2013年度、機関投資家の運用方針一覧。公的年金基金を運用するGPIFは運用の資産構成割合の変更で、債券比率を下げ、株式比率を上げる。保険会社は4月時点では国債購入を抑制し、外債投資を増やす方針が中心だったが、10月に日本生命が下半期の資金増加分6000億円の大半を日本国債で運用する計画を発表し、国内債券で運用する割合を増やした。地方銀行は脱国債依存傾向を強め、外債や上場不動産投資信託などへの投資にシフトする。 {年金基金} 約120兆円の公的年金基金を運用するGPIFは、2013年6月7日、運用の目安とする資産構成割合の変更を行った。国内債券の比率を67%から60%に引き下げ、国内株式比率を11%から12%に上げた。また、外国債券は8%から11%に、外国株式も9%から12%に上げた。低リスク低利回りの国内債券の運用を縮小し、株式や海外資産など、高リスク高利回りの資産により多くの資金を配分する。資産構成割合の変更で、長期的な運用利回りは3.34%から3.42%に上昇する見通し。
投資資産 | 現在 | 変更後 | 増減額 |
短期資産 | 5% | 5% | - |
外国債券・株式 | 17% | 23% | 6.7兆円 |
国内株式 | 11% | 12% | 1.1兆円 |
国内債券 | 67% | 60% | ▲7.8兆円 |
{保険} 国内損保43社の2013年1月時点での総資産は332兆円。このうち約44%にあたる146兆円が日本国債に振り向けられている。
国内債券 | 外債 | 株式 | ||||
4月 | 10月 | 4月 | 10月 | 4月 | 10月 | |
日本生命 | 抑制 | 約6000億円 | 増加 | 横ばい | 減らす | |
明治安田 | 約5000億円積み増し | 長期金利0.6%で約5000億円積み増し | 減らす | |||
大同生命 | 横ばい | 長期金利0.6%で積み増し | 横ばい | |||
太陽生命 | 横ばい | 長期金利0.6%で積み増し | 減らす | |||
富国生命 | 積み増し | 米・豪国債など400億円積み増し | 横ばい | |||
第一生命 | 中心 | 低金利継続で積み増し | ||||
住友生命 | 積み増し | 金利や為替動向で調整 | 横ばい | |||
朝日生命 | 1500億円積み増し | 減らす | 減らす | |||
かんぽ生命 | 1.9兆円投資 |
【日本生命保険】 2013年10月22日、2013年10月~2014年3月の運用計画を発表。下半期の資金増加は6000億円前後とみられ、その大半を日本国債で運用する計画。外債は横ばい、国内株式や貸付は横ばいから減らす。2013年4月時点では国内債券の運用を抑える計画だったが、金利水準が安定してきたため、増加した運用資金の大半を日本国債で運用する計画に戻した。また、2013年4月時点では4年間で保有不動産の運用利回りを改善する為に約500億円を追加投資する計画を示している。 【明治安田生命】 2013年10月24日、2013年度の下期運用計画を従来通り一般勘定資産を通期で1兆円増やすとした。増加分のうち半分強を国内公社債に、半分弱を外債に振り向ける方針。外貨建て債券は上半期に2900億円増となった。 【太陽生命】 4-9月期で外債が2000億円以上増加。下期も引き続き買い増す方向。国内債券は4-9月で500億円減。下期も横ばい又はやや減少を想定している。 【第一生命】 国内債券を中核資産としつつ、低金利が続けば外債や外国株など代価試算での運用を検討する。また、2015年までに1500億円を環境関連や国内新興株、海外のインフラ、新興国など成長分野に振り向ける。投資残高を3500億円と2012年度比約1.8倍に増やす。 【かんぽ生命】 国内社債や地方債に1兆9050億円の投資方針。 {運用会社} 【米グッゲンハイム】(運用資産1700億ドル、約17兆円) 2013年秋までに2億ドル(約200億円)を日本株の投資に振り向ける見通し。米グッゲンハイムの投資戦略は、株式の買いと売りを組み合わせる「ロング・ショート」といった手法で、どんな相場環境でも収益を確保し、年間で7~9%の利回りを目指す。また、グッゲンハイムは今後数年にかけてアジアを対象に運用する額を最大20億ドル(約2000億円)まで増やす。そのうち3分の1近くを日本株に投じる見通し。 {地方銀行} 地方銀行全体の国債保有額は過去10年間で倍増し、40兆円規模に上っている。長めの国債保有率が高く、償還までの残存年数は平均4年強と大手銀行の平均2.5年より長い。BNPパリパ証券によると、1%を割り込んでいる長期金利が4%に上昇した場合、地域金融機関が抱える債権の含み損が7.9兆円に達するとの資産もある。
預金 | 有価証券残高 | 債権損益 | 有価証券利回り | |
第四銀行 | 4兆1807億円(3.3%) | 1兆8687億円(4.9%) | 14億8000万円(4.56億円) | 0.95%(▲0.06%) |
北越銀行 | 2兆1461億円(2.7%) | 8314億円(▲3.1%) | 9200万円(12.89億円) | 0.87%(▲0.08%) |
大光銀行 | 1兆2449億円(1.1%) | 3842億円(1.5%) | 1億300万円(▲9100万円) | 0.90%(▲0.08%) |
東和銀行 | 1兆7341億円(3.5%) | 5118億円(6.1%) | ▲3億7600万円(10.64億円) | 1.62%(▲0.03%) |
千葉銀行 | 9兆6368億円(2.7%) | 2兆1008億円(0.4%) | 38億5300万円(29.18億円) | 0.73%(▲0.10%) |
東京都民銀行 | 2兆3417億円(▲0.5%) | 5574億円(▲6.8%) | 17億1800万円(▲7.51億円) | 0.57%(-) |
大垣共立銀行 | 3兆9865億円(4.5%) | 1兆644億円(9.0%) | 53億7000万円(▲6.44億円) | 1.02%(▲0.20%) |
十八銀行 | 2兆2273億円(3.3%) | 1兆870億円(7.9%) | 26億5700万円(6.81億円) | 0.95%(▲0.16%) |
高知銀行 | 8824億円(1.1%) | 2794億円(0.9%) | 17億1700万円(11.73億円) | 1.26%(▲0.04%) |
肥後銀行 | 3兆7298億円(3.9%)? | 1兆5590億円(14.8%) | 24億7200万円(8.17億円) | 1.15%(▲0.11%) |
【横浜銀行】 満期までの残存期間が5年以上の国債を売却。外国債券や上場不動産投信への投資を拡大し、脱国債依存の傾向を強める見通し。 【八十二銀行】 仕組み債や不動産ファンドへの投資を強化。