シャープは2013年度から2015年度の3年間で約2400億円の投資を行う。そのうち860億円は液晶事業において中小型液晶パネルの高精細化に充当される。また、2013年10月に実施した公募増資で調達した1191億円のうち、500億円は液晶事業に投資される。液晶事業への投資は全設備投資のうち35.8%、増資で調達した資金のうち41.9%を占めることから、液晶パネルへの投資推移をまとめた。
 

液晶パネル事業への投資

対象 投資額 内容
IGZO 2014年 300億円 スマホ・タブレット向け生産能力10%引き上げ
2015年 100億円 亀山第2工場のタブレット向け生産40%→80%
MEMS - 2015年からタブレット端末に搭載
100億円 2017年から量産開始
脱アップル 300億円 アップル用液晶パネル生産設備を買収交渉

【IGZO】
 2014年度に三重県の2工場に300億円を投資し、スマートフォン、タブレット向けの生産能力を10%引き上げる。省電力パネル「IGZO」で画質を高めた次世代品や画素密度が高く画像の鮮明さが世界最高水準のパネルを量産する。

また、2015年度に約100億円を投じ、亀山第2工場のテレビ向けパネルラインをタブレット端末向けに切り替え。IGZOなど中小型パネル生産量を2014年の40%から2015年には80%に引き上げる。米アップルのタブレット向けた主要供給先だが、シャオミなど中国企業向けに大量供給できるようにする。


【MEMSディスプレー】
米クアルコムと共同でMEMSディスプレーを商品化。100億円を投資し、工場を整備。2017年に量産を開始する予定。また、2015年上半期からMEMSディスプレーを搭載した7.0型タブレット端末を法人向けに販売を開始する。


【脱アップル】
米アップルが導入資金1000億円のうち半分を負担した亀山第1工場の設備を買収する交渉を開始したもよう。取得額は約300億円とみられる。現在、アップルのiPhone用中小型パネルを量産しているが、アップル以外にも供給できるようにする考え。

まず、アップルと他社への供給について合意したもよう。2015年春をめどに中国スマホメーカーの小米やZTE向けに液晶パネル生産を開始する。

 

パネル開発

開発パネル 内容 量産開始
スマートフォン 4K対応スマホ用液晶 2016年
ウエアラブル 消費電力1000分の1に抑えたパネル開発 2015年春
フリードローイングパネル 筆記用具でも文字が入力できるパネル 2015年春

【スマートフォン】
省電力のIGZO技術を使った4K対応のスマートフォン用液晶を開発。2015年にサンプルを出荷し、2016年に量産を開始する計画。


【ウエアラブル】
ウエアラブル端末向けに消費電力を1000分の1に抑えた新型パネルを開発したもよう。国内外の端末メーカーに出荷。2015年春までに国内で量産を開始し、月20万~30万枚の出荷を目指すとしている。 


【フリードローイングパネル】
ボールペンなど先がとがった筆記用具でも正確に文字が入力できる液晶パネルを開発。パネルに触れた際に生じる「ノイズ」と呼ぶ電磁波を最小限に抑制。スマートフォンやタブレット向けには一般的に直径3~5ミリの太いペンを使うが、新型パネルは芯が直径1ミリ以下のボールペンやシャープペンシルでも正確な操作ができるという。

2015年春から亀山第2工場などで量産を開始する。ビジネスや教育など幅広い用途を想定。中国の大手スマートフォンメーカーなどへの納入を目指す。シャープは2017年3月期にタッチ式液晶パネルに占めるフリードローイングパネル比率を60%まで高める計画。

2015年夏には中型パネルの量産を開始。医療用モニターやタブレット向けに展開する。

 

2013年度~2015年度の設備投資計画

シャープは2013年度から2015年度にかけて約2400億円の設備投資を行う。2013年10月に実施した公募増資で調達した1191億円は全額設備投資に充当される。増資で調達した資金は500億円を中小型液晶の高精細化のための設備投資資金に、247億円を健康・環境事業(エアコン・空気清浄機など)におけるインドネシア新工場の資金に、130億円を重点5事業領域における新規事業育成にむけた研究開発資金に充当する。

セグメント 設備投資計画 金額 期間
AV・通信 液晶テレビ用開発・生産設備 174億円 2013年度~2015年度
通信端末(国内向け)用開発・生産設備 141億円
健康・環境 エアコン・空気清浄機のインドネシア新工場 445億円
情報 デジタル複合機向け開発・生産設備 167億円
液晶 中小型液晶パネルの高精細化 860億円
太陽電池 太陽電池(国内向け)開発設備 83億円
電子デバイス カメラモジュール・パワーデバイス開発・生産設備 335億円
重点5事業領域の開拓を含む研究開発設備 210億円

 

業績

2015年2月3日、通期業績予想を下方修正。経常利益500億円→0億円、純利益300億円→▲300億円に修正した。セグメント別営業利益では、デジタル情報家電が60億円→▲120億円、エネルギーソリューションが30億円→▲50億円、液晶が550億円→400億円に見通しを修正した。

1-3月期は主力の亀山第2工場で生産する中小型省エネ型液晶パネルIGZOの生産を40%減らす。工場稼働率が90%から70%に落ちるもよう。
 

  売上高 経常利益 純利益 純資産 総資産 自己資本比率
2015年(予) 2兆8000億円 800億円 - - - -
2014年 2兆7862億円 ▲965億円 ▲2223億円 445億円 1兆9619億円 1.5%
2013年 2兆9271億円 532億円 115億円 2071億円 2兆1816億円 8.9%
2012年 2兆4785億円 ▲2064億円 ▲5453億円 1348億円 2兆877億円 6%


【液晶事業】

事業 項目 2012年 2013年 2014年 2015年
4-6月 7-9月 10-12月 通期
液晶 売上高 8468億円 9910億円 2069億円 2539億円 2380億円 9071億円 1兆円
営業利益 ▲1389億円 415億円 21億円 186億円 114億円 301億円 370億円
営業利益率 ▲16.4% 4.1% 1% 7.3% 4.7% 3.3% 3.7%


【参考】
2015年2月13日、2022年をめどに液晶事業全体に占める車載や産業機器向けの割合を15%から40%に引き上げる方針を示した。