オバマ米大統領は、2014年8月7日、イラクで勢力を広げるイスラム過激派「イスラム国」への限定的な空爆を承認したことを明らかにした。イラク北部では「イスラム国」に追われてクルド少数派やキリスト教徒らへの迫害が深刻化。数万人が水や食料を断たれて孤立しているという。住民向けに人道支援物資を空中から投下したことも発表した。

オバマ米大統領は声明で「イスラム過激派による大量虐殺への発展を防ぐために行動する必要がある」「米国はイラクの危機に立ち向かうために幅広い戦略を追求する」とした。一方「米国は新たな戦争に巻き込まれることは許されない」とし、地上部隊の再派遣は否定した。

また、2014年8月17日、イラク北部の第2都市モスル近郊にある国内最大のダム周辺に空爆対象を拡大するした。空爆目的をイスラム過激派による少数派民族の虐待防止から、重要施設の防衛やイスラム国と戦うイラク・クルド人治安部隊の支援も任務に含むと位置付けた。8月30日にはイラク北部の都市アミルリ近郊のイスラム国拠点に空爆地域を拡大した。

イラク空爆では原油高が懸念材料となる。2013年イラクの1日あたり原油生産量は約314万バレルで世界8位。日本は全原油輸入量の16.1%をイラクに依存している。

【イラク限定空爆】

項目 内容
対象 イスラム過激派「イスラム国」
目的 イスラム過激派による少数民族の虐殺防止
重要施設の防御やイラク・クルド人治安部隊の支援

【イラク空爆対象を拡大】

日付 内容
8月17日 モスル近郊にある国内最大のダム周辺に空爆対象を拡大
8月30日 アミルリ近郊のイスラム国拠点に空爆を拡大


米国のイラク政策推移 

大統領 内容
ブッシュ前大統領 2001年9月 米同時テロ
2003年3月 テロ支援や大量破壊兵器保有疑いでイラク戦争開戦
2004年6月 イラク暫定政権に主権委譲
2007年1月 米軍増派しイラクの治安部隊とイスラム武装勢力の掃討作戦展開
2008年7月 米軍増派部隊の撤収
オバマ大統領 2010年8月 米国の戦闘任務終了を表明
2011年12月 イラク戦争終結。米軍撤退
2014年8月 イラク限定空爆開始