日本版ISA(少額投資非課税制度 通称NISA)は、5年間で最大500万円までの株式や投信の値上げ利益、配当、分配金が非課税となる制度。現在は、株式や投信などから生じる所得への課税は、20%から10%となっている。この制度が2013年に終了し、10%から20%に戻る。一方、NISAは500万円までの株式や投信などから生じる所得への課税が5年間0%となる。類似制度は1996年にイギリスでもスタートしており、2010年時点でイギリスの総人口の38%が口座を持っているとしている。


NISA開設時の注目点と注意点

ポイント 内容
口座開設時 1人1口座で新規口座手続が必要。年100万円を上限に累積500万円まで投資可能
金融機関を選ぶ基準 自分の運用スタイルに合った金融機関を選択
運用可能期間 繰越を使えば10年間運用可能
非課税枠 投資した株式や投信は非課税期間中でも売却可。売却分の非課税枠が減少
課税 利益は非課税。損失は通算不可

【1,NISA口座開設時】
NISAは新規の口座であることから、現在銀行や証券会社の口座を持っていても新たに口座開設の手続が必要となる。NISAは1人1口座に限られるため、口座が複数の金融機関にまたがって設けられないように、利用者は金融機関を通じて税務署に非課税適用申請書を申請し、それを税務署が確認後、口座が開設される。 その際、住民票の写しなどが必要となる。住民票の写しは、2013年1月1日時点の住所が記載されたもので、引っ越した場合は住民票の除票の写しを用意する。口座を開設できるのは2014年から2023年まで。 NISAの口座開設は1人1口座なので、世帯主だけではなく、妻や成人になった子供も口座を開くことができる。世帯主が家族に贈与しても、年間110万円までなら贈与税は掛からない。年100万円を上限に投資するNISAは累積で500万円まで投資が可能。

【2,金融機関を選ぶ基準】
NISAで投資できるのは、上場株式と公募株式投信。株価指数連動型上場投信(ETF)や不動産投信(REIT)も買える。新たに株・投信を買うことを前提としていることから、通常の口座で保有している商品をNISAに移管することはできない。株式投信は金融機関によって品揃えが異なるため、投資したい商品がある場合には、どの金融機関で買えるのか、前もって調べておくことが必要になる。 また、現制度では、2014年のNISAスタート時にいったん口座を開くと、2017年までは金融機関を変更することができない。そのため、自分の運用スタイルに合った金融機関を選択することが重要になる。

【3、繰越を使えば10年間運用可能】
NISAは年100万円までの投資が5年間、計500万円が非課税となる。制度が始める2014年に100万円を投資し、2015年、2016年、2017年、2018年と続けていくと、2018年に投資額が500万円となるということで、2014年に投資した100万円は2018年に非課税の期限が切れることになる。 非課税期間中に売却しなかった場合には、2つの選択肢がある。1つは通常の口座に移す方法で、株式や投信は時価で移管される。この時、移管時の値上がり益に税金はかからないが、その後の値上がり益は課税対象となる。もう1つは、そのまま継続保有する方法。2019年分の非課税枠を使って、そのまま継続保有でき、2023年まで制度を利用することができる。 この繰越の仕組みを使うと、10年間の運用が可能になる。また、年間投資額が100万円を下回っても、残った枠を翌年に持ち越すことはできない。

【4,非課税期間中の売却と非課税枠の減少】
NISA口座で投資した株式や投信は非課税期間中であってもいつでも売却することができる。例えば、株式に50万円投資し、80万円に値上がりした場合。その時点で売却すると30万円の利益になる。NISAは非課税なので、譲渡益に税金はかからない。一方、売却した80万円分の非課税枠はなくなる。

【5、利益は非課税 損失は通算不可】
2013年まで、株式や投信などから生じる所得への課税は20%から10%となっている。この制度が終了し、2014年から税率は20%に戻る。一方、NISAはこの20%の税がかからないため、非課税のメリットが大きい。 しかし、非課税期間終了後に損失を抱えた状態の場合、損失には税金がかからないため非課税のメリットは失われる。また、通常の口座であれば、損失があっても値上がりしている商品を他に持っていれば、損失と利益を通算して課税を抑えられる。配当とも合算でき、配当にかかる税金も減らすことができる。 NISAは、もともと譲渡益や配当に税金が掛からないので、損益を通算する意味が無いことから、NISAで出した損失を、通常の口座の利益と通算することはできない。