2018年度の中央銀行の政策金利推移一覧。中央銀行の方針や経済成長見通し、インフレ率への対応などまとめ。


中央銀行の政策金利推移 2018年

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ECB - - -0.4 -0.4 - -0.4 -0.4 - -0.4 -0.4    
英国 - 0.5 - - 0.5 0.5 - 0.75 0.75 - 0.75  
トルコ 9.25 - 9.25 - - - - - -      
オーストラリア - 1.5 - 1.5 1.5 1.5 1.5 - - 1.5    
韓国 1.5 1.5 - 1.5 1.5 - 1.5 1.5 - - 1.75  
フィリピン - 3 3 - 3.25 3.5 - 4 4.5 - 4.75  
インドネシア 4.25 4.25 4.25 4.25 4.75 5.25 5.25 5.5 5.75 - 6  
ニュージーランド - 1.75 1.75 - 1.75 1.75 - - 1.75      
マレーシア 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3.25      
インド   6 - 6 - 6.25 - 6.5 - 6.5    
ブラジル - 6.75 6.5 - 6.5 6.5 - 6.5 6.5 6.5    
タイ - 1.5 1.5 - 1.5 1.5 - 1.5 1.5      
ロシア - 7.5 7.25 7.25 - 7.25 7.25 - - 7.5    


 中央銀行別の主なポイント

【ECB】
2018年9月13日、国債などの資産購入額を10月から月300億ユーロから150億ユーロに減らすと決定した。量的緩和政策は2018年12月末に終了。政策金利は2019年夏までは現行水準に据え置く。


【英国】
2018年11月1日、政策金利を0.75%に据え置いた。中銀は「EU離脱が迫る中で家計は堅調だが、企業投資は予想以上に弱くなっている」「金融政策の対応はどちらの方向もあり得る」とした。一方、EU離脱の行方が大きなリスク要因として注目している。

■2018年8月2日、政策金利を0.5%から0.75%に引き上げた。英経済は「需要は2019年の遅くまでに超過に転じ、その後積みあがる」と分析。需要が供給を上回る時期を従来の「2020年の早く」から前倒しした。労働需給の改善が続く中、「継続した金融引き締めが適切」としている。

2018年6月には、中銀が保有する4350億ポンドの英国債の売却時期について新たなガイダンスを設定。政策金利が1.5%前後に達した場合に売却を始める可能性があるとし、従来の2%から時期が早まる指針を示した。

2018年2月時点では、2018年から2019年の経済成長率見通しを引き上げ。従来の想定よりも今後の利上げペースや規模が大きくなる可能性があるとの見通しを示した。2018年5月時点では、2018年から2020年の経済成長率と物価見通しを引き下げ。最近の経済・物価指数の鈍化を踏まえ、英景気の減速が一時的なものにとどまるかどうかを慎重に見極める考え。
 

【トルコ】
■2018年9月13日、主要な政策金利である1週間ものレポ金利を17.75%から24%に引き上げた。中銀は「物価安定のため強力な金融引き締め実施を決めた。引き続き全てのとり得る手段を行使し続ける」とした。

米国の利上げ継続でトルコを含む新興国からマネーが流出。トルコの経常収支の赤字がリラ売りの大きな材料になっている。


■2018年6月8日、主要な政策金利である1週間物レポ金利を1.25%引き上げ、年17.75%とした。

2018年4月19日、主要な政策金利である翌日物貸出金利を9.25%に据え置いた。インフレ見通しが大幅に改善するまで、引き締めスタンスを継続する方針。

エルドアン大統領は「高金利のせいでインフレ率が下がらない」とし、中銀に圧力をかけていることから、利上げは政治的に難しい。米国が利上げ局面に入った中、利下げはリラ下落につながり、インフレ圧力を高める。中銀は身動きがとりにくい状況にある。

経常赤字国のトルコは、工場建設から消費者ローンまで成長に必要な資金を海外に頼っている。企業は外貨建ての債務返済に苦しむ。2016年6月末時点のトルコの短期対外債務は1074億ドル(約12兆7000億円)で、外貨準備とほぼ同額。通貨危機など危機時への対応に不安を残す。
 

【オーストラリア】
2018年10月2日、政策金利を1.5%に据え置いた。ロウ総裁は「賃金の上昇が鈍く、シドニーなど主要都市で住宅価格が下落している」と指摘。金利を過去最低水準に維持し、景気を下支えする。非資源分野の民間投資や公共インフラ投資が経済を下支えしているが、消費の見通しが不透明としている。

豪中銀ロウ総裁は、2017年12月時点では「今後数年の経済成長率が平均3%に上向く」。9月時点では「過去数カ月、豪ドルが対ドルで上昇している」と通貨高に懸念を表明。当面低金利を維持して豪経済を下支えする考えを示した。7月時点では「一部都市の住宅価格が大幅に上昇している」と懸念を表明した。


【韓国】
■2018年11月30日、政策金利を1.5%から1.75%に引き上げた。景気は減速感が強まっているが、米国の相次ぐ利上げで韓国の金利は米国より低くなっている。米韓の金利差がさらに広がれば資金が流出する懸念があることから利上げに踏み切った。

2018年7月時点では、韓国経済は回復基調だが、ウォン高で物価が上がっておらず、追加利上げを急ぐ必要は無いと判断した。また、米国による韓国への通商圧力の強化や米GM韓国法人の現地生産縮小が景気の下方リスクと指摘し、利上げを見送った。中銀は2018年の経済成長率を3%から2.9%に引き下げた。


【フィリピン】
■2018年11月15日、政策金利の翌日物借入金利を4.5%から4.75%に引き上げた。自国通貨の防衛や物価高の抑制が狙い。

■2018年9月27日、政策金利の翌日物借入金利を4.5%を中心とする4%~5%に引き上げた。高インフレとペソ安に対応する。中銀は「高インフレの脅威に対してあらゆる必要な行動をとる」「物価上昇は持続的かつ広範に及ぶ兆候が根強く、追加の金融引き締めが正当化されると認識した」とした。

■2018年8月9日、政策金利の翌日物借入金利を4%を中心とする3.5%~4.5%に引き上げた。エスペニリャ総裁は「インフレ見通しが上振れするリスクが大きくなっている。一連の利上げで抑制できるだろう」とした。

■2018年6月20日、政策金利の翌日物借入金利を3.5%を中心とする3~4%に引き上げた。

■2018年5月10日、政策金利の翌日物借入金利を3.25%を中心とする2.75~3.75%に引き上げた。1月の物品税やガソリン税の引き上げもあり、インフレが加速。物価抑制に向けて利上げする。

2018年3月時点では、物価上昇について中銀は「物価上昇は緩やかで政府目標の2~4%の範囲内に収まるとみている」としていた。
 

【インドネシア】
■2018年11月15日、政策金利を5.75%から6%に引き上げた。自己通貨の防衛や物価高を抑制する。

■2018年9月27日、政策金利を5.5%から5.75%に引き上げた。新興国市場の資産が世界的に値下がりする中で、通貨ルピアに売りが波及しないようにする。また、経常赤字削減と海外投資家による国内資産投資の拡大を目的とする。

■2018年8月15日、政策金利を5.25%から5.5%に引き上げると発表した。通貨ルピアがトルコの通貨リラの下落の余波を受け下落。利上げで輸入コストの増加による物価高騰や外貨で資金調達する企業の債務拡大につながる通貨安を食い止める狙い。中銀は、ルピア相場が下落した場合には追加利上げすることを示唆し、通貨防衛する姿勢を鮮明にした。

■2018年6月29日、政策金利を4.75%から5.25%に引き上げた。通貨ルピア相場が軟調に推移しているため、通貨防衛のために利上げした。米中貿易摩擦の影響で投資家心理が悪化。相対的にリスクの高いインドネシアの国債市場や株式市場から外国人投資家が資金を引き上げていることも影響した。

■2018年5月30日、臨時の金融政策決定会合を開き、政策金利を4.5%から4.75%に引き上げた。通貨ルピアの相場が軟調に推移しており、通貨防衛のためにさらなる利上げが必要と判断した。

インドネシアは経常収支と財政収支の両方が赤字で通貨安の圧力にさらされやすい。ジェコ政権は経常収支改善のため2018年8月14日、インドネシア国内でも製造できる500品目について輸入税を課す方針を明らかにした。エネルギー・鉱物資源相は燃料輸入を減らすため、2018年9月からディーゼル燃料に20%の国産バイオ燃料を混合することを義務づける。


【ニュージーランド】
2018年9月27日、政策金利を1.75%に据え置いた。オア総裁は、政策金利を2019年から2020年にかけて現行水準を維持する見通しを示した。また、景気が加速しない場合は利下げの用意があることも示唆した。


【マレーシア】
2018年9月5日、政策金利を3.25%に据え置いた。中銀は「政府の歳出見直しによって、公的部門が成長の足かせになる見通し」とし、マハティール政権の方針によって成長率が下がる可能性があるとした。また、米国をはじめとする先進国の金融政策の正常化が新興国からの資本流出を招くリスクにも言及した。一方、輸出主導の民間企業の企業活動や個人消費は堅調に推移している。

■2018年1月25日、政策金利を3%から3.25%に引き上げた。経済成長率が6%を超えており、経済が堅調な間に金融政策の正常化を図る。

マレーシアは歳入の30%を石油関連産業から得ている。原油価格の下落局面では財政悪化が見込まれる。


【インド】
2018年10月5日、政策金利を6.5%に据え置いた。通貨安や原油高が進むも、インフレが落ち着いたため利上げを見送った。また、金融政策の姿勢を2017年2月から続いた「中立」から「引き締め」に変更した。

■2018年8月1日、政策金利を6.25%から6.5%に引き上げた。原油高や通貨ルピー安を背景に物価が上昇しているため、利上げでインフレ抑制を狙う。

■2018年6月6日、政策金利を6%から6.25%に引き上げた。原油高や通貨ルピー安を背景に物価が上昇しているため、利上げでインフレ抑制を狙う。

インドは原油の国内利用の80%を輸入している。原油価格が上昇すれば、物価水準を押し上げる可能性がある。


【ブラジル】
2018年10月31日、政策金利を6.5%に据え置いた。中銀は「足元のインフレ率は適切な水準だ」としている。

6月時点では米長期金利の上昇を受け、ブラジルを含む新興国からの資金流出が進行。通貨レアルが対ドルで急落し、利下げ路線にブレーキが必要だと判断した。8月は、先進国の金融正常化などで一時的に不安定になった新興国の金融環境にもやや落ち着きが出ているとして、低金利政策で景気を下支えする考え。

■2018年3月22日、政策金利を6.75%から6.5%に引き下げた。2017年末にかけて緩やかな上昇傾向にあったインフレ率が再び低下。利下げ余地が拡大したと判断した。野菜などの豊作により、食料品の価格上昇が抑えられたという。

■2018年2月7日、政策金利を7%から6.75%に引き下げた。中銀は「世界経済は成長している」。新興国に向かう資金の流れに変化はないとした。また、2018年末の政策金利の予想を6.75%とし、2016年10月から続く金融緩和が出口に近づきつつあることを示した。


【タイ】
2018年9月19日、政策金利を1.5%に据え置いた。タイ経済は回復傾向だが、消費者物価上昇率が目標の1~4%の下限近辺にはり、動向を注視する。政策委は「緩和的な金融政策の必要性は徐々に減る」とし、今後の利上げに含みを持たせた。

8月時点で中銀は「以前の想定を上回るペースで経済が成長している」「家計収入の増加や雇用拡大の恩恵が広く行き渡っているとは言えず、購買力の改善は緩やかにとどまっている」とし、緩和的な政策を継続することが経済成長に役立つと判断したとしている。

米国の利上げによる影響も、タイはGDPの1割前後に上る経常黒字を背景に通貨タイバーツの下落は緩やか。タイ中銀が利上げを急がなくてはならない状況にはないとしている。


【ロシア】
■2018年10月14日、政策金利を7.25%から7.5%に利上げした。米国による対ロ制裁や新興国の通貨売りを受けた通貨ルーブルの下落を食い止める狙い。中銀は「新興国からの資本流出や地政学的要因が為替やインフレ期待に影響を及ぼす可能性がある」とし、インフレ抑制に向け更なる利上げの必要性を検討する方針。

■2018年3月23日、政策金利を7.5%から7.25%に利下げした。2018年のインフレ率が3~4%になると予測しており、さらなる利下げが可能と判断した。

■2018年2月9日、政策金利を7.75%から7.5%に利下げした。インフレ率が2%台と低水準にとどまっており、さらなる利下げが可能と判断した。

ロシア中銀は、7月時点ではインフレ高進のリスクを指摘し、2018年内は利下げを実施しない公算が大きいことを示した。6月時点では付加価値税を18%から20%に引き上げる意向を表明。増税が実現すれば、利上げが一段と困難になる可能性があるという。中銀は「付加価値税の引き上げを考慮し、物価見通しを引き下げた」「インフレとインフレ期待を巡る財政政策上の措置の提案を踏まえると、中立的な金融政策への移行はより緩やかである必要がある」としている。