バイオ燃料とは、サトウキビなど食物や油分を含む種子、藻類、廃木材など生物資源を原料とした燃料。現在、トウモロコシやサトウキビなど食物が主流だが、穀物価格が上昇している。そこで、藻類から作るバイオ燃料の開発が進められている。
世界の航空機需要は2013年の1万7740機から2032年に3万5000機になる見通し。ジェット燃料は原油の精製過程で一定の比率しかできない事から、燃料需要は増加し、さらに価格高騰が予想されている。航空機向けではボーイング社やエアバス社が中心となり、農家、製油会社、航空会社、行政などからなる生産プロジェクトを各地で設立。世界中の空港にバイオ燃料が備蓄されるシステムづくりを目指している。
航空バイオ燃料開発企業
藻の種類 | コード | 企業 | 内容 |
ミドリムシ | 2931 | ユーグレナ | 2018年に事業化、2020年に量産目標 |
5020 | JXHD(新日本石油) | ||
6501 | 日立製作所(日立プラント) | ||
シュードコリシスチス | 6902 | デンソー | 2013年に軽油の量産、2018年をめどに技術確立、2020年代にジェット燃料量産化目標 |
榎本藻 | 7013 | IHI | 2018年に東南アジアで生産開始。2020年以降に大量生産化 |
ジャトロファ | 5019 | 出光興産 | ペトロベトナムグループが共同で事業化を検討 |
【ミドリムシ】
2013年2月28日、ミドリムシの細胞増殖速度の向上や細胞サイズの拡大などを実現する技術の特許を出願。燃料原料となる成分を高生産できるミドリムシ作出のための基礎技術確立を目指す。2010年5月にJAL、ANAからバイオジェット燃料開発要望を受けた新日本石油(JXホールディングス)は、日立プラントテクノロジー、ユーグレナの3社で共同研究を開始。2018年の事業化、2020年の量産化が目標。
年 | 経過 | 規模 |
2010年~2011年 | 要素技術基礎検討 | 屋内小規模 |
2012年~2013年 | 要素技術開発 | 屋外中規模 25平方メートルx2 |
2014年~2017年 | 要素技術実証 | 一貫生産システム 1000~10万平方メートル |
2018年~2019年 | 設備建設 | 商用規模100万平方メートル以上 |
2020年~ | 実用化 |
【シュードコリシスティス】
シュードコリシスティスとはデンソーが特許を持つ細胞内に多量のオイルを蓄積する藻類で、二酸化炭素からオイルを合成する能力がある。軽油成分を含み、成長が早く培養もしやすいことから、デンソーと慶應大学の共同研究で精製の研究が進む。2013年には軽油の量産を行い年間80トンを生産。2018年度をめどに藻から抽出したバイオ燃料の実用化に向けた技術を確立。ジェット燃料としては2020年代に量産化見通し。
デンソーは熊本県にバイオ燃料の大規模培養実証施設を建設。稼動は2016年。敷地面積は2万平方メートル。
項目 | 内容 |
建設 | 熊本県にバイオ燃料の大規模培養実証施設 |
敷地面積 | 2万平方メートル |
稼動 | 2016年 |
【モブラ(榎本藻)】
榎本藻とは品種改良を重ね燃料生産に適するように開発された藻。繁殖力が大きく、光合成により重油に近い成分のバイオ燃料を精製できる。 IHIは2013年11月14日に屋外で雑菌や微生物に負けない培養法を開発し、安定的に増殖させることに成功。今後は試験規模を拡大し、数千平方メートル規模での屋外プラントで検証する。 2018年にも航空機向け燃料を東南アジアなどで生産開始。2020年以降に大量生産化を見込む。また、生産コストの試算を従来の1000円から500円に引き下げ。実用化の2020年までに従来の燃料と同等の価格競争力を持つ100円以下を目指す。
【ジェトロファ】
出光興産はペトロベトナムオイルと共同でバイオディーゼル原料の1つであるジェトロファの試験栽培をベトナムで開始。今後器工の異なる2ヶ所の地域を加え、試験栽培を3ヶ所、計6ヘクタールに拡大し、ベトナムでのバイオディーゼル事業の可能性を見極める。
航空機バイオ燃料 実用化への動き
【官民協議会を設立】
政府は2015年7月に航空機向けバイオ燃料の活用を目的とした官民協議会を設立する。2020年までに使用できるようにする方針。官民協議会は、航空会社やバイオ燃料開発会社、石油元売り業界団体など12~20の企業や団体が参加。バイオ燃料の原料生産や貯蔵、給油方法を整える。
項目 | 内容 |
官民協議会 | 航空会社 バイオ燃料会社 石油元売りなど |
目的 | 航空機武家バイオ燃料の原料生産や貯蔵、給油方法の整備 |
活用開始 | 2020年 |
【新組織「次世代航空燃料イニシアティブ(INAF)】
米ボーイングや東京大学、日本航空、全日本空輸などは航空機バイオ燃料の実用化に向けた新組織「次世代航空燃料イニシアティブ(INAF)を設立した。原料を家庭ゴミ、藻類、非食用植物のジェトロファなどその他に分類し、それぞれの原料価格や調達ルート、精製技術、供給網について協議し、2015年4月をめどにビジネスモデルと事業化までの行程表を策定する。低コストで量産できる原料を絞り込み、2020年にも供給体制を整える。原料調達やプラント設計など各社の役割分担は今後詰める。 航空大手でつくる国際航空運送協会は2020年に二酸化炭素排出量に上限を設ける行動計画をまとめており、実用化を急ぐ。
年 | 内容 |
2015年4月 | ビジネスモデルと事業化までの行程表を策定 |
2020年 | 供給体制を整備 |
【航空機用バイオ燃料関連企業の動き】
企業 | 内容 |
ボーイング | ブラジル・エンブラエルとブラジルにバイオ燃料開発拠点新設で合意 |
エアバス | 中国・新奥集団と微細藻類を使った燃料生産・活用促進で合意 |
伊藤忠商事 | 英ブリティッシュ・エアウェイズとバイオ燃料の製造設備を建設する米社に出資 |
キャセイパシフィック | 米バイオ燃料フルクラムに出資。10年で14億リットルの供給契約 |