米連邦準備理事会(FRB)は、2015年3月18日、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国経済について「堅調なペースで拡大」から「幾分緩やかになった」と下方修正した。金利については、利上げまで「忍耐強くなれる」の表現を削除した。
イエレン議長は「4月のFOMCの次の会合で利上げも排除できない」「時期は経済のデータ次第」とした。懸念材料には、賃金上昇率の低迷やドル高の輸出への影響、住宅市況を挙げた。インフレ率が目標とする「2%」に向けて上昇基調を取り戻すという「理にかなう確信」が利上げの前提としている。
また、予想指数では、2015年の経済成長率を2.6~3%から2.3~2.7%に下方修正。インフレ率は1.3~1.4%まで水準を切り下げた。
【経済】
項目 | 内容 |
米国経済 | 緩やかな回復が継続→堅調なペースで拡大(1月)→幾分緩やかに(3月) |
雇用 | 増加が力強い |
物価 | 短期的にはさらに低下すると予想される |
原油安など一時的要因がなくなれば、年2%のインフレ水準に上昇 |
【金利】
項目 | 内容 |
利上げ | 忍耐強くなれる→削除(3月) |
相当な期間維持する→削除(1月) | |
国際情勢にも留意する |
米 利上げはいつか
項目 | 内容 |
ゼロ金利政策解除 | 利上げ時期は2015年4月以降。FOMCメンバーは2015年半ばまでが適切 |
労働市場の指標や金融状況など幅広い材料を考慮 | |
インフレ率長期目標2%に到達できるめどが立つことが大前提 |
【米議会上院銀行委員会でもイエレンFRB議長の議会証言】
2014年7月15日、事実上のゼロ金利政策について「量的緩和終了後も相当な期間、維持するのが適当だ」「1.5%であるインフレ率がFOMCが目指す年2%程度の長期インフレ目標に到達できるめどが立つことが、ゼロ金利解除の大前提だ」と述べた。一方、FOMCの見通しを上回って米経済が回復すれば「利上げ時期が早まり、現行の予想より早く上がる」とも述べた。
【FF金利】
FOMCは2014年9月時点でメンバーによる中期政策金利の見通しを公表。2015年末には1.13%から1.38%に上がり、2016年も上昇傾向を示すとした。また、量的緩和で買い入れた米国債などの残高を維持した上で、まずは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の引き上げを進める戦略原則も決めた。
2015年 | 2016年 | |
FF金利 | 1.13%→1.38% | 上昇傾向 |
FRBの予想指数
項目 | 2014年 | 2015年 |
インフレ率 | 1.4~2% | 1.6~2%→1.3~1.4%(3月) |
失業率 | 6.5~6.8%→6.3~6.6% | 5.8~6.2% |
経済成長率 | 3~3.5%→2.8~3.2%→2.1~2.3% | 2.6~3%→2.3~2.7%(3月) |
実績
【経済成長率】
2015年 | 1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 2015年(予) |
経済成長率 | 0.2% | 3.7% | 2.1% | 3%前後 | |
個人消費 | 1.9% | 3.1% | 3% | ||
設備投資 | ▲3.4% | 3.2% | 2.4% | ||
住宅投資 | 1.3% | 7.8% | 7.3% | ||
2014年 | 1-3月 | 4-6月 | 7-9月 | 10-12月 | 2014年 |
経済成長率 | ▲0.1% | 4% | 5% | 2.2% | 2.4% |
個人消費 | 3% | 2.5% | 3.2% | 4.2% | - |
設備投資 | ▲2.1% | 5.5% | 8.9% | 4.1% | - |
住宅投資 | ▲5.7% | 7.5% | 3.2% | 1.9% | - |
【雇用統計】
失業率を安定して下げる際の目安は、非農業部門の雇用者数が月20万人水準で増加することとしている。
項目 | 年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
失業率(%) | 2015 | 5.7 | 5.5 | 5.5 | 5.4 | 5.5 | 5.3 | 5.3 | 5.1 | 5.1 | 5.0 | 5.0 | |
2014 | 6.6 | 6.7 | 6.7 | 6.3 | 6.3 | 6.1 | 6.2 | 6.1 | 5.9 | 5.8 | 5.8 | 5.6 | |
非農業雇用者数(万人) | 2015 | 25.7 | 29.5 | 12.6 | 22.3 | 28 | 22.3 | 24.5 | 17.3 | 13.7 | 27.1 | 21.1 | |
2014 | 11.3 | 17.5 | 19.2 | 22.8 | 21.7 | 28.8 | 20.9 | 14.2 | 24.8 | 21.4 | 42.3 | 32.9 |
FRBの金融緩和出口戦略
度重なる量的緩和で、FRBの資産規模は米経済規模の4分の1に相当する4.5兆ドル(約500兆円)に達している。
年 | 項目 | 内容 |
2013年 | 資産新規購入縮小・停止 | 毎月850億ドル購入している米国債・住宅ローン担保証券(MBS)の購入を段階的に縮小 |
2014年 | FRBの資産規模の縮小 | 米国債・MBSの償還分を再投資せず、保有資産を縮小 |
市場売却を回避するなど市場に混乱を与えない対策を検討 | ||
2015年 | ゼロ金利政策解除・利上げ | 失業率6.5%への下落でゼロ金利を解除 |
政策金利の見直し |
【13年 資産新規購入の縮小・停止】
米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の合計で毎月850億ドル(約8兆6000億円)を買い入れている資産購入プログラムを縮小する。購入額を段階的に減らし、最後にゼロにする。
【14年 FRBの資産規模の縮小】
3兆ドルに膨らんだFRBの資産規模を縮小する。米国債・MBSを市場で直接売るのではなく、保有証券の償還を待ってなるべく市場に影響を与えないようにする。
【15年 ゼロ金利政策解除・利上げ】
政策金利を引き上げる。FRBは12年末、「インフレ率が2.5%を上回らない限りは、失業率が6.5%に下がるまでゼロ金利政策を続ける」と表明。