2018年の各国のGDP推移一覧。各国の見通しや推移、発表内容などをまとめ。


2018年 各国のGDP推移

2017年 見通し 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 2018年
日本(前期比) 1.7%   ▲0.2% 0.7%      
米国(年率換算) 2.3%   2% 4.2%      
EU 2.5% 2.3%→2.1% 1.7% 2.1% 1.7%   1.8%
英国 1.8% 1.6% 1.2%        
ロシア 1.5% 1.5%~2% 1.3% 1.9% 1.5%   2.3%
オーストラリア 2.3%   3.1% 3.4% 2.8%    
韓国 3.1%   2.8% 2.9% 2% 3.1% 2.7%
台湾   2.55% 3.02% 3.29% 2.28% 1.76%  
中国 6.9%   6.8% 6.7% 6.5% 6.4% 6.6%
ブラジル 1%   1.2% 1% 1.3%    
トルコ 7.4%   7.4% 5.2% 1.6% ▲3% 2.6%
インド     7.7% 8.2% 7.1%   6.8%
インドネシア 5.07% 5.4% 5.06% 5.27% 5.17% 5.18% 5.17%
タイ 3.9% 4.2% 4.8% 4.6% 3.3%    
マレーシア 5.9%   5.4% 4.5% 4.4%    
シンガポール 3.5% 3~3.5% 4.3% 3.8% 2.2% 2.2% 3.3%
フィリピン 6.7% 6.5%~6.9% 6.8% 6%      


【日本】
2018年9月10日、4-6月の実質GDP成長率の改定値は0.7%増、年率換算で3%増だった。GDPの6割を占める個人消費は0.7%増。自動車が牽引し、飲食サービスも小幅に上方修正し寄与した。設備投資は1.3%増から3.1%増に修正。運輸・郵便や電気、化学の設備投資が堅調だった。民間住宅は2.7%減から2.4%減に修正。不動産仲介手数料が上方改定となった。


【米国】
2018年7月27日、4-6月の実質GDP成長率の速報値を4.1%と発表した。GDPの7割を占める個人消費は4%増。1-3月は自動車など耐久消費財が低迷するも、4-6月は雇用拡大と大型減税で可処分所得が増加。自動車など耐久財の消費が拡大した。設備投資は7.3%増。法人税率の引き下げで企業業績の改善が寄与。原油価格の上昇でエネルギー部門の投資も増えた。住宅投資は1.1%減。住宅ローン金利などの上昇が影響した。輸出は9.3%増。エネルギー関連投資の回復から好調が続く。

2018年9月27日、4-6月期の実質GDP成長率の確定値を4.2%と発表した。個人消費は3.8%増、企業投資は8.7%増、住宅投資は1.3%減だった。

  2017年 2018年
  1-3月 4-6月 7-9月 10-12月 1-3月 4-6月 7-9月 10-12月
個人消費 1.1% 3.3% 2.4% 3.8% 1.1% 3.8%    
設備投資 9.4% 6.9% 3.9% 6.6% 6.1% 8.7%    
住宅投資 13.7% ▲6.8% ▲6% 11.6% 0% ▲1.3%    
輸出         4.8% 9.3%    


【EU】
2019年1月31日、2018年の実質GDP成長率は1.8%だった。個人消費が堅調に推移した一方、1-3月は大寒波に見舞われ鈍化。その後は景況感の悪化が続く。米トランプ政権とEUの通商摩擦の悪化や英国のEU離脱問題、イタリアの財政問題などが影響する。

EUの潜在成長率は1%程度とされている。

■欧州委員会は、2018年11月8日、2019年の実質GDP成長率を2%から1.9%に下方修正した。米英に次ぐ輸出相手の中国経済が減速。イタリアの財政リスクも強まっている。2020年は1.7%とした。


【英国】
2018年4月27日、1-3月の実質GDP成長率を1.2%と発表した。2~3月の寒波で建設部門が落ち込んだ。

■2018年8月2日、2019年の実質GDP成長率の予想を1.7%から1.8%に上方修正した。2020年は1.7%に据え置いた。


【ロシア】
2019年2月4日、2018年の実質GDP成長率を2.3%と発表した。サッカーワールドカップなどへの公共投資の増加やロシアが実効支配するウクライナ南部クリミアで開通した橋、北極圏の液化天然ガス(LNG)基地関連の建設がけん引した。

2019年はワールドカップなど大型投資が見込める事業予定が乏しい。2019年1月に18%から20%に引き上げた付加価値税の影響でGDPの5割超を占める個人消費も停滞するとみられ、成長率は1%台になる見通し。

ロシア中央銀行は、2018年10月14日、2018年のロシアのGDP成長率が1.5%~2%になる見通しを示した。通貨安を受け、2019年の物価上昇率は5~5.5%に加速する見通し。一方、経済発展省や国営銀行ズベルバンクは、成長率予測を1.9%から1.7%~1.8%に下方修正した。


【オーストラリア】
2018年12月5日、7-9月期の実質GDP成長率2.8%と発表した。GDPの約6割を占める民間消費は1-3月の0.3%増から4-6月は0.7%増。7-9月は鈍化した。4-6月までは食品や保険・金融サービス向けの支出が増加するも、7-9月はシドニーなど大都市で住宅価格が下落。資産価値低下への警戒感から個人消費が冷え込んだ。輸出も鈍化した。なお、1-3月は2.4%増、4-6月は1.1%増。石炭などの資源や農産物が増えた。

一方、米中貿易摩擦により、最大貿易相手国の中国の景気が下振れすれば、経済にも影響が及ぶ可能性がある。


【韓国】
2019年1月22日、2018年の実質GDP成長率を2.7%と発表した。設備投資は1.7%減。巨額投資を続けてきたサムスン電子とSKハイニックスによるメモリー投資が一巡。液晶パネルは中国勢との競合激化で収益が悪化し、メーカーが投資を抑制。輸送機器は主力の造船業が赤字となっており、投資を抑制している。建設投資は4%減。政府の不動産価格抑制策などでマンション建設が減少した。民間消費は2.8%増。労働時間の短縮で公演鑑賞などレジャーへの支出が増えた。

韓国の潜在成長率は3~3.2%とされている。


【台湾】
2019年1月31日、10-12月期の実質GDP成長率を1.76%と発表した。輸出が4-6月の5.99%、7-9月の1.42%から10-12月は1.21%となった。米アップルなどのスマホ販売の伸び鈍化が響いた。また、米中貿易摩擦で製造業が保守的な姿勢に転じ、機械など生産設備関連の輸出がマイナスになっている。

台湾の輸出はGDPの約70%を占めている。また、輸出額の40%をIT関連が占めている。中国への輸出依存度は約40%となっている。なお、台湾の潜在的GDP成長率は約3%と見られている。

台湾の行政院は2019年の実質GDP成長率を2.55%と予測している。

 

【中国】
2019年1月21日、2018年の実質GDP成長率を6.6%と発表した。地方政府や企業の債務削減のほか、米国との貿易摩擦の影響が響いた。百貨店やスーパー、インターネット通販の売上高を合計した社会消費品小売総額は9%増。自動車やスマートフォンの販売が鈍化した。1-6月は9.4%増、7-9月は9.3%増、10-12月は8.2%だった。工場やマンション建設など固定資産投資は5.9%増。鉄道や道路などインフラ投資の伸びが鈍化した。1-6月は6%増、7-9月は5.4%増だった。工業生産は6.2%増。自動車やスマートフォン、パソコンの生産が鈍化した。1-6月は6.7%増、7-9月は6.4%増、10-12月は5.7%増だった。輸出は1-6月の12.8%増から7-9月は12%増。輸出は1-6月の19.9%増から7-9月は20%増だった。


【ブラジル】
2018年11月30日、7-9月期の実質GDP成長率は1.3%と発表した。5月下旬にトラック運転手による大規模ストライキが発生。燃料価格の高騰に対抗する形で1週間以上にわたり全国的に物流網が麻痺。農畜産物の輸出の落ち込みや消費、製造業、サービス業など各分野で数字が下回った。テメル大統領は、2018年8月9日、トラック輸送料金の下限を定める公定最低運賃を導入する大統領令に署名。経済団体のブラジル全国工業連盟(CNI)は、最低運賃の導入が憲法違反だとして最高裁に訴えた。

ストライキの影響が一巡したものの、景気回復のペースは鈍い。

2018年には大統領選挙を控える。選挙が近づく中、テメル政権が年金改革など議会の抵抗が大きい改革を進められるかも景気の先行きに影響しそうだ。


【トルコ】
2019年3月11日、2018年の実質GDP成長率を2.6%と発表した。GDPの6割を占める個人消費は1-3月は7.4%増、4-6月は6.3%増、7-9月は1.1%増、10-12月は8.9%減となった。官民のインフラ支出や設備投資の合計である総固定資本形成は1-3月は9.7%増、7-9月は3.8%減、10-12月は12.9%減となった。

2018年夏に通貨リラが下落。トルコ在住の米国人牧師拘束を巡る米国との政治対立を巡り、トルコからの資金流出が進んだことが要因。リラの対ドル相場が通年で約3割下落した。中央銀行は大幅な利上げを実施。リラ防衛とインフレ抑止に一定の効果を上げたものの、市中銀行の貸し出し金利が上昇。融資が減少するなど景気低迷につながった。

トルコ政府は、2018年9月、新規インフラ開発を事実上凍結する2021年までの中期経済計画を発表。財政出動を通じた景気の下支えは難しい。また、輸出の半分以上を占めるEU経済が減速感を強めていることも懸念材料となっている。


【インド】
2019年5月31日、2018年度の実質GDP成長率を6.8%と発表した。農業や製造業が振るわなかった。第2次モディ政権では約160兆円のインフラ投資を進め、道路、空港、地下鉄などの整備を進めるとしている。

2018年11月30日、7-9月期の実質GDP成長率は7.1%と発表した。GDPの過半を占める個人消費は4-6月期は9%増、7-9月期は7%増だった。通貨安や原油高で消費者の負担が増え、一部の耐久消費財では販売が伸び悩んだが、全体では上回った。設備投資は4-6月期は10%増、7-9月期は12%増だった。政府によるインフラ整備などが下支えした。

なお、通貨安に伴う物価高が内需を下押しする懸念がある。


【インドネシア】
2019年2月6日、2018年の実質GDP成長率を5.17%と発表した。GDPの5割強を占める個人消費は、1-3月の4.95%から4-6月は5.14%と伸びが加速するも、7-9月は鈍化。10-12月は5.18%となった。軍人や公務員、その退職者に支払う賞与を大幅に増額し、消費マインドを刺激した。GDPの1割を占める政府支出は、4-6月に5.26%増、7-9月も堅調に推移。10-12月は4.56%増だった。ジェコ政権の景気対策の一環で、道路工事などインフラ工事で地元住民を雇用して日当を支払う制度を導入したことで公共工事が増えた。

インドネシア政府は、2019年の実質GDP成長率目標を5.3%と定めている。4月には公務員給与を5%増額して下支えを狙う。一方、慢性的な財政不足のなか、財政支出がいつまで続くかは不透明となっている。

ジェコ大統領は、インフラ投資を進めて企業業績が回復すれば、賃金上昇を通じてGDPの60%を占める個人消費が伸び、成長が加速するとしている。なお、インドネシアは産油国ながら石油の純輸入国であるため、原油価格の下落が財政や国民消費で追い風となる。


【タイ】
2018年11月19日、7-9月の実質GDP成長率を3.3%と発表した。民間消費は4-6月の4.5%増から7-9月は5%増。農産物価格の上昇やインラック前政権が2012年に導入した新車購入奨励策の「5年縛り」が解け、車の買い替え需要が増えた。輸出は4-6月の6.4%増から7-9月は0.1%減。米中貿易摩擦の影響で最大の輸出先である中国向けがマイナスとなった。

タイの潜在成長率は年5%とされている。また、GDPの80%水準に上る家計債務の高止まりがある。

■2018年11月19日、2018年のGDP成長率を4.2%、2019年を3.5%~4.5%とした。

■2018年5月21日、NESDBは2018年通年のGDP成長率を3.6~4.6%から4.2~4.7%に上方修正した。


【マレーシア】
2018年11月16日、7-9月の実質GDP成長率を4.4%増と発表した。5月の政権交代で誕生したマハティール政権が6月に消費税(6%)を廃止。個人消費が伸び、GDPの約5割を占める個人消費が9増となった。一方、天候不順などの影響で主要産品の天然ガスの産出やパーム油の生産減少が影響。4-6月期には農業が2.5%、資源などの採掘が2.2%縮小した。


【シンガポール】
2019年1月2日、2018年の実質GDP成長率を3.3%と発表した。電機など堅調な製造業が成長を下支えした。4-6月までは電気や製薬の生産、金融などのサービス業が堅調に推移した。7-9月以降、減速が進んだ。

貿易産業省は、2018年の成長率を3%~3.5%と予想。2019年は1.5%~3.5%と予測している。


【フィリピン】
2018年8月9日、4-6月期の実質GDP成長率を6%増と発表した。物品税の引き上げや通貨ペソ安、原油高でインフレが進み、個人消費が伸び悩んだ。GDPの約7割を占める個人消費は5.6%。政府支出は11.9%。ドゥテルテ政権が掲げるインフラ開発計画が動き出し関連支出が増えた。

フィリピンはGDPの70%を占める個人消費を世界各国で働く出稼ぎ労働者からの送金やサービス産業の発展により下支えしている。また、海外出稼ぎ労働者からの送金はGDPの10%に相当する。フィリピン政府は、2017年度から2022年度にかけて、インフラ整備に17兆円~18兆円を充て、年率7~8%の高成長を目指す。

■2018年10月16日、2018年の実質GDP成長率目標を7%~8%から6.5%~6.9%に引き下げた。原油価格の上昇、先進国の金融引き締め、インフレなどから見直した。2019年~2022年の成長率目標は7%~8%で据え置いた。

■2019年3月13日、2019年の実質GDP成長率の目標を7~8%から6~7%に引き下げた。2020年も6.5~7.5%に下げた。2019年度の予算案を巡って上下両院の対立が続き、政府のインフラ整備計画に遅れが出るため。