破片がエアバッグの外に飛び出したり出火したりする恐れがあるとして各自動車会社がリコールを実施。米運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)は、2014年10月20日にリコール対象車に対して早期に修理するよう警告。対象車数を約474万台と発表し、その後780万台まで拡大した。

また、高温多湿の地域で欠陥が起こりやすいことから、フロリダ州など南部の州・地域で地域限定のリコールを指示。南部の州・地域以外でも不具合が見つかったため、2014年11月18日に全米規模に広げるよう自動車メーカーに指示を出した。

タカタと米運輸省は、2015年5月19日、全米規模でリコールを実施することで合意。対象は約3400万台に拡大した。


制裁金

タカタは、2015年11月4日、エアバッグのリコール問題で米国の運輸省道路交通安全局(NHTSA)と7000万ドル(約85億円)の民事制裁金の支払いに同意した。2020年までに分割して支払う。2018年末までに乾燥剤を含まない硝酸アンモニウムを使用したタカタ製インフレータの製造販売を段階的に中止する。一定の義務に違反した場合は、別途最大1億3000万ドル(約156億円)の支払いも発生する。

項目 内容
民事制裁金 85億円
製造販売 硝酸アンモニウムを使用したインフレータの製造販売を段階的に中止
義務違反時 156億円の支払いが発生


タカタ製エアバッグ部品の使用停止

ホンダは、2015年11月4日、今後新規に開発する車からタカタ製エアバッグ部品の使用を停止すると発表した。現在生産中の車のタカタ製エアバッグ部品は、2016年末までに段階的に他社製品に切り替える方針。ホンダはタカタの売上高の約10%を占める取引先。

また、富士重工やマツダも新型車には使わない方針を表明。日産自動車も新規には採用しない方針。三菱自動車も検討を開始している。

企業 タカタ製エアバッグ部品へのスタンス
ホンダ 新規開発車から使用を停止。生産中の車では2016年末までに他社製品に切り替え
富士重工 「新型車には使用しない方向」「安全性が確認されれば使用を検討する」
マツダ 「開発中の車両には使用しない方向」「安全性や耐久性が確保されれば是々非々で考える」
日産自動車 新規には採用しない方針
三菱自動車 採用中止の検討を開始
トヨタ自動車 「硝酸アンモニウムを使ったインフレーターは使用しない」
米フォード 開発中の新たな車には採用しない


リコール費用

タカタは、エアバッグのリコール問題で、2016年1-3月期にリコール関連の追加損失として54億円を計上した。

2015年3月期では製品補償引当金として約526億円を計上。引当金に見込んだリコール対象車数は約650万台とみられる。一方、自動車メーカーは原因究明を待たずに自主的な調査リコールを実施。対象車は全世界で6000万台規模になっているとみられる。

主要取引先のホンダは、原因がタカタにあると確認できた時点でタカタに費用を請求するとしている。タカタが欠陥を正式に認めたことで、これまでの調査リコールではなく、正式リコールへの切り替えを求められる公算が大きい。調査リコールでは原則自動車メーカーの費用負担で進められるが、正式リコールではタカタの費用負担が重くなる。

一方、ホンダはタカタが経営危機に陥った場合、誰も助けなければホンダが経営を支援する考えを示した(日経)。


【2015年度】

項目 内容
リコール関連の追加損失 15年1-3月期 54億円


【2014年度】

項目 内容
タカタのリコール関連引当金 2015年3月期に526億円
引当金対象車数 650万台
全米規模でリコール 3400万台に拡大
自動車各社の調査リコールを含む対象車数 6000万台規模
調査リコール費用 原因が確認できた時点で費用請求


訴訟

2015年4月30日、米国で統合集団訴訟が提起。訴訟額は未定。2015年3月27日、カナダで総額24億カナダドル(約2400億円)以上の損害賠償及び懲罰的損害賠償などを求めた訴訟が提起されている。

タカタは、訴訟対応費用として2015年3月期に29億円を計上している。

項目 内容
訴訟 米国 未定
カナダ 2400億円
タカタの訴訟対応費計上額 29億円(2015年3月期)


業績推移

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2015年(予) 7000億円 365億円 50億円 - - -
2014年 6428億円 406億円 ▲295億円 1487億円 4754億円 31%
2013年 5569億円 256億円 111億円 1768億円 4467億円 39.3%
2012年 4155億円 170億円 ▲211億円 1540億円 3857億円 39.5%
2011年 3827億円 134億円 119億円 1611億円 3297億円 48.5%
2010年 3908億円 270億円 182億円 1553億円 3239億円 47.6%