川崎汽船は、2016年4月1日、ドライバルク事業で構造改革費用の計上や投資有価証券評価損を計上し、約500億円の特別損失を計上すると発表した。ドライバルク事業で鉄鋼メーカーなどとの長期輸送契約のない中小型船を中心に船体規模の縮小を加速。保有船処分や傭船の早期解約、ドライバルク船の一部における減損損失を計上する。
ドライバルク事業は、過剰設備調整に伴う中国経済の減速や資源価格下落による新興国経済の不調などから鉄鉱石などの荷動きが鈍化。船腹の需給ギャップの拡大による市況低迷に対応する。また、円高によりドル建ての運賃収入も減少している。
川崎汽船は、中期経営計画の見直しも進めている。
川崎汽船の構造改革
項目 | 内容 |
構造改革費 | 500億円 |
内容 | ドライバルク事業で中小型船を中心に船体規模を縮小 |
投資有価証券評価損 | |
計上時期 | 2016年3月期 |
川崎汽船の業績推移
売上高 | 経常利益 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 自己資本比率 | |
2015年(予) | 1兆2500億円 | 10億円 | ▲500億円 | - | - | - |
2014年 | 1兆3524億円 | 489億円 | 268億円 | 4674億円 | 1兆2233億円 | 36.1% |
2013年 | 1兆2241億円 | 324億円 | 166億円 | 4106億円 | 1兆2547億円 | 31% |
2012年 | 1兆1347億円 | 285億円 | 106億円 | 3619億円 | 1兆1804億円 | 28.9% |
2011年 | 9723億円 | ▲489億円 | ▲413億円 | 2599億円 | 1兆664億円 | 22.7% |
【セグメント別】
不定期船事業(ドライバルク事業)は、中国経済の減速や資源価格下落による新興国経済の不調などから鉄鉱石などの荷動きが鈍化し運賃市況が低迷。コンテナ船事業は、南米の景気悪化や欧州の消費弱含みで低迷している。
セグメント | 2013年 | 2014年 | 2015年4-12月 | |
コンテナ船 | 売上高 | 5905億円 | 6847億円 | 4889億円 |
営業利益 | ▲141億円 | 206億円 | ▲42億円 | |
営業利益率 | ▲2.4% | 3% | ▲0.9% | |
不定期専用船 | 売上高 | 5754億円 | 6037億円 | 4476億円 |
営業利益 | 412億円 | 365億円 | 262億円 | |
営業利益率 | 7.2% | 6% | 5.9% |
2015年~2019年の経営計画
2019年に売上高1兆5000億円、経常利益850億円を計画。設備投資は5年間で3300億円。国内の発電用石炭向けなど長期契約が見込めるばら積み船やLNG船などに戦略的に投資する。配当は年4円を目安に安定的に配当。株主配分は純利益200億円以上で超過分の30%を配分する。
2014年 | 2017年 | 2019年 | |
売上高 | 1兆3500億円 | 1兆4000億円 | 1兆5000億円 |
経常利益 | 480億円 | 600億円 | 850億円 |
純利益 | 250億円 | 450億円 | 600億円 |
有利子負債 | 5350億円 | 4600億円 | 4800億円 |
ROE | 6% | 8~9% | 10%以上 |
中国とブラジルの状況
【中国】
中国は2016年~2020年の5カ年計画を策定し、2020年にGDPで92兆7000億元(約1620兆円)を目指す。年平均6.5%以上の中高速成長を想定。2016年~2017年に鉄鋼業や石炭業などの設備過剰を解消するなど構造改革を実行。一方で、2016年に鉄道投資に8000億元以上、道路建設に1兆6500億元以上を投じる。
項目 | 内容 |
年平均成長率 | 6.5%以上 |
2016年~2017年 | 鉄鋼業や石炭業などの設備過剰を解消 |
2016年 | 鉄道に8000億元以上、道路建設に1兆6500億元以上を投資 |
【ブラジル】
ブラジルは、鉄鉱石など資源や穀物価格の低迷で、投資や家計が減退。通貨レアル安に伴う輸入品価格が上昇し、インフレも進行。2016年の経済成長率見通しでは、IMFが3.5%減、世界銀行は2.5%減と予測している。
2016年 | |
IMF | ▲3.5% |
世界銀行 | ▲2.5% |
川崎汽船の環境目標での外部分析
項目 | 内容 |
世界人口 | 現在約72億人→2050年約90億人 |
世界経済規模 | 2050年までに現在の約4倍に拡大 |
海上輸送 | 2050年までに現在の約2倍以上に増加 |