メタンハイドレートは「燃える氷」と呼ばれ、次世代エネルギーとして期待されている。メタンハイドレートは太平洋側では海底深くに層で存在しており、埋蔵量が把握しやすい一方、日本海側は海底の表面近くで塊で散在しており、総量の把握や採取が難しいとされる。
太平洋側では2013年3月に愛知・三重県沖合でメタンハイドレートからのガス産出に成功。日本海側では2013年に上越・能登半島沖合でメタンハイドレートが埋蔵されている可能性が高い地域が約225ヶ所あることを確認。2014年には上越沖や北海道日高沖、隠岐の島周辺、秋田・山形沖の4海域・計746ヶ所で表面型メタンハイドレートの存在を確認した
メタンハイドレートの商業化に向けた新工程表
メタンハイドレートの商業化に向け、政府は2018年度をめどに商業化に向けた技術整備を目指し、2023年以降の商業化を目指す計画だったが、経済産業省は2017年6月に新たな行程表を策定した。2018年にも米国、インドと共同で産出試験を実施。国際的な協業で試験コストの抑制とデータを蓄積する。
2018年をめどに米アラスカ州で陸上の産出試験を開始。4~6年は陸上試験に注力。続く4~5年で難度の高い海底からの産出試験を本格化。その後の5年間で商業化のめどをつける計画。
日程 | 内容 |
2018年 | 米アラスカ州とインドで産出試験を開始 |
2020年代半ばまで | 陸上試験に注力 |
2030年頃まで | 海底からの産出試験 |
2030年代半ばまで | 商業化 |
メタンハイドレートの調査計画と結果
調査開始年度 | 場所 | 調査結果 | 試掘開始年度 |
2016年秋 | 愛知・三重県沖 | ||
2015年度 | 北海道 | - | |
2014年度 | 秋田・山形沖合いと山陰周辺 | 4海域746ヶ所で埋蔵確認 | 2015年度 |
2013年6月8日 | 上越・能登半島沖合い | 埋蔵可能性が高い地域 約255ヶ所 | 2014年度 |
【愛知・三重県沖】
政府は2016年秋に愛知県・三重県沖でメタンハイドレートから天然ガスを安定生産するための実験を開始。試掘井の目詰まりなどで、6日間で中止を余儀なくされたが、2017年4月から5月に再挑戦する。安定してメタンガスを取り出す技術の確立を目的とする。
愛知・三重県沖の埋蔵量は日本の天然ガス消費量の10年分とされている。2021年度以降の商業化を目指す。
項目 | 内容 |
実験 | 安定してメタンガスを取り出す技術の確立 |
実施 | 2017年4月~5月 |
【北海道】
北見工業大学は、2014年11月22日~11月25日。十勝沖太平洋で表層型メタンハイドレートの海洋調査を実施。メタンハイドレートの存在を示唆する重要な指標である「メタン噴出フレア」と「カーボネート」を発見。表層型メタンハイドレートが多数地点で存在する可能性が高いことを発見した。
【上越沖・北海道日高沖・隠岐の島周辺・秋田山形沖】
2014年12月25日、経済産業省は日本海上越沖や北海道日高沖、隠岐の島周辺、秋田・山形沖の4つの海域の計746ヶ所で表層型メタンハイドレートの存在を確認したと発表した。上越沖と秋田・山形沖では海底地質を実際に採取するサンプル調査も実施。海底の表面だけでなく、地中深くにもメタンハイドレートが確認された。調査期間の最終年度にあたる2015年度はサンプル調査に重点を置き、日本近海の埋蔵量を算出する。
メタンハイドレートの埋蔵量
項目 | 内容 |
埋蔵量 | 12.6兆立方メートル |
回収可能量 | 4.1兆立方メートル |
メタンハイドレートの位置づけ
メタンハイドレートの位置づけは「液化天然ガス(LNG)の代替」を目指す。2030年~2050年代の日本着のLNG価格を1MMBTUあたり11~12ドルと仮定。6~7ドルの生産原価を目標としている。
メタンハイドレート関連銘柄
分野 | コード | 企業 | 事業 |
資源開発 | 1606 | 日本海洋掘削 | メタンハイドレートのコンソーシアム(MH21)の開発研究を受託 |
6269 | 三井海洋開発 | 生産設備の土台となる設備を建造 | |
1622 | 石油資源開発 | 石油天然ガス・金属鉱物支援機構などとコンソーシアム(MH21)を設立 | |
1605 | 国際石油開発帝石 | ||
6297 | 鉱研工業 | 海底地質調査用ドリル製造 | |
5020 | JXHD | JX日鉱日石開発が石油天然ガス・金属鉱物資源機構の委託で佐渡南西沖で試掘 | |
1803 | 清水建設 | 水底からの回収実験に世界で初めて成功 | |
燃料輸送 | 9067 | 丸運 | |
9074 | 日石輸送 | ||
プラント | 1963 | 日揮 | |
6366 | 千代田化工建設 | 中長期海洋産出試験などへの参画を目指す新会社に資本参加 |
海外のメタンハイドレート開発
【インド】
2013年9月12日、インド政府が計画するメタンハイドレート開発に対し、日本政府が強力することで一致した。インド政府は日本が3月に太平洋で海底メタンハイドレートからのガス産出に成功したことから協力を要請。インドに「ガスハイドレート研究センター」を設立することで合意した。また、地質データの解析の強力や地球深部探査船「地球」のレンタルの可能性についても今後協議を進めるとしている。
【中国】
2013年に南シナ海北部の広東省沖で高純度のメタンハイドレートを発見し、サンプルを採取。天然ガス換算埋蔵量は1000億~1500億立方メートルとされている。2030年頃の商用化を目指し、探査・研究体制を強化する。