環太平洋経済連携協定(TPP)。2006年5月に発行したシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヶ国が参加する自由貿易協定。その後、米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加を表明。2013年3月15日、日本も交渉に参加を表明した。モノやサービスの貿易自由化だけで無く、政府調達や貿易円滑化、競争政策など幅広い分野を対象としており、物品の関税は10年以内にほぼ100%撤廃するのが原則となっている。

TPP 日米の交渉内容ポイント

項目 内容
自由化率 95%超
コメ 無税輸入量を認める。超過分は高率の関税を残す
牛肉 関税38.5%を約10年かけて10%前後に引き下げる
豚肉 1kgあたり最大482円の関税を最大50円前後に引き下げる

【自由化率】
日米両政府はTPPで関税を無くす品目の割合を示す自由化率を日米間で95%超とする方向。12ヶ国全体でも95%を超える公算が大きい。一部の重要農産品には関税が残るが、それ以外の大半の工業品や農産品は10年以内に輸入関税を撤廃する。


【コメ】
日本が無税で受け取れる輸入枠について、米国は年17万5000トンを主張。日本は輸入規模を抑えたいと主張している。日米は日本の聖域であるコメについて、無税の輸入量を認めた上で、それを超える量については高率の関税を残す見通し。


【牛肉・豚肉】
米国産牛肉にかける日本の関税を38.5%から約10年かけて10%前後に引き下げる。豚肉は1キログラムあたり最大482円の関税を50円前後に引き下げる。


【知的財産】
医療品の開発データの保護期間は10年超を主張する米国と5年程度と短期間にとどめたい新興国やオーストラリアなどとの隔たりがある。保護期間が短ければ後発医薬品が早く出て医療費は下がるが、新薬メーカーは投資の回収がしにくくなる。米国は新薬メーカーを多く抱えている。


日本経済への影響

【政府のTPP経済効果試算】
2013年3月、政府は輸出増などでGDPが3.2兆円増加する一方、農産品の輸入増で農水産業の生産額が7.1兆円から4.1兆円に減少すると試算した。コメの国内生産量のうち約30%が外国米に置き換わり、残る国産米の米価格も下落。コメの生産減少額は1兆円を超える見通し。

項目 内容
GDP 3.2兆円増加
農水産業の生産額 7.1兆円→4.1兆円
コメの生産額 1兆円減少


【日本が死守を狙う分野】

品目 関税率 年間生産額
コメ 778% 1兆7950億円
牛肉 38.5% 4406億円
小麦 252% 585億円
大麦 25% 169億円
脱脂粉乳 218% 6623億円
バター 218%
砂糖 328% 839億円

※2009年時点


【TPPで関税が撤廃された場合の農林水産物の試算】

品目 生産率 生産額
コメ ▲32% ▲1兆100億円
豚肉 ▲70% ▲4600億円
牛肉 ▲68% ▲3600億円
小麦 ▲99% ▲770億円
大麦 ▲79% ▲230億円
牛乳・乳製品 ▲45% ▲2900億円
砂糖 ▲100% ▲1500億円
でんぷん ▲100% ▲220億円