2019年度の中央銀行の政策金利推移一覧。中央銀行の方針や経済成長見通し、インフレ率への対応などまとめ。


中央銀行の政策金利推移 2019年

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
米国                       1.5~1.75
ECB - - -0.4 -0.4 - -0.4 -0.4 - -0.5%      
英国 0.75 0.75 0.75     0.75 - 0.75 - - 0.75  
トルコ 24 - 24 24 - 24 19.75 - 16.5 14 - 12
オーストラリア - 1.5 1.5 1.5 1.5 1.25 1 1 - 0.75 0.75  
韓国 1.75 1.75 - 1.75 1.75 - 1.5 1.5 - 1.25 1.25  
フィリピン - 4.75 4.75 - 4.5 4.5 - 4.25 4      
インドネシア 6 6 6 6 6 6 5.75 5.5 5.25 5    
ニュージーランド - 1.75 1.75 - 1.5 1.5 - 1 1      
マレーシア 3.25 - 3.25 - 3 - 3 - - - 3  
インド - 6 - 6 - 5.75 - 5.4 - 5.15 - 5.15
ブラジル - 6.5 - 6.5 6.5 6.5 6 - 5.5     4.5
タイ - 1.75 1.75 1.75 1.75 1.75 - 1.5 1.5 1.5 1.25 1.25
ロシア - 7.75 7.75 7.75 - 7.5 7.25 - 7 6.5    


 中央銀行別の主なポイント

【ECB】
■2019年9月12日、政策金利を0%に据え置く一方、中銀預金金利のマイナス0.4%から0.5%への引き下げと量的緩和政策を再開することを決めた。11月から月200億ユーロ(約2.4兆円)ペースで国債などを買い入れる。物価目標の実現が見通せるまで政策金利を現状かそれ以下に据え置くとした。ドラギ総裁は「当面、極めて緩和的な政策姿勢が必要になる」としている。

2019年7月25日、追加利下げや量的緩和再開の検討方針を決めた。政策金利を2020年前半まで「現状か、より低い水準」と明言。9月の次回理事会での利下げ可能性が高まった。経済・物価の低迷や米国の利下げ観測でユーロ高が懸念。必要に応じて政策を総動員する。

6月時点では、少なくとも2020年前半までは政策金利を現状の水準に据え置くとしていた。ドラギ総裁は「少なくとも20年上半期を通じて現行水準にとどまると予想している」とした。米中貿易摩擦などの影響でユーロ圏経済が減速。物価上昇も鈍化し、利上げ時期を先送りした。

4月には、階層方式と呼ばれる仕組みの導入を検討。銀行が中央銀行に預ける資金全体にマイナス金利をかけるのではなく、一部だけにかけるというもの。市場金利全体の押し下げという金融緩和効果を保ちながら、銀行の負担を最小限に抑える。

ECBは量的緩和政策を2018年12月末に終了。政策金利は2019年夏までは現行水準に据え置く。また、2019年3月には2019年内の利上げ断念を決めた。
 

【英国】
2019年3月21日、政策金利を0.75%に据え置いた。国債買い入れ枠も4350億ポンドに据え置いた。「緩やかかつ限定的な金融引き締めを続けることが適当」との方針を維持した。

英中銀は「英経済成長は2018年終盤に減速し、2019年に入ってからさらに減速したとみられる。」「この減速は、国外の経済活動の鈍化やブレグジットを巡る不確実性の影響拡大を主に反映している」とした。


【トルコ】
■2019年12月12日、政策金利の1週間レポ金利を14%から12%に引き下げた。中銀は「インフレ見通しは改善を続けている」とした。エルドアン大統領は1ケタ台に引き下げることを要求している。

■2019年10月24日、政策金利の1週間物レポ金利を16.5%から14%に引き下げた。インフレ見通しが改善。シリア北部への軍事作戦は米国、ロシアとの合意で沈静化。米国からの経済制裁も解除され、外交的なリスクも遠のいた。

■2019年9月12日、政策金利の1週間物レポ金利を19.75%から16.5%に引き下げた。中銀は「インフレ見通しは改善を続けている」「経済活動は緩やかな回復が続いている」とした。

■2019年7月25日、政策金利の1週間物レポ金利を24%から19.75%に引き下げた。中銀「物価上昇率の見通しは改善を続けている」とした。

2019年4月25日、政策金利の1週間物レポ金利を24%に据え置いた。3月時点の「必要であればさらなる引き締めを行う」との文言が消えた。

トルコと米国の関係は悪化している。エルドアン大統領はロシア製対ミサイル防衛システム「S400」の導入を進め、米国は激しく反発。米国が禁じるイラン産原油の輸入も止めない考え。

経常赤字国のトルコは、工場建設から消費者ローンまで成長に必要な資金を海外に頼っている。企業は外貨建ての債務返済に苦しむ。2016年6月末時点のトルコの短期対外債務は1074億ドル(約12兆7000億円)で、外貨準備とほぼ同額。通貨危機など危機時への対応に不安を残す。


【オーストラリア】
■2019年10月1日、政策金利を1%から0.75%に引き下げた。物価や賃金の伸びが鈍く、個人消費が冷え込んでいることに対応する。中銀は「可処分所得の伸び悩みと消費の見通しが豪経済の不確実性につながっている」「必要ならさらに緩和的な措置をとる」とした。

■2019年7月2日、政策金利を1.25%から1%に引き下げた。賃金や物価上昇の弱さや、住宅価格の下落などで個人消費にも不透明感がある。ロウ総裁は「雇用の伸びを支え、中長期的なインフレ目標を達成できるとの信頼感を得るため」「引き続き労働市場を注視し、必要なら金融政策を調整する」とした。

■2019年6月4日、政策金利を1.5%から1.25%に引き下げた。中銀ロウ総裁は「所得の伸びの鈍さと住宅価格下落による家計消費の見通しの弱さ」が豪経済のリスクだとした。景気拡大が続くが、家計債務が膨らむ中、住宅価格が下がり、消費を冷やしている。また、最大の輸出品である鉄鉱石の最大貿易対手である中国でも景気減速懸念が強まっている。金融緩和で経済を下支えする。


【韓国】
■2019年10月16日、政策金利を1.5%から1.25%に引き下げた。世界経済の減速や半導体の市況低迷が続くことから、景気の下支えが必要と判断した。

■2019年7月18日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。半導体市況の悪化や設備投資の低迷、日本による輸出規制強化で経済の悪化傾向が長期化すると判断した。


【フィリピン】
■2019年9月26日、政策金利を4.25%から4%に引き下げた。世界経済減速リスクに対し、利下げで国内経済を支える。中銀のジュクノ総裁は「物価見通しは落ち着いており、経済成長を支援し、市場での信認を高めるため、一段の利下げ余地があると金融委員会は認識している」とした。

■2019年8月8日、政策金利を4.5%から4.25%に引き下げた。成長率が伸び悩み、金融緩和で景気を刺激する。中銀は「大国間の貿易摩擦で経済が弱含む状態が続くことに留意した」「インフレ見通しに照らさばまだ引き下げ余地がある」とした。

■2019年5月9日、政策金利を4.75%から4.5%に引き下げた。景気が減速しており、てこ入れを図る。

2019年3月21日政策金利を4.75%に据え置いた。「インフレ見通しは目標の範囲に収まっており、国内経済も堅調だ」とした。


【インドネシア】
■2019年10月24日、政策金利を5.25%から5%に引き下げた。中銀のペリー総裁は「世界経済が減速する中、国内の経済成長を促進させるための予防的措置」とした。

■2019年9月19日、政策金利を5.5%から5.25%に引き下げた。主要輸出品の石炭やパーム油の価格が下落したことで景気が減速。自動車販売も前年割れした。中銀のペリー総裁は「減速しつつある経済成長を支えるための予防的措置をとった」とした。

■2019年8月22日、政策金利を5.75%から5.5%に引き下げた。米中貿易摩擦による世界景気減速懸念に対応する。

■2019年7月18日、政策金利を6%から5.75%に引き下げた。経済減速懸念に対応し、利下げで景気を刺激する。米中貿易摩擦で石炭やパーム油の輸出が減少。自動車や住宅消費も減少し、景気が減速傾向にある。

2019年5月16日、政策金利を6%に据え置いた。2018年は6回の利上げでルピアの下落を防ぐ姿勢を鮮明にしたが、米国の利上げペースが緩やかになったことで、ルピア相場は安定している。


【ニュージーランド】
■2019年8月7日、政策金利を1.5%から1%に引き下げた。経済減速懸念に対応する。中銀は「不確実性の高まりと国際貿易低下で貿易相手国の経済成長を鈍化させている」「NZのモノやサービスへの需要が減退している」とした。

■2019年5月8日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。国内経済の減速懸念が強まっていることに対応した。


【マレーシア】
■2019年5月7日、政策金利を3.25%から3%に引き下げた。「米中の貿易摩擦や国内外の環境がさらに不安定になることで成長が下振れするリスクがある」とし、国内経済の減速懸念が強まっていることに対応する。

マレーシアは歳入の30%を石油関連産業から得ている。原油価格の下落局面では財政悪化が見込まれる。


【インド】
■2019年10月4日、政策金利を5.4%から5.15%に引き下げた。インド経済は減速をしていることから、利下げで個人消費や企業投資を促す。中銀は「経済減速が続き、高成長を取り戻すには一層の努力が必要だ」「成長の勢いが戻るまで政策姿勢は緩和的を続ける」とした。

■2019年8月7日、政策金利を5.75%から5.4%に引き下げた。金融緩和で個人消費の刺激を狙う。ダス総裁は「需要を喚起することで成長鈍化に対処することが今の最優先事項」とした。

■2019年6月6日、政策金利を6%から5.75%に引き下げた。ダス総裁は「経済成長の勢いが著しく弱まっている」「当面は利上げは選択肢にない」とした。金融緩和で個人消費や企業の設備投資を促す狙い。


【ブラジル】
■2019年12月11日、政策金利を5%から4.5%に引き下げた。ボルソナロ大統領は景気刺激や借入コスト引き下げのための利下げを要求している。

■2019年9月18日、政策金利を6%から5.5%に引き下げた。輸出減少で景気が低迷。経済の下支えを狙う。

■2019年7月31日、政策金利を6.5%から6%に引き下げた。景気回復やインフレ鈍化に対応する。中銀はブラジル経済の持ち直しで「ペースが緩やかになる」とした。


【タイ】
■2019年11月6日、政策金利を1.5%から1.25%に引き下げた。米中貿易摩擦や通貨高の影響で輸出が減少。景気が減速しているのに対応した。中銀は「輸出の減少で経済成長が潜在力を下回っている」とした。

■2019年8月7日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。経済減速に対応。ティタナン副総裁は「輸出減による経済成長の減速は、内需に影響を及ぼし始めている」とした。


【ロシア】
■2019年10月25日、政策金利を7%から6.5%に引き下げた。インフレ率が低下し、景気も低迷。利下げで経済成長を下支えする。次回の会合で更なる利下げに踏み切る可能性も示した。

■2019年9月6日、政策金利を7.25%から7%に引き下げた。インフレ率が低下する一方、経済は低成長。利下げで経済を下支えする。中銀は「インフレの減速が続き、ロシア経済の成長率は予想を下回る。世界経済の減速リスクも高まった」とした。また、今後の更なる利下げも検討する考えを示した。

■2019年7月26日、政策金利を7.5%から7.25%に引き下げた。2カ月連続の利下げで景気を下支えする。ロシア経済はインフレ率の低下や低成長が続く。中銀は「経済成長が年初から予想を下回っている」「今後も利下げする可能性がある」とした。

2019年6月14日、政策金利を7.75%から7.5%に引き下げた。インフレ懸念がやや収束する一方、契機が減速しつつあることから、利下げで経済成長を下支えする。