2016年度の中央銀行の政策金利推移一覧。中央銀行の方針や経済成長見通し、インフレ率への対応などまとめ。


中央銀行の政策金利推移 2016年度

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ECB 0.05 - 0 0 - 0 0 - 0 0 - 0
英国 0.5 0.5 - 0.5 0.5 0.5 0.5 0.25 0.25 - 0.25 0.25
トルコ 10.75 10.75 10.5 10 9.5 9 8.75 8.5 8.25 8.25 8.5 8.5
オーストラリア - 2 - 2 1.75 1.75 1.75 1.5 1.5 1.5 - 1.5
韓国 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.25 1.25 1.25 1.25 1.25 1.25 1.25
フィリピン - 4 4 - 4 ※3 - 3 - - 3 3
インドネシア 7.25 7 6.75 6.75 6.75 6.5 6.5 ※5.25 5 4.75 4.75 4.75
ニュージーランド 2.5 - 2.25 2.25 - 2.25 - 2 2 - 1.75  
マレーシア 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3 - 3 - 3 -
インド - 6.75 - 6.5 - 6.5 - 6.5 - 6.25 - 6.25
ブラジル 14.25 - 14.25 14.25 - 14.25 14.25 14.25 - 14 13.75 -
タイ 1.5 1.5 1.5 - 1.5 1.5 - 1.5 1.5 - 1.5 1.5
ロシア 11 - 11 11 - 10.5 10.5 - 10 10 - 10


中央銀行別の主なポイント

【欧州中央銀行(ECB)】
2016年12月18日、量的金融緩和の規模縮小と終了時期の延長を決めた。毎月の購入額を800億ユーロから600億ユーロに縮小。終了時期を2017年3月末までから2017年12月末までに延長する。政策金利は0%、マイナス金利は0.4%を維持するなど主要な政策金利は据え置いた。

2016年7月21日には、英国のEU離脱決定後の経済への影響を点検するとし、交渉が長引いたり、EUと英国が疎遠になったりすれば貿易が滞る恐れがあると指摘。ドラギ総裁は「今後3年間で成長率を最大0.5ポイント押し下げる可能性がある」とした。

ECBは、2016年3月10日、追加緩和を決定。国債などを大量に買い取る量的金融緩和を月額600億円から800億円に拡大。政策金利を年0.05%から0%に引き下げ。マイナス金利を0.3%から0.4%に拡大した。また、ECBが国債の購入量を増やせば市場に出回る国債が少なくなるため、2016年6月までに購入対象に金融機関を除く投資適格社債を追加。4年物の長期資金供給策も追加した。


【英中銀 イングランド銀行】
2016年12月15日、政策金利を0.25%に据え置いた。英国債購入の資金枠を4350億ポンドを維持する。英中銀は2016年9月時点では、今後、英経済の減速が明らかになった場合は「追加の利下げがあり得る」としている。

■2016年8月4日、政策金利を0.5%から0.25%に引き下げ。英国債購入の資金枠を今後6ヶ月間3750億ポンドから4350億ポンドに拡大。ポンド建て社債を100億ポンドまで買い入れ。銀行に中銀から低利で約4年間、最大1000億ポンドを供給する金融緩和を決めた。英国のEU離脱決定で景気後退懸念が強まる中で、金融緩和の拡大により経済を支える。

また、今後の成長率も見直し。2016年は2%に据え置き。2017年は2.3%から0.8%に下方修正した。英国ではEU離脱決定を受け、製造業やサービス業の景況感が悪化している。2016年11月には、2017年を0.8%から1.4%に上方修正。2018年は1.8%から1.5%に引き下げた。2017年はポンド安から観光消費や輸出が好調で堅調に推移した。


【トルコ中央銀行】
2016年12月20日、政策金利を8.5%に据え置いた。米大統領選でのトランプ氏の勝利から進むドル高リラ安の進行と原油価格の上昇による物価上昇への懸念があるものの、「総需要の進展がそれらの効果を抑え込む」とした。

通貨リラは7月のクーデター未遂事件直後に発令した非常事態宣言を90日間延長。大統領権限の強化やイラクでの戦闘激化などへの懸念などから下落している。トルコ中銀のチェティンカヤ総裁は、2016年12月6日、通貨リラの急速な下落について「あらゆる手段を用いてリラの価値を守る」とした。今後の相場変動によっては追加の政策金利引き上げも辞さない構え。

経常赤字国のトルコは、工場建設から消費者ローンまで成長に必要な資金を海外に頼っている。企業は外貨建ての債務返済に苦しむ。6月末のトルコの短期対外債務は1074億ドル(約12兆7000億円)で、外貨準備とほぼ同額。通貨危機など危機時への対応に不安を残す。


■2016年11月14日、政策金利を8.25%から8.5%に引き上げた。米大統領選でのトランプ氏の勝利から進むドル高リラ安に対処する。中銀は「通貨安がインフレ見通しの上昇リスクにつながっている」「不都合な影響を封じ込めるため金融引き締めの実施を決めた」とした。

■2016年9月22日、政策金利を8.5%から8.25%に引き下げた。トルコ中銀は「最近の経済指標は経済活動の減速を示している」とした。利下げの継続により企業活動や消費の活性化を促す。

■2016年8月23日、政策金利を8.75%から8.5%に引き下げた。7月のクーデター未遂事件とその後の反政府勢力への弾圧で消費や投資が冷え込み。利下げにより景気を下支えする。

■2016年7月19日、政策金利を9%から8.75%に引き下げた。クーデター未遂事件後の市場の混乱を鎮め、銀行や企業の資金繰りを支援する。

■2016年6月21日、政策金利を9.5%から9%に引き下げた。米国の早期利上げの後退やトルコの消費者物価指数が低下していることから利下げした。

■2016年5月24日、政策金利を10%から9.5%に引き下げた。ダウトオール首相の突然の辞任表明で政治先行きの不透明感が拡大。通貨リラは下落したが、中銀は物価上昇率の下落などを理由に利下げした。

■2016年4月20日、政策金利を10.5%から10%に引き下げた。トルコ中銀は「グローバルな金融環境の改善」などを理由に引き下げた。中銀は「政策はインフレ見通し次第」としている。


【オーストラリア準備銀行】
2016年12月6日、政策金利を1.5%に据え置いた。5月と8月に利下げした影響を見極める。豪中銀は「全体的に成長が持続している」とした。企業投資が落ち込むも、内需や輸出が支えた。

■2016年8月2日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。豪中銀スティーブンス総裁は「インフレ率を目標値に戻しながら、持続的な経済成長を支える」とした。

■2016年5月3日、政策金利を2%から1.75%に引き下げた。インフレ率が予想を下回って推移していることに対応する。豪中銀スティーブンス総裁は「利下げによりインフレ率が徐々に上向く」としている。

豪中銀は、2015年9月1日時点で「一段の豪ドルの下落が均衡のとれた経済成長に必要」との文言を削除。物価上昇率が低水準で安定していることから「緩和的な金融政策が必要だ」としていた。
 

【韓国中央銀行】
2016年12月15日、政策金利を1.25%に据え置いた。輸出が低迷し、消費や投資に先行き懸念が出ているが、6月の利下げや韓国政府が発表した景気対策などの効果を見極める。

■2016年6月9日、政策金利を1.5%から1.25%に引き下げた。輸出の落ち込みが続き消費や鉱工業生産などが伸び悩んでいることから、利下げで景気をてこ入れする。韓国中央銀行は「世界の貿易の伸びが鈍化する中、企業の構造調整が実体経済などに与える悪影響を和らげておく必要がある」とした。


【フィリピン中央銀行】
2016年12月22日、政策金利を3%に据え置いた。米国の利上げなど経済環境の変化による影響を見極める。

フィリピンは内需が好調で、インフレ率も安定。低インフレがGDPの70%を占める個人消費拡大につながっている。また、大統領選挙関連の支出に加え、政府の歳出が増加し、経済成長が加速している。2016年5月12日時点では、中銀ギニグンド副総裁は、経済指標は堅調な数字で、現時点で追加の金融支援は必要ないとした。

フィリピンのインフレ率は2%台と低位に推移。フィリピン中銀は2015年9月24日に「国内経済は内需の牽引で良好」、2015年2月12日には「原油安の影響で物価上昇圧力が緩やかになった」とした。また、インフレ率を2015年は3%から2.3%に、2016年は2.6%から2.5%に修正している。

※フィリピン中銀は、2016年6月から政策金利の新システムを導入。翌日物貸出金利は6%、SDAは2.5%、翌日物借入金利は4%に設定されているが、新システムでは翌日物貸出金利は3.5%、翌日物借入金利は3%とする。


【インドネシア中央銀行】
2016年12月15日、政策金利を4.75%に据え置いた。米大統領選の結果や米FRBの利上げを受け、通貨ルピアが対ドルで下落傾向にあるため、据え置いた。

■2016年10月20日、政策金利を5%から4.75%に引き下げた。通貨ルピアの安定やインフレ圧力が後退。一段の金融緩和で景気を後押しする。中銀は「金融緩和で銀行貸し出しを伸ばし、消費の拡大を促す」とした。

■2016年9月22日、政策金利を5.25%から5%に引き下げた。通貨ルピアの安定やインフレ圧力が後退。一段の金融緩和で景気回復を後押しする。

※2016年8月19日、政策金利の指標レートを7年物リバースレポ金利に変更。金利を5.25%に据え置いたと発表した。物価の伸びは鈍化傾向にあるが、米国の追加利上げの時期を見極めるため、金利を維持した。

政策金利の指標レートの変更で、金融緩和効果の実体経済への伝達を改善する。

■2016年6月16日、政策金利を6.75%から6.5%に引き下げた。2016年4月に政府はガソリン公定価格を引き下げ。物価上昇率は中銀目標の3~5%の下限に近接。米利上げ観測が後退し通貨ルピアの売り圧力が低下。4-6月の経済成長率が従来予想より弱くなる見通し。利下げで景気を刺激する。

■2016年3月17日、政策金利を7%から6.75%に引き下げた。緩やかなインフレ見通しと通貨ルピアの安定から利下げ余地が生まれた。一段の利下げで景気を刺激する。

■2016年2月18日、政策金利を7.25%から7%に引き下げた。預金準備率も7.5%から6.5%に引き下げ。市中銀行に貸出を促す。一段の金融緩和で経済成長を後押しする。

■2016年1月14日、政策金利を7.5%から7.25%に引き下げた。通貨ルピアが安定し、物価上昇率も低下。経済成長を後押しする。


【ニュージーランド中央銀行】
■2016年11月10日、政策金利を2%から1.75%に引き下げた。ウィーラー総裁は、利下げでインフレ率が中銀目標値の中間である2%に引き上がるとの見通しを示した。また、ニュージーランドドルについて「下落が必要だ」としている。世界的な金融緩和を背景に、高金利通貨であるニュージーランドドルに上昇圧力がかかっているとしている。

■2016年8月11日、政策金利を2.25%から2%に引き下げた。ウィーラー総裁はインフレ率を目標圏の中間付近に回復させるため「さらなる政策的な緩和が必要だろう」とした。ニュージーランドドルについては、世界各国で低金利にあり、高金利通貨であるニュージーランドドルに上昇圧力がかかっているとした。

ニュージーランド中銀は、インフレ率目標を1~3%としている。また、2016年6月9日時点では「原油安の影響が薄れるにつれて、インフレは強まる見通し」としている。

■2016年3月10日、政策金利を2.5%から2.25%に引き下げた。ウィーラー総裁は景気やインフレの推移によっては「一段の政策的な緩和が必要になるかもしれない」とした。


【マレーシア中央銀行】
2016年11月23日、政策金利を3%に据え置いた。米大統領選でトランプ氏が勝利後、通貨リンギが下落。一段の通貨安を招く可能性がある利下げを見送った。2016年9月時点では中国などの景気減速で輸出が伸び悩むも、個人消費や民間投資は伸びたとしている。

■2016年7月13日、政策金利を3.25%から3%に引き下げた。中銀は「世界経済の先行き不安が経済鈍化を招く恐れがある」「個人消費が経済を下支えする」「世界経済の停滞により輸出が伸び悩む」とした。経済成長が鈍化する中、金融緩和を通じて消費や投資を刺激し、景気を底上げする。

マレーシアは歳入の30%を石油関連産業から得ている。原油価格の下落局面では財政悪化が見込まれる。


【インド中央銀行】
2016年12月7日、政策金利を6.25%に据え置いた。11月8日に政府が決めた旧高額紙幣の廃止の影響で消費が落ち込む一方、米国の大統領選後のドル高や追加利上げの実施見通しによる資金流出を懸念。また、インドは原油の8割を輸入していることから、原油価格が上昇すれば、物価水準を押し上げる可能性があり、政策金利を据え置いた。

■2016年10月4日、政策金利を6.5%から6.25%に引き下げた。パテル総裁は「弱含みの世界経済の需要が輸出入を引き下げている」とし、成長の下支えを狙った利下げで先手を打つ構え。

2016年8月8日時点では、原油価格の持ち直しを背景に物価上昇率が高まる兆しがあり、動向を見極めるとしている。


■2016年4月5日、政策金利を6.75%から6.5%に引き下げた。設備稼働率が上がらず民間企業の投資意欲が弱いことから、企業活動を活性化させる。ラジャン総裁は「金融緩和姿勢を継続する。さらなる緩和余地があれば反応する」とした。

インドは原油の国内利用の80%を輸入。原油価格の下落でインドの物価上昇率は大幅に鈍化。金融政策を緩和方向に転換して景気の下支えを図っている。インド中銀は2017年3月に消費者物価指数の上昇率を5%に押される目標。


【ブラジル中央銀行】
■2016年11月30日、政策金利を14%から13.75%に引き下げた。インフレが鈍化傾向にあるため、低迷が続く経済の下支えを優先する。

■2016年10月19日、政策金利を14.25%から14%に引き下げた。資源安を背景とした景気後退局面の継続や通貨下落・公共料金引き下げによるインフレが続くも、通貨レアルの上昇などでインフレ圧力が弱まってきたことを受け、マイナス成長が続く経済の下支えを優先する。

一方、中銀が目標にする物価上昇率の中心値は4.5%。9月は前年同月比8.48%で目標の上限である6.5%を大幅に上回っている。


【タイ中央銀行】
2016年12月21日、政策金利を年1.5%に据え置いた。タイ中銀は、民間消費の一時的な減速や欧米の政治に起因する不確実性がリスク要因としている。

タイ中銀は2016年9月時点では、タイ経済は緩やかな成長を続けていると認識。英国のEU離脱や通貨バーツ高への警戒感を示した。2016年6月時点では「内需の回復速度は想定より遅く、経済の下振れリスクが高まっている」「現状の金融情勢はすでに緩和状態にあり、今後の金融政策の実行余地を残すためにも政策金利を維持すべきだ」としている。

タイの消費者物価指数は原油安の影響などで下落。自動車増税前の駆け込み需要の反動や輸出の回復が遅れる。タイ中銀は2016年3月23日に「成長見通しを下方修正した」と言及した。


【ロシア中央銀行】
2016年12月16日、政策金利を10%に据え置いた。

■2016年9月16日、政策金利を10.5%から10%に引き下げた。通貨ルーブルの下落が一服。輸入品などのインフレが鈍化し、利下げに踏み切る環境が整ったと判断した。また、次の利下げ時期は2017年前半になるとの考えも示唆した。

■2016年6月10日、政策金利を11%から10.5%に引き下げた。原油価格と通貨ルーブルが反転し輸入品などのインフレが鈍化。利下げに踏み切る環境が整ったと判断した。

ロシア中銀は、2016年4月29日時点では、「インフレリスクが高止まりしている」「インフレリスクが十分低下すれば、緩やかな金利引き下げを開始する」とした。

2016年3月18日時点では、インフレ率が2017年3月までに6%を下回る水準に低下すると予想。2016年の経済成長率はルーブル相場の下落で原油などの商品価格の下落による影響が和らげられ、▲1.3%~▲1.5%とした。

2016年1月29日時点では、原油安を背景にした通貨ルーブルの下落でインフレリスクが高まり。金融引き締めの可能性を排除しなかった。また、世界的なコモディティー市場の低迷で、国内経済は一段と調整が必要と判断した。

2015年10月時点では、景気低迷リスクよりもインフレリスクへの対応を優先する方針を表明。「為替動向の影響で、インフレ及びインフレ見通しは上向きのトレンドを示している」とした。また、「最も楽観的なシナリオの下でもロシア経済は向こう数年間はこれまでよりも困難な状況に直面することを理解しておくことは重要だ」「経済情勢が最善のシナリオに沿って推移すれば、政策金利を引き下げる可能性も出てくる」とした。インフレリスクと景気低迷リスクの間のバランス変化に基づき、政策金利の決定を行う方針。