免疫チェックポイント阻害剤の働きを10分の1のコストで実現しようとする研究が進む。免疫チェックポイント阻害剤は、体内の免疫の攻撃力を高めるがん免疫薬。従来の抗がん剤が効かない患者も治せる薬として注目を集め、悪性黒色種や肺がん、胃がんの一種の治療などに利用されるが、薬代は年1000万を超える高価なものとなっている。研究が進む小さな化合物の新薬候補は、抗体に比べて製造しやすく低コスト。免疫チェックポイント阻害剤を代替できる薬が実現できれば、薬代を10分の1に抑えられる可能性があるという。
がん免疫薬 コスト低減への研究の動き
機関 | 内容 |
千葉県がんセンター研究所 | 大腸がんや膵臓がん向けに2021年~2023年の治験を目指す |
東京工業大学 | 肺がんや胃がんなど向けに2023年~2028年の治験を目指す |
東北大学 | 悪性黒色種や肺がんなど向けに2023年~2024年の治験を目指す |
【千葉県がんセンター研究所】
千葉県がんセンター研究所の長瀬浩喜研究所長らは、がんへの免疫の働きを高める化合物を開発した。バイオ医薬の高い効率と従来の安い製造コストの双方を兼ね揃えた中分子医薬というもの。マウス実験では大腸がんが消え、生存期間が6倍の1年以上に伸びたという。 大腸がんや膵臓がん向けで2021年~2023年の臨床試験開始を目指す。
【東京工業大学】
東京工業大学の近藤科江教授らは、免疫チェックポイント阻害剤よりも小さい化合物で、同じように働くものを開発した。肺がんや胃がんなど向けに2023年~2028年の治験を目指す。
【東北大学 扶桑薬品工業】
東北大学の菊池晴久教授と扶桑薬品工業は、より小さい低分子の化合物で、免疫のブレーキに関わる分子を約8割減らすことに成功した。悪性黒色種や肺がんの一種などで2023年~2024年の治験を目指す。