JR東海は首都圏から中京圏、近畿圏を結ぶ超伝導リニアによる中央新幹線計画を進めている。2014年に東京-名古屋間の工事に本格着工し、2027年に開通。2045年には名古屋-大阪間の開通を計画する。総事業費は9兆300億円の計画でJR東海が自社負担する。 リニア中央新幹線は、東京(品川)-名古屋間を約40分、東京(品川)-大阪間を約1時間で結ぶ。都心部間の実質的な所要時間は航空機の約半分に短縮され、1人あたりの二酸化炭素排出量は航空機の3分の1になる。 2006年9月に自己資金3550億円を投じてリニアの実験線である山梨リニアの42.8キロメートルへの延伸と整備の全面的な更新を行うことを決定。2013年8月に本格的な走行を開始。2013年9月に中間駅の位置や走行ルートを公表。2014年8月に工事実施計画について国土交通大臣に認可を申請した。
JR東海の計画
JR東海は、2014年8月26日、工事実施計画について国土交通大臣に認可を申請。10月16日に太田国土交通相により認可された。土地取得などを本格化する。
年度 | 区間 | 進捗 | 建設費 |
2014年 | 東京~名古屋 | 本格着工 | - |
2027年 | 東京~名古屋 | 開通 | 5兆4300億円→5兆5235億円 |
2045年 | 名古屋~大阪 | 開通 | 3兆5700億円 |
総事業費9兆300億円を計画し、JR東海が自社負担する。東京(品川)~名古屋間の工費は5兆4300億円から5兆5235億円に上方修正。名古屋~大阪間は3兆5700億円。うち中間駅の建設費用は3250億円とされている。安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、安定配当を継続する健全経営を確保する。乗車料金は新幹線の10%増となる見通し。また、東京(品川)~名古屋間の開業による経済効果は10.7兆円と試算している。
2013年12月4日、JR東海の山田佳臣社長はリニア中央新幹線の大阪延伸時期について「東京-名古屋間との同時開業はどう取り組んでも間に合わない」「一気に進めたいが自社の経営が壊れる。東京-名古屋間で早く資金回収して、大阪開業にかかる方が無駄がない」と述べた。東京-名古屋間で既に進めている環境影響評価が、名古屋以西で進んでいないことも理由に挙げた。
【ターミナル駅・中間駅】
ターミナル駅 | |
東京 | 新幹線品川駅地下 |
名古屋 | 新幹線名古屋駅地下 |
中間駅 | |
神奈川 | JR橋本駅付近 |
山梨 | 甲府市大津町付近 |
長野 | 飯田市上郷飯沼付近 |
岐阜 | 中津川市千旦林付近 |
JR東海の主要業績指数推移
売上高 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2015年(予) | 1兆7150億円 | 4750億円 | 3210億円 | - | - | - |
2014年 | 1兆6722億円 | 4281億円 | 2641億円 | 2兆639億円 | 5兆2179億円 | 38.7% |
2013年 | 1兆6525億円 | 4042億円 | 2556億円 | 1兆8022億円 | 5兆1781億円 | 33.9% |
2012年 | 1兆5853億円 | 3280億円 | 1999億円 | 1兆5579億円 | 5兆2311億円 | 28.9% |
2011年 | 1兆5083億円 | 2638億円 | 1327億円 | 1兆3632億円 | 5兆2140億円 | 25.3% |
2010年 | 1兆5030億円 | 2285億円 | 1338億円 | 1兆2461億円 | 5兆2529億円 | 23.0% |
2009年 | 1兆4866億円 | 2934億円 | 917億円 | 1兆1345億円 | 5兆2110億円 | 21.0% |
2008年 | 1兆5702億円 | 2181億円 | 1260億円 | 1兆483億円 | 5兆2225億円 | 19.4% |
リニア関連銘柄の動き
【リニア車両】
コード | 企業 | 事業 |
7102 | 日本車輌 | 新型車両LO系の中間3両を製作 |
7011 | 三菱重工業 | 新型車両LO系の先頭2両の製作 |
【ゼネコン】
JR東海は、2015年8月27日、大成建設と佐藤工業、銭高組の共同企業体(JV)と契約。山梨県早川町から静岡県を経由して長野県大鹿村に至る全長25キロメートルのトンネルの山梨県側を施工する。工期は2025年10月末まで。
項目 | 内容 | |
共同企業体 | 1801 | 大成建設 |
1811 | 銭高組 | |
- | 佐藤工業 | |
工期 | 2015年~2025年10月 |
JR東海は2006年9月に自己資金3550億円を投じてリニアの実験線である山梨リニア実験線の42.8キロメートルへの延伸と設備の全面的な更新を行うことに決定。2013年8月29日に本格的な走行実験を開始した。当延伸工事については、大成建設や鹿島、熊谷組、清水建設などが受注しているもよう。
コード | 企業 | コード | 企業 |
1812 | 鹿島 | 1802 | 大林組 |
1801 | 大成建設 | 1803 | 清水建設 |
1719 | 安藤・間 | 1720 | 東急建設 |
1725 | フジタ | 1808 | 長谷工 |
1811 | 錢高組 | 1821 | 三井住友建設 |
1824 | 前田建設工業 | 1833 | 奥村組 |
1860 | 戸田建設 | 1861 | 熊谷組 |
1885 | 東亜建設工業 | 1893 | 五洋建設 |
【鉄道】
JR東海は各県に設ける駅の具体的位置や走行ルートを公表。東京のターミナル駅は新幹線品川駅の地下に設置されることとなった。京浜急行の主要ターミナルは品川駅であるため京急線全域の活性化に期待感がある。
コード | 企業 | 内容 |
9006 | 京浜急行 | 品川駅が主要ターミナル。京急線全域の活性化に期待感 |
リニア関連の動き
【大阪への同時開業】
2014年6月24日に閣議決定する新たな成長戦略に、リニア中央新幹線の大阪開業の前倒しは明記しない方向になった。自民党はリニアの大阪延伸に向けた財源確保案として、国が無利子でJR東海に資金を貸し出し建設費を負担。リニア施設の完成後にJR東海に譲渡し、JR東海は建設費の元本部分を運賃収入から国に返済する計画を示していた。
【政府】
政府はリニア中央新幹線建設に必要な土地の取得にかかる不動産取得税と登録免許税を非課税とする案を検討しているもよう。実現すればJR東海の税負担が184億円軽減されるという。
【米国】
米政府はワシントンとボルティモア間を高速鉄道で結ぶ構想を持つ。JR東海は米国への売り込みを目指している超伝導リニア新幹線で技術ライセンス料を求めない方針である模様。約1兆円が見込まれる総工費の半分を日本政府が国際協力銀行経由で融資する方針で、技術と資金の両面から負担を軽くし、導入しやすくする。
米政府は2015年内に事業化調査に着手。メリーランド州に約2800万ドル(約34億円)の補助金を交付。リニア導入による環境への影響や工学分析など計画策定に充当する。また、JR東海が業務委託先の米社を通じ、メリーランド州に申請していた鉄道営業権が認められた。
なお、JR東海はワシントン-ボストン間へのリニア導入も目指している。