関西電力は、2015年2月12日、原子力規制委員会から高浜原子力発電所3、4号機の再稼働に向けた安全審査の合格を取得。再稼働に必要な原子力規制委による設備点検や地元自治体の同意などの手続きを経て、2015年夏以降の再稼働を目指していた。

一方、福井地裁は、2015年4月14日、高浜原発3、4号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、再稼働の差し止めを決定。司法手続きで仮処分が取り消されない限り再稼働ができなくなった。

2015年12月24日、福井地裁は再稼働差し止めを命じた決定を取り消し。関西電力は2016年1月下旬に3号機を再稼働させる計画。


関西電力 高浜原発の再稼働スケジュール

項目 内容
審査書案の了承 2014年12月17日
安全審査の合格 2015年2月12日
再稼働 3号機 2016年1月29日
4号機 2016年2月下旬

 

福井地裁の判断

福井地裁の決定 項目 内容
差し止め 基準値振動の想定 2005年以降、各地の原発で基準値振動を超す地震が5回起きていることから、楽観的な見通しに過ぎない
想定を超える地震が起きれば施設が破損する恐れがあり、炉心損傷に至る危険が認められる
基準値振動の想定以下での地震 外部電源が断たれて給水が止まり、原子炉の冷却機能が失われる恐れ
使用済み核燃料プールの設備も原子炉のように堅固な施設に囲われていない
差し止めを取り消し 新規制基準には合理性がある 高浜原発3、4号機の地震・津波対策は同基準に適し、安全性に欠ける点はない

【関西電力の業績に与える影響】
高浜原子力発電所3、4号機の再稼働が1ヶ月遅れると、営業利益で180億円の悪化要因になるとみられる。


九州電力・川内原子力発電所の司法判断

鹿児島地裁は、2015年4月22日、九州電力川内原子力発電所1、2号機の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、住民らの訴えを却下する決定をした。

新基準について「専門的知識を持つ原子力規制委員会によって策定されている。過去10年間に当時の基準を超える地震の揺れが全国で5例観測されたが、新基準はその原因を考慮し手法が高度化されている。不合理な点はない」と判断。原発の耐震性を認定した。また、「原発の安全対策に欠陥があり、事故が避けられない」との原告の主張に対し、「的確な立証はない」と判断した。


高浜原発 新規制基準への対応

地震の揺れの想定値を550ガルから700ガルに引き上げ。津波の高さ想定も2.6メートルから6.7メートルに引き上げ。最大風速100メートルの竜巻も想定。耐震補強や防波堤の建設、海水ポンプを飛来物から守る設備も作ることから、追加工事にかかる費用は見込み額の117億円から1030億円に増加する見通し。

項目 内容
追加工事費 117億円→1030億


関西電力の原発再稼働計画

原発1基が再稼働すれば、化石燃料の輸入が年1000億円前後減るとされている。関西電力は保有する全11基の原発のうち、廃炉にする方針の美浜1、2号機を除く計9基の原発再稼働を見込んでいる。
 

関西電力の業績 

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2014年 3兆4060億円 ▲1130億円 ▲1483億円 1兆602億円 7兆7433億円 13.4%
2013年 3兆3274億円 ▲1113億円 ▲974億円 1兆2131億円 7兆7775億円 15.3%
2012年 2兆8590億円 ▲3531億円 ▲2434億円 1兆2781億円 7兆6351億円 16.5%
2011年 2兆8114億円 ▲2655億円 ▲2422億円 1兆5298億円 7兆5213億円 20.1%
2010年 2兆7697億円 2379億円 1231億円 1兆8324億円 7兆3101億円 24.8%