2015年度の中央銀行の政策金利推移一覧。中央銀行の方針や経済成長見通し、インフレ率への対応などまとめ。


中央銀行の政策金利推移 2015年度

  1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ECB 0.05 - 0.05 0.05 - 0.05 0.05 - 0.05 - - 0.05
英国 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 - 0.5 0.5 0.5 -
トルコ 7.75 7.5 - 7.5 7.5 7.5 - 7.5 7.5 - 7.5 7.5
オーストラリア - 2.25 2.25 2.25 2 2 2 2 2 2 2 2
韓国 - 2.0 1.75 1.75 1.75 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5
フィリピン - 4.0 4 - 4 4 - 4 4 4 4 4
インドネシア 7.75 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5 7.5
ニュージーランド - - 3.5 3.5 - 3.25 3 - 2.75 2.75 - 2.5
マレーシア 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3.25 - 3.25 -
インド 7.75 7.75 7.5 7.5 - 7.25 - 7.25 6.75 - - 6.75
ブラジル 12.25 - 12.75 13.25 - 13.75 14.25 - 14.25 14.25 14.25 -
タイ 2.0 - 1.75 1.5 - 1.5 - 1.5 1.5 - 1.5 1.5
ロシア 15 - 14 12.5 - 11.5 11 - 11 11 - 11


 中央銀行別の主なポイント

【欧州中央銀行(ECB)】
2015年12月3日、政策金利を0.05%に据え置いた。また、量的金融緩和の延長を決定。実施期間を2016年9月までから2017年3月までとした。購入対象にドイツ州政府などが発行する地方債も追加。購入金額は600億ユーロで据え置く。マイナス金利をマイナス0.2%からマイナス0.3%にすることも決めた。

2015年9月3日、ドラギ総裁は「予想よりも成長ペースが鈍い」。中国などの新興国景気の減速を受け「世界的に景況感が悪化する可能性がある」。輸出の減少を通じて「欧州景気の下振れリスクが高まった」とした。物価については「消費者物価指数の上昇率は非常に低い水準にとどまりそうだ」「マイナス域に落ち込む可能性もある」とした。原油安の原因については新興国の景気減速や中国の需要減を理由に挙げた。

また、2015年の実質成長率見通しを1.5%から1.4%に下方修正。原油安が当面続くとして物価見通しも0.3%から0.1%に下方修正した。

なお、ECBは国債を大量に買い入れて資金を流す量的緩和を導入。2015年3月から2017年3月まで毎月600億ユーロ(約8兆円)の買入を行う。ウクライナ危機など地政学的な要因などを背景に、ユーロ圏の景気下振れリスクが大きく、経済成長の鈍化や物価低迷によるデフレに対応する。また、ECBは2014年10月に銀行の融資債権を証券化した資産担保証券(ABS)の買入計画で合意。2014年内に開始し、少なくとも2年続ける。投資不適格とみなしてきたギリシャやキプロスのABSも対象に含む。

項目 内容
量的緩和 2015年3月~2017年3月 毎月600億ユーロ
ABS買入 2014年~2016年
マイナス金利 0.3%


【英中銀 イングランド銀行】
2015年10月8日、政策金利を0.5%に据え置いた。英国債などを買って金融市場に資金を供給する量的緩和の枠は3750億ポンド(約66兆円)を維持した。英中銀は失業率が7%に下がるまで現行の金融緩和を続ける方針。

イングランド銀行マーク・カーニー総裁は、2014年5月「利上げを検討する時期が近づいている」「英経済は正常に戻り始めた」と発言。2015年前半にも利上げに踏み切る可能性が出てきた。2015年の経済成長率を2.7%から2.9%に上方修正。失業率は2014年6.8%から2015年~2016年には5.9%まで下がるとの見方も示した。

一方、2015年5月11日、2015年の実質GDP成長率見通しを2.9%から2.5%に引き下げ。2015年11月5日、利上げ見通しを後退させた。英国のインフレ率が2017年後半まで十分に上がらない可能性を示唆。カーニー総裁は「世界経済の見通しが弱まっており、下振れリスクがある」とした。

項目 内容
金融緩和 失業率7%まで継続
政策金利 2016年中の見通しを後退
失業率 14年6.8%→15~16年5.9%


【トルコ中央銀行】
2015年12月24日、政策金利を7.5%に据え置いた。トルコ中銀は「政策はインフレ見通し次第」とし、エネルギーと食品価格の変動を理由に通貨リラの流動性を必要な限り引き締め気味に維持する方針。

8月時点でトルコ中銀は「国内外の市場の不確実性やエネルギー、食品価格の不安定差から、インフレ懸念が著しく後退するまで慎重な政策スタンスを維持する」とした。また、今後予想される米国の利上げをにらみ、追随利上げの姿勢を示した。


■2015年2月24日、政策金利を7.75%から7.5%に引き下げた。原油価格の下落によりインフレ率が低下。トルコ中銀は「(エネルギーと生鮮食品を除く)コアインフレ率は下がり続ける」「外需はなお弱いが、内需は成長に貢献している」とした。

■2015年1月20日、政策金利を8.25%から7.75%に引き下げた。原油価格の急落でインフレ率が低下。エルドアン大統領は、2015年1月16日、金利が高いままならば、政府が望む水準まで投資が拡大しないとし、中央銀行に利下げするよう求めていた。

項目 内容
インフレ率目標 5%


【オーストラリア準備銀行】
2015年12月1日、政策金利を2%に据え置いた。豪中銀スティーブンス総裁は、2015年9月1日に「一段の豪ドルの下落が均衡のとれた経済成長に必要」との文言を削除。物価上昇率が低水準で安定していることから「緩和的な金融政策が必要だ」とした。

■2015年5月5日、政策金利を2.25%から2%に引き下げた。原油安によるデフレの影響や住宅市場の過熱を抑制する。豪中銀は「企業の設備投資の低迷が見込まれ、公共投資も弱い動きが続く」としている。2015年3月3日、豪中銀スティーブンス総裁は「今後、一段の緩和が適切になることもある」「住宅市場で生じる可能性があるリスクの評価・抑制に取り組んでいる」とした。資源が豊富なオーストラリアは、中国の減速で打撃が及んでいる。

■2015年2月3日、政策金利を2.5%から2.25%に引き下げた。原油安によるデフレの影響を抑える。豪中銀スティーブンス総裁は「需要の伸びは非常に低い」とし、実質GDP成長率がトレンドを下回るペースで推移するとした。為替相場は豪ドルの一層の下落が「均衡のとれた経済成長に必要」とした。

項目 内容
インフレ率 2016年まで2~3%の範囲内


【韓国中央銀行】
2015年12月10日、政策金利を1.5%に据え置いた。中東呼吸器症候群(MERS)の影響による消費減や輸出が停滞するも、内需回復の兆しが見えていることから、6月の利下げや政府の景気対策効果を見極める。

■2015年6月11日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。韓国中銀李柱烈総裁は「輸出不振とMERSの影響から、成長を押し下げるリスクが大きくなった」とした。

■2015年3月12日、政策金利を2%から1.75%に引き下げた。韓国中銀李柱烈総裁は「内需の回復が予想より弱い。経済の潜在成長力の低下懸念があり事前に防ぐ」とした。


【フィリピン中央銀行】
2015年12月17日、政策金利を4%に据え置いた。内需が好調で、インフレ率も安定。低インフレがGDPの70%を占める個人消費拡大につながっている。中銀タテンコ総裁は「通貨は既に対ドルで売られており、さらに多くは下げないだろう。米国は今後緩やかに金利を上げるとしており、新興国に対して建設的な行動をとるだろう」とした。

インフレ率は2%台と低位に推移。フィリピン中銀は2015年9月24日に「国内経済は内需の牽引で良好」、2015年2月12日には「原油安の影響で物価上昇圧力が緩やかになった」とした。また、インフレ率を2015年は3%から2.3%に、2016年は2.6%から2.5%に修正している。

項目 内容
インフレ率 2015年2.3%


【インドネシア中央銀行】
2015年12月17日、政策金利を7.5%に据え置いた。中銀は「3~5%のインフレ目標で適切な金利水準」としている。預金準備率を8%から7.5%に引き下げる。実施は2015年12月1日から。

■2015年2月17日、政策金利を7.75%から7.5%に引き下げた。インドネシア政府は2014年11月にガソリンや軽油の公定価格を約30%引き上げ。中銀はインフレ圧力が高まることに対応し利上げしたが、政府は原油安を受けて2015年1月1日にガソリンを値下げ。中銀はインフレや通貨安に一定の歯止めがかかったと判断した。中銀アグス総裁は「今後のインフレ率は一段と低下する」とした。

インドネシア中銀は経常赤字縮小に向け、景気の過熱抑制に取り組んでいる。2013年後半の利上げや中国の減速感などから、投資や個人消費が減速する一方、ルピア安が進行。インフレや経常収支の安定を図る上で現状の金利水準が適正と判断している。2014年8月時点で中銀マルトワルドヨ総裁は「中銀のインフレ目標である3.5~5.5%、経常赤字を健全な水準に減らすという方向と金利は一致している」「経済成長が5.1~5.5%の範囲内に収まる」との認識を示している。なお、通貨ルピアはASEANの経済規模の約40%を占める。

項目 内容
政策 経常赤字縮小に向け景気の過熱抑制
インフレ率 3.5~5.5%
経済成長率 13年5.8%→14年5.1~5.5%


【ニュージーランド中央銀行】
■2015年12月10日、政策金利を2.75%から2.5%に引き下げた。主要輸出品である乳製品価格が低迷。成長の鈍化に対応する。ウィーラー総裁は「平均インフレ率が確実に目標レンジの中央付近で安定するため、金融政策は緩和的であることが必要」「現行の金利設定でこれが達成できると想定」「状況が正当化すれば利下げを行う」とした。

■2015年9月10日、政策金利を3%から2.75%に引き下げたと発表した。主要輸出品である乳製品の中国向け輸出が不振で成長が鈍化している。中銀ウィーラー総裁は、景気底上げに向けて「一段の緩和があり得る」とした。また、中銀は2015年度の経済成長率見通しを3.2%から2.1%に下方修正した。

■2015年7月23日、政策金利を3.25%から3%に引き下げた。主要輸出品の乳製品価格が1年間で約40%下落し、経済減速懸念が高まった。ウィーラー総裁は「一段の緩和があり得る」とし、追加利下げの可能性を示唆した。

■2015年6月11日、政策金利を3.5%から3.25%に引き下げた。物価上昇圧力が弱まっていることに対応した。ウィーラー総裁は「インフレ圧力が低く、需要の鈍化が見込まれる」「(経済指標次第で)追加緩和が適正になり得る」とした。


【マレーシア中央銀行】
2015年11月5日、政策金利を3.25%に据え置いた。中銀は「個人消費は伸び悩む」「国内の金融市場は安定している」とした。また、現在の金利水準で金融政策スタンスは緩和的で、経済活動を支援しているとした。

マレーシアは歳入の30%を石油関連産業から得ている。原油価格の下落では財政悪化が見込まれる。また、2015年4月から消費税が導入された。


【インド中央銀行】
2015年12月1日、政策金利を6.75%に据え置いた。ラジャン総裁は「一段の緩和を可能にする余地があれば、利用する」とした。

インドは原油の国内利用の80%を輸入。原油価格の下落でインドの物価上昇率は大幅に鈍化。金融政策を緩和方向に転換して景気の下支えを図る。また、インド中銀は2016年1月までに消費者物価上昇率を6%以下にすることを目標としている。

■2015年9月29日、政策金利を7.25%から6.75%に引き下げた。ラジャン総裁は「世界の活動の勢いが弱まっている」「商品相場がしばらくの間引き続き抑制される」「可能な限り金融緩和を進める必要がある」とした。また、自国の設備稼働率の低さにも言及し、企業投資の回復の鈍さを訴えた。

■2015年6月2日、政策金利を7.5%から7.25%に引き下げた。ラジャン総裁は「国内の設備稼働率は低く、経済指標はまちまちで、投資や信用の伸びが低迷している」とした。

■2015年3月4日、政策金利を7.75%から7.5%に引き下げた。原油安を背景にインドの物価上昇は鈍化しており、利下げで景気拡大を下支えする。

■2015年1月 政策金利を8%から7.75%に引き下げた。ラジャン総裁は「原油安で物価水準が想定を下回った」「原油安は1年間続く」とした。また、追加利下げも示唆した。2015年2月時点では、インド通貨ルピーについて「各国で大規模な金融緩和が進めば、危険にさらされる可能性があることに留意すべき」とし、急上昇する懸念を示した。

項目 内容
政策金利 追加利下げを示唆
インフレ率 16年1月6%以下
15年1月8%以下


【ブラジル中央銀行】
2015年11月25日、政策金利を14.25%に据え置いた。通貨下落や公共料金引き上げによるインフレは収束していないが、想定以上の景気悪化から金利を据え置いた。

■2015年7月29日、政策金利を13.75%から14.25%に引き上げた。経済は低迷しているが、通貨下落や干ばつによるインフレリスクに対応する。ブラジル中銀は「インフレ率が2016年終盤に目標に向かうようにするには、金利を十分に長い期間この水準に維持する必要がある」とした。

■2015年6月3日、政策金利を13.25%から13.75%に引き上げた。経済低迷は続くが、干ばつや通貨レアル安による輸入物価上昇を背景に、インフレが加速していることに対応した。

■2015年4月29日、政策金利を12.75%から13.25%に引き上げた。干ばつや通貨レアル安による輸入物価上昇を背景に、インフレが加速していることに対応した。

■2015年3月4日、政策金利を12.25%から12.75%に引き上げた。インフレの抑制や世界的な米ドル高基調による通貨レアル下落に対応した。

■2015年1月21日、政策金利を11.75%から12.25%に引き上げた。ブラジルでは雨量の不足により農作物の育成が不調。野菜や果物が値上がりしている。また、通貨レアルも下落しており、米国の量的緩和縮小から資金が流出。輸入に依存する小麦粉など食品価格が上昇している。

ブラジル中銀のインフレ目標値は4.5%、上限は6.5%。

項目 2016年
インフレ率 目標値 4.5%
上限 6.5%


【タイ中央銀行】
2015年11月4日、政策金利を1.5%に据え置いた。中銀は「中国などアジア経済の落ち込みで、輸出が低迷し民間支出も落ち込んでいる」とした。

■2015年4月29日、政策金利を1.75%から1.5%に引き下げた。通貨バーツ安を誘導し、輸出を促進する。タイ中銀は「タイ経済の回復ペースは鈍るとみられる」「輸出と民間消費が想定以上に弱く、公共投資や観光業の持ち直しでは補いきれない」とした。輸出は4.5%減。主力の天然ゴムなど農産物価格と原油価格の下落が響いた。消費者心理の冷え込み要因である名目GDPに占める家計債務残高比率は約86%に上昇した。

■2015年3月11日、政策金利を2%から1.75%に引き下げた。メティー事務局長は「民間消費と投資の伸び悩みで予想よりも経済の回復速度が遅い」とした。民間消費は前政権が実施した初めて車を買う消費者向けの減税措置でローン利用者が拡大。2014年9月末の名目GDPに占める家計債務残高比率が80%超となり、消費者心理が冷え込み。輸出は主力の天然ゴム価格が下落し停滞。

タイ中銀は2014年11月に今後は輸出や投資の回復を見込めると指摘。物価上昇率も鈍化しているため、金利水準を継続しても景気回復を阻害することはないとしていた。


【ロシア中央銀行】
2015年12月11日、政策金利を11%に据え置いた。原油安を背景にした通貨ルーブルの下落でインフレリスクが高まっている。

2015年10月時点で中銀は、景気低迷リスクよりもインフレリスクへの対応を優先。「為替動向の影響で、インフレ及びインフレ見通しは上向きのトレンドを示している」とした。また、「最も楽観的なシナリオの下でもロシア経済は向こう数年間はこれまでよりも困難な状況に直面することを理解しておくことは重要だ」「経済情勢が最善のシナリオに沿って推移すれば、政策金利を引き下げる可能性も出てくる」とした。今後はインフレリスクと景気低迷リスクの間のバランス変化に基づき、政策金利の決定を行う方針。

■2015年7月31日、政策金利を11.5%から11%に利下げした。中銀は「インフレリスクが上昇しているものの、景気の落ち込みリスクへと焦点が移りつつあることを反映した」とした。

■2015年6月15日、政策金利を12.5%から11.5%に引き下げた。中銀は「国内経済の著しい悪化を懸念」「インフレが引き続き低下基調をたどる場合は追加緩和の用意がある」とした。

■2015年4月30日、政策金利を14%から12.5%に引き下げた。通貨ルーブルの対ドル相場が反発し、インフレ圧力が低下したと判断した。中銀は「インフレリスクがさらに鈍化すれば、利下げを続ける用意がある」とした。

■2015年3月13日、政策金利を15%から14%に引き下げた。中銀は「いかなる代償を払ってでもインフレ率を引き下げようとすれば、近視眼的な戦略となる」とした。インフレ率は高止まりしているが、一時的要因によるものと指摘。一時的要因は年末までに解消するとし、経済支援を優先する。リスク低減の度合いを見極めながら、一段の利下げを行う用意を調えるとしている。

■2015年1月30日、政策金利を17%から13%に引き下げた。高金利による融資の減少で、多くの銀行や企業倒産につながる懸念に対応。ナビウリナ総裁は「金利水準は物価上昇率の中期的な目標を達成するには十分高い」とした。

原油価格の急落とウクライナ情勢を巡る欧米の経済制裁によりロシア経済は屈強。ルーブルの下落を背景に輸入品や食料品などの価格が上昇している。ロシア中銀は「今後もインフレリスクが高まる場合、金利の引き上げを続ける」とし、物価上昇率が目標である4%に下がるまで、長期的に金融引き締めを続ける方針。なお、ロシアは国家歳入の40%を石油関連収入が占める。

項目 内容
政策金利 物価上昇率が4%に下がるまで金融引き締めを継続