2017年5月、ルネサスエレクトロニクスの大株主である官民ファンドの産業革新機構は、ルネサス株を売却すると発表。産業革新機構による再建が完了し、自立経営でグローバル競争に挑む。ルネサスエレクトロニクスの注目しておきたい関連情報をまとめた。
主な自動運転関連の動き
2018年~2020年に向けて開発しているマイコンの量産化が予定されている。2018年5月には自動運転実現に向けたシステムのプラットフォームを加速するセーフティーマイコンの量産。2018年11月には運転支援システムや自動運転の主要センサーである車載レーダー用途のマイコンを量産。2020年には回路線幅28ナノメートルのマイコンの量産が始まる見通し。
ルネサスの主力のマイコンは、自動車の電子化や自動運転技術の広がりを背景に需要が増加。世界のマイコン市場で約2割とトップシェアを握る。
【車載制御ユニットのプロトタイプの開発期間を短縮するプラットフォーム】
2017年1月、豪TTTechと自動運転車の開発に向け、車載制御ユニットのプロトタイプの開発時期を短縮する「高度自動運転(HAD)プラットフォーム」を共同開発したと発表。並行して開発された複数のソフトウエアを統合。実車での動作検証が可能になり、OEM、Tier1メーカーは自動運転用ECUのプロトタイプの開発期間が短縮できるようになるという。
【セーフティマイコンのラインアップが完成】
2016年12月、自動運転の実現に向けたシステムのプラットフォーム開発を加速するセーフティマイコンのラインアップが完成したと発表。量産は2018年5月。2020年には4製品合計で月産70万個となる計画。
項目 | 内容 |
商品 | 自動運転向けシステムのプラットフォーム開発を加速するセーフティマイコン |
量産 | 2018年5月 |
【自動運転のレーダー用途にマイコンを展開】
2016年12月、運転支援システムや自動運転の主要センサーである車載レーダー用途に新マイコンの展開を開始すると発表。レーダー信号の処理性能の向上や低消費電力技術によるレーダーセンサーの小型化、コスト低減、最新のアルゴリズム処理に対応する高速処理などを可能にする。
新製品のサンプル出荷は2017年下半期。量産は2018年11月。
項目 | 内容 |
商品 | 車載レーダー用途向けマイコン |
サンプル出荷 | 2017年下半期 |
量産 | 2018年11月 |
【台湾TSMCと最先端次世代マイコンを開発】
2016年9月、台湾TSMCと半導体の性能を左右する回路線幅28ナノメートルの最先端マイコンを共同開発すると発表。2017年に顧客企業にサンプルを出荷し、受注活動を開始。2020年をめどに量産する計画。
マイコンの性能を高めることで、エンジン内部でガソリンの噴射量をきめ細かく調整し、燃費を向上できる。また、自動運転分野に活用すれば、歩行者や対向車の情報を素早く正確に収集し、ブレーキなどの判断を下して安全性を高められるという。
項目 | 内容 |
商品 | 回路線幅28ナノメートルのマイコン |
量産 | 2020年 |
米半導体への大型投資
ルネサスエレクトロニクスは、2016年9月13日、米半導体インターシルを買収すると発表。取得額は32.19億ドル(約3219億円)。完了は2017年2月。資金は手元資金で充当し、新規借入や増資は想定しない。
ルネサスは日本と欧州、インターシルは米国と中国に強く、買収により販売網を広げお互いの顧客に既存製品を売ることで相乗効果を高める。また、省電力につながる電圧制御用の半導体を自社製品と組み合わせて、自動車や産業機械などの主要顧客への提案力も高める。
【米インターシルの買収概要】
項目 | 内容 |
取得額 | 3219億円 |
対象 | 米インターシル株100% |
完了 | 2017年2月 |
【インターシルの業績推移】
売上高 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2015年 | 521億円 | ▲14億円 | 7億円 | 954億円 | 1138億円 | 83.8% |
2014年 | 562億円 | 74億円 | 54億円 | 981億円 | 1154億円 | 85% |
2013年 | 575億円 | 13億円 | 2億円 | 957億円 | 1191億円 | 80.3% |
急拡大が見込まれるワイヤレス給電関連
機器を専用の装置に近づけるだけで充電が可能になる「ワイヤレス給電」が今後伸びる見通し。米調査会社IHSは、ワイヤレス給電に対応する機器の世界出荷台数が2025年に2015年比14倍の28億台に増えると予測している。国際規格の統一などの課題を乗り越えれば、給電のワイヤレス化が進む見通し。
ルネサスエレクトロニクスは、ワイヤレス給電用の小型半導体を開発。ウエアラブル端末や補聴器への搭載を想定し、2016年11月からサンプル出荷を開始する。
項目 | 内容 |
サンプル出荷開始 | 2016年11月 |
中国
2019年をめどに中国での開発人員を2倍の100人規模まで増やす。電気自動車(EV)向けやIoT向け需要が大きく増えることから、EVやIoT向けの半導体システム開発に注力する。中国で年10%以上の成長を目指す。
ルネサスの中国売上高は全体の2割を占める。
ルネサスエレクトロニクスの業績推移
売上高 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2016年 | 4710億円 | 499億円 | 441億円 | 4223億円 | 8230億円 | 51% |
2015年 | 6932億円 | 1021億円 | 862億円 | 3817億円 | 8493億円 | 44.7% |
2014年 | 7910億円 | 1053億円 | 823億円 | 3119億円 | 8400億円 | 36.8% |
2013年 | 8330億円 | 586億円 | ▲52億円 | 2273億円 | 7860億円 | 27.3% |
*2016年度は3月期→12月期に決算期を移行し、9ヶ月決算。