現在主流の有機電解液を使用しているリチウムイオン電池はエネルギー密度の限界に到達しつつあるとされており、蓄電池の更なる小型化・軽量化のために新しいコンセプトの電池が求められている。

電極の蓄電性は使用する電極材料の組み合わせで決まり、硫黄正極と金属リチウム負極は従来の電極と比較して10倍以上の理論容量を持つため、蓄電性の大幅な向上が期待されている。しかし、有機電解液を使用する既存の電池では、放電に伴い硫黄正極が有機電解液に溶出してしまうため、放電と充電のサイクルを繰り返すことで蓄電性が劣化する。そのため、有機電解液に替わる候補の1つとして固定電解質を使った全固定電池の研究が進められている。

また、リチウムイオン電池の有機電解液には発火しやすい成分が含まれるが、全固定電池の固定電解液は燃えにくいため、安全性が高い。

 

 


全固定電池の開発

大学・企業 内容
東北大学 充電時間を30分から3分に短縮
トヨタ自動車
東北大学 19年をめどにEV向けに実用化
三菱ガス化学
日本ガイシ ウエアラブルなど小型機向け電地。2016年度に発売計画

【トヨタ自動車】
 東北大学の一杉太郎准教授らは電解質と電極の境界面を接着。リチウムイオンが電池内を移動しやすくなり、充電時間を従来の30分から3分に短縮したもよう。トヨタ自動車や電池メーカーと共同でバッテリー開発に取り組む。

【三菱ガス化学】
東北大学の折茂慎一教授らは、電解質を硫化物や酸化物からリチウムと水素の化合物に変え、電池の重さを従来の全固定電池の半分以下にした。三菱ガス化学と共同研究し、2019年をめどにEVなどに搭載するバッテリー向けに実用化を目指す。

【日本ガイシ】
摂氏120度の高温下でも使用できるチップ型リチウムイオン電池「全固定電池」を開発。内部に可燃性の電解液を使わない構造で、高温に強い事からウエアラブル端末など小型機向けの需要が見込まれる。2015年3月までにサンプル出荷を始め、2016年度の発売を目指す。