政府は、2014年3月28日、国家戦略特区の第1弾として「東京圏」、「関西圏」、沖縄県、新潟市、兵庫県養父市、福岡市の6ヶ所を指定した。 医療では先端医療など保険外診療を対象に組み入れ。関西ではiPS細胞など再生医療分野を念頭に、新しい医療の拠点作りを目指す。また、外国では承認済みだが、国内では未承認の医薬品を迅速に評価し、医療現場で使えるようにする。 ビジネスでは東京圏を指定。外国人医師の業務解禁とあわせて、内外の医師と患者を取り込む仕組み作りを目指す。1979年の琉球大学が最後だった医学部の新設立検討も盛り込まれた。 農業では、農業生産法人に中小企業向け信用保証制度を適用し、銀行からお金を借りやすくする。また、農地の売買・貸借を許可する権限を農家や農協からなる農業委員会から市町村に移行。大規模農業の改革拠点として新潟市が、耕作放棄地改革拠点として兵庫県養父市が指定された。 雇用では、雇用に関する裁判例などを類型化した「ガイドライン」を作成し、それをもとに経営者の疑問に答える「雇用労働相談センター」を設置。創業のための雇用改革拠点として福岡市が指定された。 観光では、ビザの発給要件の緩和を制定。外国人観光の誘致を目指す観光産業拠点として沖縄を選定した。

国家戦略特区は、2015年度までに2年間が集中取り組み期間とされ、改革を加速する。
 

分野 内容 設置地域
医療 先端医療など保険外診療 大阪・兵庫・京都
再生医療分野を念頭に新しい医療拠点作り
ビジネス 外国人医師の業務解禁で医師と患者を取り込む仕組み作り 東京・神奈川・千葉県成田市
医学部新設検討
農業 農業生産法人に中小企業受け信用保証制度を適用 新潟市
農地賃借・売買の許可権を市町村に移行 兵庫県養父市
雇用 雇用労働相談センター設置 福岡市
道路を占有し自由にイベントやオープンカフェを実施
観光 ビザの発給要件の緩和 沖縄

 

税優遇案

政府と福岡市は法人課税を創業から5年間は大幅に優遇する案を検討する。国と地方を合わせて約35%ある法人実効税率をアジアで最低水準の17%に引き下げる。また、日本で起業する外国人の在留資格も緩める。8月にもまとめる税制改正要望に特区としての減税方針を盛り込む。 また、大阪府と大阪市は独自に法人課税の優遇策を検討する。特区制度を使う先端医療等の事業で得た利益については、法人事業税など地方税を5年間ゼロにする方針。地方税を軽減するとその分だけ企業の所得が増えて国税負担が増すため、政府は地方税の軽減分を国税の課税所得に入れないなどの特例を設ける。 東京圏など6特区全体でも、特区関連事業で稼いだ課税所得を20~40%控除して税減免する優遇策を検討。設備投資減税を現在の医療分野から農業分野にも広げる案などがある。特区制度を使って食料加工拠点などを作った企業には、設備投資の即時償却ができるようにして投資直後の税負担を減らす。

地域 内容
福岡市 法人税を創業から5年間は17%に引き下げ
大阪府・大阪市 法人事業税など地方税を5年間ゼロにする方針
東京圏 課税所得を20~40%控除

 

起業

起業に必要な手続きを一元化する窓口を2014年内に新設する。現在、日本での企業設立には役所ごとに業務が異なり約2~3週間かかる。行政上の手続きや電気・ガス、電話回線なども一括して申請できるよう民間企業と連携する。 また、起業する外国人の在留条件の緩和も盛り込む。現在は設立時に2人以上の常勤職員の雇用と最低500万円の投資のいずれかを満たさなければならない。今後は1~2年で条件を満たせる見通しなら在留を認める。日本人の家事支援のための入国や在留も認め、資格取得の試験は地域によって年1回から2回に増やす。 戦略特区に指定された全国6地域のうち東京圏、関西圏、福岡市を対象に想定する。 政府は対日直接投資残高を2020年に35兆円に倍増する目標を掲げており、外資系企業の国内投資を促す。

起業設立手続き期間
日本 2~3週間→1週間
シンガポール 数日
韓国 10日

 

国家戦略特区で追加規制緩和が検討されている主な項目(2013年時点)

国家戦略特区は、地域を限って大胆な規制緩和や税制優遇に踏み切る仕組み。 企業の農業参入では、政府は期限付きの農地貸し借りと、農業生産法人を通じた間接的な農地所有を認めてきたが、2014年度には耕作放棄地を買い取り、生産法人に貸し出す「農地中間管理機構」を設け、賃借を始める。また、生産法人への出資比率を25%以下から50%以上も容認、法人の役員の過半数が年150日以上農業に従事しなければならないという規制も見直す方針。さらに、農業生産法人に中小企業向け信用保証制度を適用し、銀行からお金を借りやすくすることや、農地の売買・賃貸借を許可する権限を生産者らでつくる農業委員会から市町村長の監督下に移すことも検討する。 医療では、1979年の琉球大学が最後だった医学部新設を認めることを検討。病院のベッド数の配置を巡る規制を緩め、病院間などでベッド数の配置換えができるよう規制を緩和する。

項目 内容
雇用 「事前型金銭解決制度」を含む雇用規制の緩和
契約社員の有期雇用契約の期間を緩和
条件付きで法定労働時間の規制を適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入
医療・介護 看護師、介護士、保育士の外国人受け入れ拡大
病床規制の見直し
医学部新設
混合診療の解禁
教育 教育に限った利用権を家庭に配り学費負担を軽減する制度の創設
農業 株式会社の農地所有を解禁
生産法人への出資比率を25%以下から50%以上も容認
法人の役員の過半数が年150日以上の農業に従事する規制の見直し
農業生産法人に中小企業向け信用保証制度を適用
農業委員会の農地貸借・売買の許可権の見直し
都市再生 商業ビルなどの駐車場設置義務の廃止