京都大学の高橋英彦准教授ら研究グループは、2017年4月5日、ギャンブル依存症の神経メカニズムを解明したと発表した。許容できるリスクの大きさを柔軟に切り替えることに障害があるという。
ギャンブル依存症患者は、常に過剰なリスクを好み、性格のように一定の傾向が見られるという考え方が主流だった。そこで、研究グループは、ギャンブル依存症では状況に応じてリスクの取り方を切り替える能力に障害があるとの仮説をたて、脳活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で調査。ギャンブル依存症患者は、ノルマの厳しさを正しく認識するのに必要な背外側前頭前野の活動が低下しており、リスクをとる必要がない条件でも、不必要なリスクをとることを確認した。
また、リスク態度の切り替えに重要な背外側前頭前野と内側前頭前野の結合が弱いことも明らかになった。結合が弱い患者ほど、ギャンブルを絶っている期間が短く、低ノルマ条件でハイリスク・ハイリターンのギャンブルを選択する傾向が強いことが分かったという。
ギャンブル依存症とは、金銭的な問題を抱えてもギャンブルをやめられずに続けてしまう状態。ギャンブルへの制御が困難になるため、患者本人だけでなく家族や周囲の人にも影響が大きい。ギャンブル依存症の神経メカニズムが解明されたことから、多様なギャンブル依存症の病態の理解や、新たな治療法開発につなげる。