パイオニアは、自動運転における車の誘導に極めて重要とされる高精度な自動車位置の推定技術や周辺環境の認識を可能とする高精度次世代地図データ、それを車載機器で取り扱うための情報処理技術、車が走行する周辺環境を正確に認識するためのセンシング技術、画像処理やSALMなどの信号処理技術の開発に取り組んでいる。

高精度次世代地図データを整備するための中核システムであるLiDARシステムは、レーザー照射に対する対象物からの散乱光を受信し、対象物までの距離や形状、性質を計測・分析するシステムで、将来的に自動運転に必要不可欠なシステムになるといわれている。パイオニアは光ディスク技術で培った光学技術や広帯域アナログ回路技術、デジタル信号処理技術を駆使し、車載用途に適したローコストシステムの実現を目指す。

また、自動運転車では高精度な自車位置データをリアルタイムで算出する技術が重要になる。パイオニアはカーナビゲーションシステムで培った技術にLiDARシステムによる3次元センシング技術や高精度地図データ、自己位置推定と周辺環境の地図データ作製を同時に行うSLAM技術を応用し、GPSを大きく上回る誤差10センチメートルレベルの精度を持つ高精度自車位置推定技術の開発に取り組んでいる。


3次元計測機器

【計画】
パイオニアは自動運転車に搭載し、周囲を3次元で把握できる計測機器を開発した。2016年中にデジタル地図を作製する子会社の車両に導入し、運転試験を開始。2017年には業務用に製品化。2018年以降に一般の自動運転車向けに製品化を目指す。また、2018年以降にはパイオニア製の測定装置を搭載している車両が取得した周囲の情報を、クラウド上で管理するシステムを構築する計画。

パイオニアは自動運転車分野で、年間売上高350億円の事業に育てる方針。

事業方針
売上高 350億円
3次元計測機器計画
2016年中 運転試験開始
2017年 業務用に製品化
2018年以降 一般の自動運転車向けに製品化
取得情報をクラウドで管理するシステムを構築


【特徴】
レーザー光を使った3次元計測機器は自動運転車両の「目」として安全確保のために搭載されている。パイオニアは実用化している光ディスクのデータを読み取る光ピックアップ技術を応用することで、周りの状況を3次元で把握できるようにした。

レーザー光を照射し、反射して戻ってくる時間を計測して距離などを測る。半径100メートル程度の範囲にあるモノの形状を5センチ以内の精度で正確に検知。車道のでこぼこや白線の位置なども把握できるという。


【コスト削減策】
計測装置は1台300万円~900万円と高価なことが課題となっている。パイオニアは光ディスクの読み取り技術や既存設備を活用し、従来より低いコストで製造。今後、量産技術を確立し2025年までに1万円以下へのコスト引き下げを目指す。


高精度地図開発

2015年9月7日、地図・位置情報サービス大手のヒアと共同で、自動運転・高度運転支援向けの高精度地図の活用に関し、協力することで合意。2017年2月8日、自動運転向け地図システムの仕様を共通化すると発表した。パイオニアが開発した3次元計測装置と、ヒアが持つ欧州などの地図情報を組み合わせることで、一般車両からの周辺情報を自動的に収集し、高度化地図データを更新して配信する効率的な整備・運用システムの構築を目指す。また、2017年9月19日、資本提携すると発表。パイオニアがヒアの株式の1%未満を約22億円で取得。同額でパイオニアの発行済み株式の3%に相当する新株をヒアに割り当てる。資本提携でスピードを上げて成果を確実なものにする。


予測技術開発

日本自動車研究所(JARI)とNEC、パイオニア、ZMPは自動運転システムで予め危険を予測し、運転に反映させる予測技術の開発に着手。2019年の実用化を目指す。ZMPが開発するドライブレコーダーで車の周囲の様子と運転手の顔の向き、視線、手足の動きなどを記録。パイオニアは全国の道路上で急ブレーキが踏まれやすい地点のデータを提供。NECは人が危険を予測する際の思考パターンを分析し、自動運転プログラムを作り上げる。経済産業省も関わり、5年間で約10億円の予算を見込む。

企業  内容 
ZMP  ドライブレコーダーで車の周囲と運転手の動きを記録 
パイオニア  急ブレーキが踏まれやすい地点のデータを提供 
NEC  人の思考パターンを分析し、プログラムを作成 


【ミラー型車載端末】
 自動車の運転管理に使うミラー型車載端末を発売。バックミラーに取り付け、パイオニアのクラウドを活用した業務用運行管理サービスと連動。日報の作成や急ブレーキの発生頻度をグラフ化し、安全運転を促す。配送会社やタクシー会社などに販売する。

2015年の売上高40億円から2020年に100億円を目指す。

項目 内容
商品 ミラー型車載端末
サービス 安全運転を促す
目標 売上高15年40億円→20年100億円


経営戦略

自動運転は、日本では2020年頃に一部の高速道路での自動運転車両が認められる見通し。また、一般道路での本格的な導入は2022年以降となる見通し。パイオニアは、2022年以降を収益貢献の時期と見据え、2016年~2020年までに5年間で自動運転関連の研究開発に約100億円を投じる計画。

項目 内容
自動運転への投資額 2016年~2020年に100億円
収益貢献時期 2022年以降


パイオニアの業績推移

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2017年(予) 3900億円 - 35億円 - - -
2016年 3866億円 29億円 ▲50億円 867億円 2817億円 29.3%
2015年 4496億円 72億円 7.3億円 904億円 2980億円 28.7%
2014年 5016億円 ▲29億円 146億円 1070億円 3282億円 31%
2013年 4980億円 51億円 5.3億円 778億円 3279億円 22.1%
2012年 4518億円 8.1億円 ▲195億円 815億円 3113億円 24.5%
2011年 4367億円 98億円 36億円 890億円 3220億円 26.1%
2010年 4575億円 123億円 103億円 884億円 3097億円 27.4%

 

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